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 今月、『ウェブ小説30年史』というウェブ小説において、画期的な評論集が講談社の星海新書から発売された。私は先日、2022年文藝夏季号の新胡桃さんの『何食わぬきみたちへ』における、障害者への誹謗中傷とヘイトスピーチに抗議したが、彼女の作品が芥川賞ノミネートから落選したので、役目を終えたと思い、その記事を削除した。
 やはり、10年間購読した『文藝』には障害者の当事者としての想いも含めて、新たに発展してほしい、という願いが怒りはあっても、燻ぶり続けていた。
 

羽田圭介さんのデビュー作『黒冷水』の選評も。
綿矢りささんの『蹴りたい背中』も掲載された文藝秋季号も。


 その他の文芸誌も、出版不況の昨今ではなかなか、売れないのは周知の事実である。この『ウェブ30年史』を読んで、作者の飯田一史さんも、『純文学や一般文芸がウェブ小説でヒットする道はあるのか?』という問いで占められている。
 ウェブ小説と一般文芸の関係性は本書に譲るとして、文藝のバックナンバーを持ち、10年間購読していた者として、あるアイディアがあった。

 過去の文芸誌(文藝・文學界・すばる・新潮・群像・小説トリッパーなど)バックナンバーをnoteやその他SNSに公開してほしい。

90年代の貴重な『文藝』。まだ、綿矢りささんがデビューしていない頃のもの。

 私はここ30年の『文藝』のバックナンバーを持っている。普通ならば、図書館の閉架図書でしか、通読できないような、バックナンバーも私は手元にある。時間があった際にじっくり読みこむと、平成の文学史を網羅でき、かなりいい意味でマニアックな勉強に大いになった。
 特に羽田圭介さんのデビュー時の対談や選評、綿矢りささんの『蹴りたい背中』が初めて世に出た際の秋季号、書籍化されていない大御所作家のコラムや対談などがバックナンバーの中にあり、興味深かった。
 私が持っているバックナンバーは『文藝』だけなので、その他の文芸誌のバックナンバーが、もし、ウェブで公開されていたら、ぜひ読んでみたい記事がある。
 

芥川賞にノミネートされた山下紘加さんのデビュー作、『ドール』も載った文藝冬季号も。

 それは村上春樹のデビュー作の選評だ。ほかにも今では大御所作家のデビュー作の選評やインタビュー記事は読んでみたい。
 一部の差別的表現には批判したこともあったが、それは時代的な背景もあり、今後の文芸の発展には、差別表現などには注訳を付ければ、現代の読者も許容範囲になるのではないか、と思う。Noteでは文學界が投稿を始め、注目が高まっているが、文學界のほうも石原慎太郎さんの『太陽の季節』の選評や大江健三郎さんの歴代作品のインタビュー記事やコラムなど、一読者として読んでみたい。
 私が投稿している、YOASOBIを輩出したmonogataryでも、直木賞作家とYOASOBIのコラボなど、ウェブ小説と一般文芸の架け橋になる芽は着々と生まれてきている。一個人の意見だが、提案してみることにした。

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