ルビー手芸店の月並みで愛しい日常 (物語)
コチッ、コチッ、コチッ、頬杖をつく2人の天使が彫刻された掛け時計の音が響く中、みすずは踏み台に乗り、大きな木製の棚の幅広い引き出しを開けて中を覗き込んでいた。「カバンの持ち手はここだったのね。竹、木、こんな透明プラスチックも可愛いなあ」と一人つぶやいている。年季の入った艶のある美しい棚だが、引き出しを開けないと中に入ってるものが分からない。フランスの中都会のこの手芸店で働き始めて3週間、みすずは暇があるたびに、引き出しを開けては商品の場所を確かめリストを作り、細々とした商品の