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小説「真夜中に目が覚めた」

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「真夜中に目が覚めた」で始まる、結婚とは、夫婦とは、家族とは、幸せとはを綴った短編連作。
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#妊娠

【第四夜】計算違い

 真夜中に目が覚めた。

 隣にいるはずの忠幸さんがいない。耳を済ますと泣き声が聞こえてきた。

 また、美優の夜泣きか……毎晩、毎晩なんであんなにあの子は泣くんだろう。美幸の方は夜泣きもせず朝までぐっすりなのに。

 子供がこんなにも面倒なものだとは思わなかった。

 あたしはただ『専業主婦』になりたかった。相手は誰でもよかった。経済力さえあれば誰でも……そう、本気で思っていた。

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【第十二夜】泣き笑い

【第十二夜】泣き笑い

 真夜中に目が覚めた。

 手を伸ばすとそこには温かい小さな手がある。私は暗闇の中その先にある小さな塊を優しく抱きしめ、また眠りについた。

「ようじぃ、今日くる?」

「さあ、どうかなあ?」

「ねえ、ようじぃ、まだ?」

「幸子は、ほんとにようじぃが好きだねえ」

 日曜の朝、目を覚ました瞬間から、幸子はようじぃはまだかとうるさい。確かにようじぃは毎週日曜にやってきて、

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