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溶け出したわたあめ⑥

第二十四話

(ヒロ)

雲が覆い隠す暗闇であっても、月の光は地球に届く。
そんな靄がかった月を彼女も見ているだろうか。
彼女は今、何をしているのだろう。

トーク画面を開け、さっき届いた言葉をまた読む。

「今日は楽しかった、ありがとう!
リストにあった他のお店も今度行けたらいいね」

こんなメッセージをもらったら誰でも口が緩んでしまう。次もある雰囲気ってことは、彼女も俺と同じ気持ちを持っているのだろうか。いや、彼女にとってこれはいわば社交辞令のようなやりとりかもしれない。

どう返すのが最適か、俺には難しかった。

今の距離を保ちながら嫌われず一緒にいるための解。そんなこと求める人、この世に存在するのか?俺は欲張りすぎているとつくづく思う。


返信に迷っている間も時間は止まらない。
考えに考えた挙句、さすがに遅くなるのはまずいのではと「ありがとう」だけ送る。

…少しシンプルすぎたかもしれない。シンプルさを巻き返すために、ステッカーを使ってみたものの、軽く思われないだろうかと不安になる。
そしてまた、今日を思い出す。


あー、次彼女が来る日が待ち遠しい。


しばらく心が動くのをやめなかったせいで、なかなか眠りにつくことができなかった。完全に彼女以外の全てを忘れていて、特別に幸せな時間。


翌日大きな後悔と共に夢から覚めることなんて考えず

この夜だけはただひたすらこの夢に溺れていた。

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