見出し画像

バカと無知(2022/10/15)/橘玲【読書ノート】

『能力が低い者ほど自信を持って主張する理由』

ダニング=クルーガー効果(認知バイアス仮説)

ダニング=クルーガー効果とは、人々が自己評価を誤るという認知バイアスに関する理論です。能力や専門知識が少ない人が自己の能力を上回って見積もる傾向、逆に、能力が高い人が自分の力量を見くびる傾向があります。

この理論を提唱したコーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによると、このバイアスは主に、能力が不足している人々が自分自身の能力を過大評価する内的な錯覚、および、高い能力を持つ人々が他人を過大評価する外的な錯覚から生じると考えられています。この現象は、優越の錯覚と関連があり、自己の力量の不足を認識できないという事態から発生します。自己の思考や認識についての認識、すなわちメタ認知がないと、人々は自身の適任性を客観的に評価できません。

一部の研究では、自己の能力の欠如を認識するのが難しいという事実が、過度な自己評価を生むと考えられています。これは認知バイアスの一形態であり、活動の評価基準を理解していないことが自己評価の誤りを招くとされています。この過大評価の傾向は、読解、医療診断、自動車運転、チェスやテニスのゲームなど、さまざまなシチュエーションで観察されています。

ダニングとクルーガーによる調査では、低い能力を持つ人々が以下の特徴を持っていることが明らかにされています。

  • 自己の能力が不十分であることを理解できない

  • 自己の能力の不足の程度を認識できない

  • 他人の能力の高さを正確に推定できない

  • 実際に訓練を積んだ後では、自己の能力の欠如を認識できる

ダニングは自身の著書「Self-insight」で、自己認識の欠如を「日常生活の病態失認」として表現し、身体障害者が自分の身体能力の不全を否認または認識できないという認知バイアスが存在することを示しました。彼は「もしあなたが無能なら、あなたは自分が無能であることを知ることはできない。正しい答えを導き出すためのスキルは、その答えが何であるかを理解するのに必要なスキルと同一である。」と述べました。

2000年に、この効果を定義したダニングとクルーガーは、彼らが1999年に発表した論文「Unskilled and Unaware of It」により、優越の錯覚を生む認知バイアスについてイグノーベル賞の心理学賞を受賞しました。

正義のウラに潜む快感、善意の名を借りた他人へのマウンティング、差別、偏見、記憶……人間というのは、ものすごくやっかいな存在だ。しかし、希望がないわけではない。一人でも多くの人が人間の本性、すなわち自分の内なる「バカと無知」に気づき、多少なりとも言動に注意を払うようになれば、もう少し生きやすい世の中になるはずだ。科学的知見から、「きれいごと社会」の残酷すぎる真実を解き明かす。
「きれいごと」だけでは生きていけない
『言ってはいけない』から6年、「人間について、知りたくないけれど、知っておくべきこと」「芸能人と正義に関するニュース」がどうして人気コンテンツになるのか?
キャンセルカルチャーが心地よさをもたらすのはなぜか?
バカと利口がじっくり向き合うことで生まれる悲劇とは?
「きれいごと」ばかりがはびこる現代社会の「残酷な真実」に光を当てる決定版。

能力や専門性や経験の低い者は自分の能力を過大評価し、また、能力の高い者は自分の能力を過少評価する傾向がある。
正しい答えを導くには莫迦を排除して決めるのが賢明

バカの問題は自分が〇〇であることに気づかないこと
人は自分の能力を過大評価する傾向がある。例えば、運転技術やユーモアのセンス、論理的思考能力など、自分は平均以上だと思いがち。これを「人並み以上効果」と呼ぶ。実験では、学生たちが自分の論理的推察能力を過大評価していたことが示された。特に成績下位25%の学生は、自分の実際の点数(12点)と比べて、予測では68点(5倍以上の過大評価)と答えていた。
動画は、人間の認知バイアスや自己認識の問題に焦点を当てており、特に「自分がバカであることに気づかない」というテーマを掘り下げています。

人間の社会的性質と脳の特性
人間は社会的生物であり、初めて会った人に対して、自分と相手の地位や収入、学歴などを比較して、どちらが上かを知りたがる。脳は、自分より上の相手との比較を損失と感じ、自分より下の相手との比較を報酬と感じる。
正義の定義と社会問題
例えば、飲食店が規定時間外にお酒を提供する行為や、ワクチン接種を避ける「フリーライダー」の行動は、社会的に許されないとされる。人間の脳は、不正行為を見抜くように進化している。
バカと無知の問題
理学者デビット・ダニングとジャスティン・クルーガーによる実験(ダニング・クルーガー効果)では、能力の低い人は自分の能力を正しく認識できないことが示された。学生たちは自分の実力を3割以上過大評価していた。


PARTⅠ 正義は最大の娯楽である

1なんでみんなこんなに怒っているのか
2自分より優れた者は「損失」、劣った者は「報酬」
3なぜ世界は公正でなければならないのか
4キャンセルカルチャーという快感

PARTⅡ バカと無知

5バカは自分がバカであることに気づいていない
6「知らないことを知らない」という二重の呪い
7民主的な社会がうまくいかない不穏な理由
8バカに引きずられるのを避けるには?
9バカと利口が熟議するという悲劇
10過剰敬語「よろしかったでしょうか?」の秘密
11日本人の3人に1人は日本語が読めない
12投票率は低ければ低いほどいい
13バカでも賢くなれるエンハンスメント2・0の到来

PARTⅢ やっかいな自尊心

14皇族は「上級国民」
15「子どもは純真」はほんとうか?
16いつも相手より有利でいたい
17非モテ男と高学歴女が対立する理由
18ほめて伸ばそうとすると落第する
19美男・美女は幸福じゃない
20自尊心が打ち砕かれたとき
21日本人の潜在的自尊心は高かった
22自尊心は「勘違い力」
23善意の名を借りたマウンティング
24進化論的なフェミニズム

PARTⅣ 「差別と偏見」の迷宮

25無意識の差別を計測する
26誰もが偏見をもっている
27差別はなぜあるか?
28「偏見」のなかには正しいものもある?
29「ピグマリオン効果」は存在しない?
30強く願うと夢はかなわなくなる
31ベンツに乗ると一時停止しなくなるのはなぜ?
32「信頼」の裏に刻印された「服従」の文字
33道徳の「貯金」ができると差別的になる
34「偏見をもつな」という教育が偏見を強める
35共同体のあたたかさは排除から生まれる
36愛は世界を救わない

PARTⅤ すべての記憶は「偽物」である

37トラウマ治療が生み出した冤罪の山
38アメリカが妄想にとりつかれる理由
39トラウマとPTSDのやっかいな関係
40「トラウマから解放された私」とは?
付論1 PTSDをめぐる短い歴史
付論2 トラウマは原因なのか、それとも結果なのか?


この記事が参加している募集

読書感想文

ビジネス書が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?