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Red Line

お昼休み。
 
女性社員2人。
 
「その後、どうなの?」
「何が?」
 
システム課の
「またその話?」
 
「何よ、またって!
 私、知ってるのよ。
 
 SNSで毎日のように…
 
 あ~今日も彼とすれ違った~
 ああ~今日は顔も見れなかった~
 
 って、毎日投稿してるの!

「シーーーーー!!
 恥ずかし~から!!」
 
「私は心配してるの!」
「そうだよね…ごめん。
 まあSNS見てるなら…
 説明するまでもなく…そのままです」
 
「う~ん…告白したら?」
「絶対無理だって!
 社内で告白はハードル高いよ!
 今のこの境界線は越えられないよ!

 
「じゃあ、どうすんの?
 このまま指くわえて、
 誰かに食べられるの待つつもり?
「それは…困る」
 
「あなたも食べたいんでしょ?」
「……食べたい」
 
「じゃあ、まずは注文しないと。
 私に食べられてくれませんか?って」
「そんなこと言えるわけないじゃない!」
 
「例えよ例え!
 でもどっちかがその線を越えないと、
 恋愛は始まらないからね

「それは…わかってるけど…
 断られたら立ち直れないかも…」
 
「自信持ちなよ。
 あなた可愛い顔してるし、
 男性の印象もいいと思うよ」
「でも私…
 彼の好みじゃないかもしれないし…」
 
「そんなの聞いてみないと、
 分からないじゃない」
「それは…そうなんだけど…」
 
「自信がないの?」
「ないっ!!」
 
「食い気味に来たわね。
 自信がない自信はあるんだ。
 
 私が背中を押してもダメなら…
 そうだ!
 
 聞いて…もし…もしもよ」
「うん」
 
彼とあなたが…
 運命の赤い糸で結ばれてたらどう?

「運命の赤い糸…
 彼と私がぁああ~!!」
 
「声でかい!!」
「ごめんなさい…」
 
「彼と繋がってたら…
 告白できるんじゃない?」
「それなら…行ける…かも…」
 
「よし!
 じゃあ、スマホ貸して
「スマホ?」
 
「ロック解除して」
「ロック…はい」
 
「まずはアプリを探して…
 あった!……
 そしてインストール…
 はい、登録して!」
「え?!
 これ何?!」
 
「大丈夫。
 私も入れてるから」
「そ、そうなの?
 名前と性別…
 あとは…」
 
「その位置情報は、
 アプリ使用時でいいよ」
「はい…できたよ」
 
「このアプリはスゴいのよ。
 何と、自分と赤い糸で結ばれてる人が、
 視覚的に見えるの

「赤い糸が見えるの?」
 
「スマホを右手に持って、
 左手の小指をカメラの前に出して
「左手の小指……
 あっ!!
 私の指に赤い糸!!
 
「そう!
 それを辿って行くと、
 そこに運命の人がいるのよ」
 
パタン!
 
「ちょっと何してんよ!
 それを辿って行ったら、
 彼に繋がってるかもしれないじゃない」
「それって…
 そうじゃない場合もあるよね」
 
「それは…それもあるかも…」
「それも怖い」
 
「じゃあ、どうすんの?
 このまま永遠の片想い…続けるつもり?
 どこかで決着付けないと、
 あなたいつまで経っても、
 このままなのよ」
「それはそうだけど…」
 
「実は私…先週それ使ったの。
 ドキドキしながら、
 辿って行ったんだけど…
 そこには別の人が立ってた
「え?!
 同僚の鈴木くんじゃなかったの?」
 
「そうよ。
 私は鈴木くんであって欲しいと
 思ってたけど違ったの。
 でも、その先に居た人…
 知り合いだった…」
「誰?」
 
中学時代の同級生。
 告白したけど振られた相手…

 偶然この会社に入社してた。
 顔とか変わってて気付かなかった…」
「そんな人、いたんだ」
 
「私ね…その時…
 キュンってしたの…顔見た瞬間
 この人だって」
「え?!」
 
「そしてこの前…
 ご飯に行ってきた」
「え?!
 いつの間に?!」
 
「まだ付き合ってないから…
 言ってなかった…ごめん。
 でも、そういうこともあるってこと」
「………」
 
「そういう巡り合わせもあるし、
 これはあくまでアプリであって、
 ゲームみたいなものよ。
 結果がどうあれ、
 まずは一歩踏み出す、
 いい機会だと思わない?

「……うん…そうだよね。
 私、やってみる」
 
「そうよ。
 何でもやってみないと」
「でも…これって、
 その相手が遠くにいたりとか、
 海外ってことはないの?」
 
「それはないみたい。
 位置情報で半径1キロ以内って、
 説明に書いてあったから」
「1キロって結構、広いね」
 
「まあまあね。
 でもその会社、
 占いや婚活サイトをやってるとこで、
 それらの情報からAIが診断して、
 ピッタリの相手を紹介するんだって。
 精度も高くて評判いいのよ」
新しいタイプのマッチングアプリだね
 
「そこの画面の右上見て。
 その人との距離出てるでしょ?
 右端に」
「右端…は…
 ちょっと!
 70mって、近くない!?
 
彼じゃないの?
 システム課って…
 ちょうど、それくらいの距離じゃない?」
「………私…
 この赤い糸…辿ってみる」
 
「よし!
 ガンバレ!」
「待って~!
 やっぱり怖いから一緒に来て~!」
 
「もう~しょうがないなあ~」
「これって…建物の中も…
 きちんとナビしてくれるんだね」
 
「そこがスゴいのよ。
 ちゃんとそのビルの構造も把握してるの。
 しかもデスクの位置まで、
 分かってるみたいよ」
「本当にスゴいね…
 あと30mだ…」
 
「ほら、やっぱりそうじゃない?
 ここ彼の課のあるフロアーだし
「そ、そうかな…
 あと20m…
 
「来た来た!」
「ここが彼の…
 あれ?
 彼の課のオフィスじゃない
 
「え?
 違うの?」
「……うん。
 赤い糸はそのまま真っすぐ…
 
「……どうする?
 ここで…止めとく?」
「………行く…
 ここまで来たから」
 
「わかった。
 私もいるから」
「うん。
 あと10m…
 
「この先って…まさか…」
「え?!
 ここって!!」
 
社長室!!」 「社長室!!
 
「ちょっと!
 社長室だよ、ここ!!」
「ええ~!!
 私、どうしたらいいの!?」
 
「これはあれよ…
 愛人ってことよ!!」
「ええ~!!
 恋人じゃなくて、
 愛人候補なの私!!

 
「言われてみれば…
 その引っ込み思案で…
 コソコソしてる感じも…
 愛人向きって感じよね

「そんなことないし、
 私、望んでないよ!!」
 
ガチャ!
 
「では社長、失礼します」
 
「あれ?
 あなたは」
 
キュンキュン!!
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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