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長期経営計画のすすめ column_他社を調査する



①何を調査するのか?

私は『長期経営計画とは、わが社が長期的に実現したい未来、およびその時の事業構成を明らかにし、それを実現するための計画である』と定義しています。長期経営計画の策定において最も重要なことは、「実現したい未来および、その時の事業構成」です。

よって最も調査してほしい内容は『実現したい未来と事業ポートフォリオの関係性』です。同じ業種や競合企業などがあるとイメージがつきやすいですが、関係性を理解することが重要ですので、インターネットで公開されている情報を幅広く調査することも良いと思います。では私自身がとても勉強になった事例を2つ紹介します。


②<事例1> ENEOSグループ

長期ビジョン(実現したい未来)はこちらです。

出典:ENEOSグループ2023~2025年度第3次中期経営計画より抜粋


実現したい未来を達成時の事業ポートフォリオはこちらです。

出典:ENEOSグループ2023~2025年度第3次中期経営計画より抜粋


『エネルギー・素材の安定供給』と『カーボンニュートラル社会』という相反する難しい課題を解決していきたい、そのために現在の化石と素材から、脱炭素と生活プラットフォームを加えた事業構成に変化させていきたい、という意志が明確に表現されており、とても参考になります。


③<事例2> ブルドックソース株式会社

Vision(実現したい未来)として、『Sauceの魅力でホッとするおいしさを世界へ伝える』と表現されています。独自性があり、"ホッとするおいしさ" を社員の皆さんが追求し、世界に伝えていくことで、世界中の食卓が豊かになっていくイメージが湧いてきます。

出典:ブルドックソース株式会社 長期ビジョン BGI 2032より抜粋


実現したい未来の達成時の事業ポートフォリオはこちらであり、海外事業を急成長させ、世界に広めていく意志が明確に表現されています。

出典:ブルドックソース株式会社 長期ビジョン BGI 2032より抜粋


経営者や経営幹部の皆さんは、2つの事例のように「将来、こんな社会を実現したい」「この問題を自分たちの手で解消したい」という実現したい未来につながる思いがあることでしょう。そして、それが実現できている時の事業構成をあるべき姿から描いていくことが長期経営計画策定のメインテーマとなります。

今の延長線上でも10年後を予測することは難しくないでしょう。しかし今の状態が10年続くのか?、仮に10年続いたとして、今以上に成長できる機会は他にはないのか?、それで実現したい未来に近づいているのか? など、じっくり議論することが重要です。

また実現したい未来があっても、その市場規模が大きくない、市場の成長が見込まれないなど、ビジネスとして成り立たないと推定されこともあり、結果、議論が停滞するケースが多々あります。

長期経営計画の策定は答えのない取り組みです。私自身がそうでしたが、他社を調査することで良いキッカケをもらえることがきっとあると思います。

今回は以上となります。次回は【 Ⅱ.1.現状のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を確認する】として、MVVの定義・構造や確認方法について書くつもりです。


【目次(案)】
Ⅰ 方針
1. 目的を決める
2. 期間・更新を決める
3. アウトラインを決める
4. スケジュールを決める
5. 体制を決める
Column 事例を調査する ←今回


Ⅱ 企業戦略
1. 現状のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を確認する ←次回
2. 過去の全社業績を分析する
3. 現在の事業ポートフォリオを可視化する
4. 経営資源を可視化する
5. メガトレンドを調査する
6. 今後のビジョン・ミッション・バリューを決める
7. 企業ドメインを決める
8. 目指す事業ポートフォリオを決める
9. 成長戦略を決める
10. 新規事業・M&A戦略を決める
11. 一次業績計画を策定する
12. 一次投資枠を設定する
13. 全社一次要員計画を策定する
14. TOPマネジメントを決定する
15. 企業戦略を事業戦略に展開する
Column 事業承継に向けた長期経営計画

Ⅲ 事業戦略
1. 過去の事業業績を分析する
2. 現在の製品ポートフォリオを可視化する
3. 外部環境を分析する
4. 企業戦略を理解する
5. ミッション・バリューの見直しを検討する
6. 事業ドメインを決める
7. 目指す製品ポートフォリオを決める
8. 成長戦略を決める
9. 売上計画を精緻化する
10. 要員計画を精緻化する
11. 投資計画を精緻化する
12. 損益計画を精緻化する
13. ロードマップ・KPIを決める
14. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
Column 経営計画の先行研究

Ⅳ 計画完成
1. 売上計画を確定させる
2. 投資計画を確定させる
3. 要員計画を確定させる
4. 採用計画を確定させる
5. 組織計画を確定させる
6. 人材育成計画を決める
7. 新規事業・M&A計画を決める
8. リスク管理計画を決める
9. IT投資計画を決める
10. 財務三表計画を決める
11. ロードマップ・KPIを決める
12. モニタリング計画を決める
13. コミュニケーションを開始する
Column 社員がワクワクする長期経営計画

最後に私の著書と副業で経営している会社の紹介をさせてください。



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