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恋と寒空②

恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第二十六話】

(ヒロ)

学校周辺にまで響き渡るチャイムが帰宅時間を知らせる。そしてすぐさま、俺は自転車置き場へ向かった。
今日は水曜日。
週末から一番遠くて嫌なはずの曜日が、今の俺にとって一番楽しみな日になっている。


店に着くと、タクトが既に準備を始めていた。
昼間のスタッフさんたちはもう帰ったらしい。
俺も急いで準備をし、接客や片付けをする。
彼女が来る時間は決まっているのに、業務中チラチラと扉を何度も確認してしまっていた。

「どうした?」

ニヤリとして訊いてくるタクトは確信めいていて、俺はもう否定するのをやめている。もちろん、タクトの前でも肯定はしないけど。それとなく適当なことを言ってかわしておく。

時間を見るとそろそろかなという頃にカランと音。

来た。

鼓動が速さを増す中、扉の方に振り返ると

「久しぶり、ヒロ」

俺に挨拶するカンナさんの隣に笑顔の明るい彼女がいた。
初めて会った時みたいに、ただにこやかに微笑んでいる。
でも俺に向けていた笑顔とはどこか雰囲気が違っているように見えた。彼女は一体いくつの笑顔を持っているのだろうか。


一人でいる彼女で会いたかったな。


そう思いつつも、少しでもそばにいられることを嬉しく思うようにして、二人を席へと案内した。

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