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なにがし駄文集

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思い出話等をエッセイ調で書いてます。長文ものは大体ここです。
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名称未定

名称未定

私の心の中に、『愛らしい飼い犬、飼い猫の名前』というフォルダがある。
ぽっけちゃん、ぼくくん、ヨルさん、なきむし、等、名だたる素晴らしい名前ファイルの中でも特に忘れられないのは、「おらいのわんこさん、死んじまった…」とほろほろ泣きながらとあるおじいさんが口にした『わんこさん』。

ファンレターでラブレター(後編)

ファンレターでラブレター(後編)

「なんて美しい物語なんだ…。」

これが人生で初めて私が書いた、ファンレター兼ラブレターへの返信だった。

前編(https://note.com/forestgp/n/n24eab62ce96c)で書いたように、私はとある一人の漫画家に熱を上げていた。彼の作品は勿論、彼自身もまた大変に魅力的な人物だった。

当時私は、退廃的な物語や映画が好きだった。美しく滅んでいく様を見つめること、又そのこと自

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いとま上手

いとま上手

無意味なことが楽しんでできるというのは、人生の贅沢の一つなんだろう。
無意味と暇から文化が生まれるだなんて極端なことを言っていた偉い人がいた気がするけど、まあまあわかる気がしないでもない。

最近、朝早く会社に着いてしまう。緊張で大概前日は寝れず、うちでじっとしていても仕方がないからである。早く家を出て、何かしら活動を始めた方が気が紛れる。本当、いつになったら会社に慣れるんだろうか。

前日までに

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明日変わる街、昨日忘れた街

明日変わる街、昨日忘れた街

東京は、同じ景色が長いこと続かない街だ。

今日新しい家が建ったと思ったら、半年と経たないうちに取り壊されて更地になる。その更地も二ヶ月すると、駐車場にされる。そしてその景色を見慣れた頃には新しいビルの建設予定の看板が出され、ビニールシートで囲われてしまう。

最近の建築技術がすごいのか、私がぼうっとし過ぎているのか分からないけれど、そうこうしているうちに気がつけば建物の骨組みは大方出来上がってい

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カキステタスレ

カキステタスレ

私は終末ものが大好きだ。最近ハマったつくみずさんの少女終末旅行なんて、何もかもが私のフェチを射抜いて来てる。世界の終わりにのんびりその日暮らしをしながらいずれ来る最後の時間への準備を進めるなんて、美しさの極地だと思う。

先人が残した記録を偶然拾うというのもロマンがある。まだ文明が栄え、人々が根拠もなく遥か未来を夢見ていた日々を、終わりの世界から見つめるのだ。その記録と言うのは、例えば写真、例えば

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眩しい人、そうでもない人。

眩しい人、そうでもない人。

新社会人になって、コロナ騒動のドタバタを経て、6月に入ってからやっと会社へ出入りできる生活が始まった。

とはいえ、まだまだ感染者数も安定しない中でフル出勤するわけにもいかず、在宅勤務と混ぜこぜの形で働いている。なかなか不安は拭えない毎日だけど、このご時世働ける場があるだけでも感謝しなきゃなあと思う。毎日付きまとうもやもやした気持ちに戸惑いながら、とにかくへたくそなオール捌きで小舟を操り、社会とい

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真夏の完全犯罪

真夏の完全犯罪

私が小学生の頃、移動教室で伊豆へ行った時の話。

細かい事は忘れたが、博物館やら商店やらを巡ってインタビューを行い、レポートを各班ごとに1つ仕上げるという課題があった。

あまりやる気がなかった私は班のみんなの後ろをふらふら付いて周っていた。

お昼過ぎ、私は急におしっこに行きたくなってきた。昼休憩にお茶を飲み過ぎたみたいだ。緊急事態発生。

私は班のみんなに待ってもらい、お手洗いを探しに行っ

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おぼろげ夢十夜

おぼろげ夢十夜

いつもいつもヘンテコでやたらシナリオに凝った夢を見るから、どうせだしここに記録しようかと思う。とりあえずさっき見た夢をメモする。ふわもちの夢十夜、第一夜。

こんな夢を見た。友人らと団体ツアー観光で近未来?の不思議な観光スポットを巡っていた。友人は女の子と男の子一人ずついた気がする。誰かは分からない。洞窟のような水族館の施設内のような場に行くと、とてつもなく大きな象がいて、しかもかなりの知能指数を

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ファンレターで、ラブレター(前編)

ファンレターで、ラブレター(前編)

崇拝している漫画家がいる。

大学一年の頃に彼の漫画に初めて出会い、いわゆるガロ系の世界観とクセの強い画風・怒涛のストーリー展開に骨抜きにされ、以来ずっと彼の漫画を読み続け、イベントに行ける限り通い続けた。そして最近、ネットの片隅でひっそりマイナー向けの漫画を描き続けていたその漫画家は大手のウェブ編集社に見事目をつけられ、その会社のサイトから作品をいくつか公開した事により、徐々に知名度が上がりつつ

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空に落ちる

空に落ちる

空に落ちる気がしてギョッとしたことがある。予備校で浪人して3年目のある日のことだった。

数年前、とある美術系大学を目指して私は浪人していた。美大を目指すと多浪することも珍しくない。私もまた才能も要領の良さも大してない人間で、浪人を重ね腐っていた。歳の分だけゆっくりとぎこちなく上手くなる絵を見ながら、お前は何故受からないのだろうかと担任が首を捻る度にひっそりと傷ついていた。

気付いていた。同期よ

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春が来ますね。

春が来ますね。

最近は、身の回りで恋愛話がやたら聞こえて来て、春だなあ〜と思わされる。みんなそれぞれ惚れたり晴れたりの、涙涙の物語を色々聞かせてくれる。一方で、ふわふわ笑いながらそれを受け止める私自身は、残念ながら心にゆとりがない日々で、まだまだ色付いた話には縁がない。

ただ、嫉妬心からくる寂しさには身に覚えがある。

別に大袈裟な話じゃなく、専門分野に進んだ15.6歳の頃から、チリチリ嫉妬の痛みに悩まされる事

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