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嬉し恥ずかしい上書き


前作はこちら。 

恋人と別れて、
仕事が手につかない平井さんを、
何とかしようと話を聞くことに。

元彼の身勝手な行動…
親友鈴木さんのうっかりアドバイス…。
 
先輩でメンタルケアリーダーの山崎は、
一体どうするのか?
 
「平井さん」
「はい」
 
「元彼はくせのある人だったと思う。
 でもどんな人であっても話し合いは必要。
 ……。
 問題があったら例え言い難いことでも、
 まずは当事者と話をしないとダメ。
 ……。
 ただの泣き寝入りになるからね」
「はぃ…」
 
「でも、頑張ったんだね。
 平井さん……
 ちゃんと泣いた?
「………いいえ…
 …衝撃のせいなのか…
 泣けませんでした…
 
「泣いてもいいよ?」
「ちょっと…ここでは…
 難しいです…」
 
「じゃあ、元彼を思いっきり罵倒ばとうしなよ。
 胸に色々つっかえてるでしょ?」
「それは…ありますけど…」
 
「大丈夫!
 この部屋、防音だから!
 思いっ切りいきな!」
「……じゃあ…
 はい…」
 
目を閉じ…
呼吸を整え…
大きく息を吸い込む…。

その行動をずっと見守る二人。 

浅くひと呼吸吐き、
再び大きく吸い込むと、
平井さんは勢いよく叫んだ。

このぉ!!
 ハゲ~~~~!!!

 
「はげ?」 「ハゲ?」
 
「平井さん…
 元彼…ハゲてたの?」
「いいえ。
 でも、ハゲたらいいなって
 
「ハハハ。そういう意味ね。ハハ」
 
(平井さん大人しそうに見えて、
 わりと攻撃的なのかも…)
 
「どう?
 少しはスッキリした?」
「…はい!
 ちょっと気持ちが軽くなりました」
 
「それは良かった。
 仕事、大丈夫そう?」
「すいません、ご心配かけて。
 遅れた分は定時までに何とかします
 
「まあそんな無理せず行こう。
 病み上がりぐらいの感じでいいから。
 じゃあ、二人とも戻ろうか?」
「はい!」 「はい!」
 
オフィスに戻ると、
部長が声を掛けてきた。 

「おお、終わったか。
 問題は解決したか?」
はい。スッキリしました
 
「じゃあ引き続き頑張ってくれ」
「わかりました」
 
(はあ~疲れた。
 仕事の交渉恋愛トラブルの解決って、
 同じくらいのカロリー消費なのよね。
 あ~今日、どうしよう…
 疲れちゃったから、
 何か買って帰ろうかなあ…。
 何にするかはその時の気分だけど…
 まずは…大盛り確定ね
 
カチッカチッポチッ!
 
「先輩~~~!!」
「な、なに?!」
 
今、共有データ更新しました?
「…した…かな?
 ん?…あ~したした!
 ごめん、何かあった?」
 
それ昨日の古いバージョンです
「え?!うそ!」
 
データの日付が、
 昨日になったので…」
「私?……私がしたの?!
 えっ冗談~~止めて~。
 バクアップ…?!
 バックアップは!」
 
「まだ…取る前でした…」
「はあぁぁぁ。
 午前中の作業がチャラ…。
 ……
 ……
 みんな…ごめんなさい」
 
「先輩、大丈夫ですよ。
 3時間分なんて直ぐです!」
「鈴木さん…」
 
「私は進捗しんちょく遅かったので、
 アップデートしてないので被害なしです。
 私の成果物も今の先輩と、
 同じぐらいですから。
 一緒に頑張りましょう、先輩!」
「平井さん…」
 
「ごめん。
 よし!頑張る!」
「はい!」 「はい!」
 
17:50
 
キツネの付箋紙が、
私の机に貼られる。
 
(今度は何?
 忙しんだけど)
 
【お疲れ様です。
 残業頑張りましょう♪
        鈴木】
 
そしてもう一枚。
可愛いシカの付箋紙。
 
【私、買い出し行きます!
 先輩は唐揚げ弁当、
 大盛り●●●でいいですか?
         平井】
 
大仏の付箋紙に返事を書いて、
鈴木さんの机に貼り返す。
 
【お願いします。
 
 そして、
 二人ともありがとう。
          山崎】
 
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 


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