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奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき( 2012/3/28)/ジル・ボルト・テイラー【読書ノート】

奇跡の脳~脳科学者の脳が壊れたとき/Jill Bolte Taylor

統合失調症の兄を持った「わたし」は、小さい頃から脳に興味を抱く。同じものを見て、どうしておにいちゃんとわたしは反応が違うの?努力の末に脳科学の専門家となり、ハーバードの第一線で活躍するわたしは、誰よりも脳について知っているはず、だった―。
1996年のある日、37歳で脳卒中に襲われ、生活は一変する。左脳の機能が崩壊し、言葉や身体感覚だけでなく、世界の受け止め方までも変わったのだ。体力の補強、言語機能を脅かす手術、8年間に及んだリハビリ。そこでわたしが得たものとは、何だったのか。脳卒中になりうるすべての人に―。

右脳優位という言葉は所々で使われるが、実際に右脳しか使われなくなった場合は果たしてどうなるのだろうか。
ジル・テイラー女史の著書「奇跡の脳」では、実際の体験談が書かれている。まずは右脳だけでは字を読むことができない。文字も数字もただの形にしか見えなくなるのだ。何とか文字を理解してもそこから連想する事ができない。社会生活を送る事など不可能である。この社会生活というのがミソで、人間の社会生活というのは完全な左脳主義である。それ故に人類は万物の霊長として根を拡げてきたわけであるが、右脳をおろそかにすると大切な事を忘れてしまうのでは無いだろうか。と言うのも、ジル・テイラー女史は脳卒中で左脳が麻痺した際に、右脳の世界に居たのだが、痛みと恐怖の中で不思議とそこで幸福感を感じたのである。自分の体が流体になり、境界線が無くなり全てが一つになるような体験だ。これは紛れも無く瞑想上級者が感じる世界である。
[出典:http://spimemo.blog112.fc2.com/blog-entry-20.html]

私が脳の神秘を追い求める旅に出たのは、統合失調症という病を抱える兄のためでした。妹として、そして科学者として、私には理解できる夢と現実が、なぜ兄の脳では妄想と化してしまうのかを知りたかったのです。

その探求の途中、私自身が脳の病に襲われました。1996年のある朝、私は左脳に起こった大出血により、歩くことも話すこともできなくなりました。私の世界は一変し、自分が体験してきた現実の全てが遠のいていきました。

私の脳は二つの半球に分かれており、右脳はこの瞬間を生きるものでした。映像を通して世界を理解し、感覚を通じて学びます。一方、左脳は線形的に物事を処理し、言語によって内外の世界を繋ぎます。この左脳が、脳卒中の朝に私を見捨てました。

脳卒中を経験した私は、自分の体がエネルギーの一部と融合し、世界との境界線が消失したように感じました。しかし、左脳の一部が再び働き始め、「助けを求めなければ」と警告しました。結局、私は周囲の助けを得て、救急車で病院に運ばれました。

その後、私は言語中枢を圧迫していた血の塊を取り除く手術を受け、8年のリハビリを経て完全に回復しました。この経験を通して、私たちはどのような存在か、どのように生きるべきかを考えさせられました。

私たちは、宇宙の生命力を宿した存在であり、瞬間瞬間に、どのように生きるかを選ぶ力があります。私は右脳の意識により、自分が世界とつながっていることを感じることができます。一方、左脳の意識を選ぶと、一人の個人としての存在感を感じます。このバランスが、私たちの内なる平和と世界の平和に繋がると信じています。私たちがより多くの時間を右脳の平和な回路で生きることを選べば、世界も平和になるでしょう。

ジル・ボルト・テイラー博士は37歳のある朝、突然脳卒中に襲われました。先天性脳静脈奇形の破裂が原因で、脳の左半球に大量の血液が流れ込み、彼女は言語、情報処理、記憶のつながりを失いました。しかし同時に、彼女は穏やかさと幸福感を感じ、宇宙と一体化したかのような感覚を経験しました。

ハーバード大学で脳神経科学の専門家として活躍していたテイラー博士は、脳卒中を経験したことで、生命の神秘と幸福に生きるヒントを見つけました。彼女の書籍「奇跡の脳」では、脳卒中に見舞われてから回復するまでの8年間の経験が詳細に記録されています。

彼女は脳卒中の朝、極度の痛みと共に体の動きがおかしいことに気づき、最終的に右腕の麻痺から自分が脳卒中であることを理解しました。助けを求めるのも困難でしたが、なんとか同僚に連絡を取り、病院に運ばれました。治療とリハビリを経て、彼女は左脳の機能を徐々に取り戻しましたが、このプロセスでは、できることに焦点を当て、小さな成功を喜ぶことの大切さを学びました。

テイラー博士は、脳卒中から得た教訓として、感情はコントロール可能であり、望まない思考に気づいたら黙ってくれるように頼む、呼吸や感覚に注意を払う、香りや音楽を楽しむことで今ここに意識を向ける方法を紹介しています。彼女の経験は、私たちがどう生きるかを自分で選ぶことができることを示しており、細胞に対する感謝の気持ちを忘れずにいることの重要性も強調しています。

目次

はじめに:心と心、脳と脳
1章:脳卒中になる前の人生
2章:脳卒中の朝
3章:助けを求めて
4章:静寂への回帰
5章:骨まで晒して
6章:神経科の集中治療室
7章:二日目 あの朝の後で
8章:GGが街にやってくる
9章:治療と手術の準備
10章:いよいよ手術へ
11章:最も必要だったこと
12章:回復への道しるべ
13章:脳卒中になって、ひらめいたこと
14章:わたしの右脳と左脳
15章:自分で手綱を握る
16章:細胞とさまざまな拡がりをもった回路
17章:深い心の安らぎを見つける
18章:心の庭をたがやす
回復のためのオススメ
附録A:病状評価のための一〇の質問
附録B:最も必要だった四〇のこと
脳についての解説
訳者あとがき ことばを失った科学者の本
解説:養老孟司
解説:茂木健一郎


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