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理学療法士・ピラティスインストラクターが考える扁平足

1.はじめに

足関節は体重を支え、歩く時の推進力を生むためにいくつかの重要な機能があります。
そのうちの1つが内側縦アーチと呼ばれるものです。

この内側縦アーチに重要な筋が、後脛骨筋と呼ばれる筋となります。


後脛骨筋は下腿骨間膜後面から舟状骨などの足根骨に走行する筋です

この後脛骨筋が機能不全を起こすと、内側縦アーチがつぶれ扁平足となり様々な症状を引き起こします。その1つが『シンスプリント』と呼ばれる疾患で、過去のブログにもまとめていますので、そちらも読んでみてください。

今回は、この後脛骨筋の特徴と、評価方法についてまとめていきたいと思います。

2.後脛骨筋の解剖的特徴

この、後脛骨筋は下腿の筋の中でも深層に位置しており、長母指屈筋・総指屈筋と隣り合って走行しています。


赤い線で描かれている筋は、深部コンパートメントを形成している筋です

そして、下腿の遠位3分の1の部分から腱を形成し、内果の後方を通過した後足底面へと走行します。

また、後脛骨筋の解剖の特徴として、内果の後方を通過する腱は血液供給が乏しいという事が知られています。そのため内果周囲の後脛骨筋腱は、変性と断裂を起こす可能性が高くなります。

後脛骨筋の主な働きとしては、歩行中収縮することで内側縦アーチをサポートする事ですが、後脛骨筋機能不全(以下:PTTD)を起こすことで、痛みや歩行障害を引き起こします。

そしてPTTDの病因には、炎症・変性・機能性・外傷性などがあります。

このPTTDの評価にはいくつかの項目があります。予後予測にもつながりますので参考にしてみてください。

3.後脛骨筋機能評価について

この後脛骨筋の機能評価ですが、前述したように内果後方は血液供給が乏しいため、腱の変性による腱不全症の影響も注目されています。

このPTTDは合計5つの病態に分類されています。


後脛骨筋腱不全のステージ分類

ステージⅠには腱鞘炎が含まれていますが、腱の長さ自体は正常です。

そして、ステージⅢ以上になると手術適応となるケースが多いです。ステージⅡb以上では、後足部の外反が強くなるため歩行時など、足関節の背屈に伴い踵骨と腓骨の間でインピンジが生じやすくなり、足部外側にも疼痛を認められるようになります。

そして、このPTTDに必要な評価は6項目あり、【疼痛部位、変形の有無、 徒手による変形の修正が可能か、後脛骨筋の筋力、heel raise test、  too many toe sigh】となっています。

後脛骨筋の筋力評価は、足部内がえしに対して抵抗を加え筋力を確認します。健側と比較することで筋力低下が起きているかがわかります。

heel raise testは片足で後方から確認します。下記の写真のように後脛骨機能不全がある場合は、後足部が外がえし位のままで挙上します。


右足はheel raise testは陽性です

too many toe sigh とは下記の写真のように、後方から足部を視診すると中足部が外転しているため外側の足趾が後方から確認できます。

右足はtoo many toe sigh陽性です

4.PTTDの運動療法の効果

このPTTDに対して、運動療法の効果を調べた研究があったので紹介していきます。

この研究は2008年に実施されたもので、対象はPTTDステージⅠまたはⅡの36名成人です。
参加者は3つのグループに分けられ、12週間のプログラムを実行しました。
(1)装具装着とストレッチ群(Oグループ)
(2)装具装着、ストレッチ、同心円状の漸進的抵抗運動群(OCグループ)
(3)装具装着、ストレッチ、偏心漸進抵抗運動群(OEグループ)

これらを介入前後で、足の機能指数、5分間歩行テストでの移動距離、および5分間歩行後の痛みのデータが集約されました。

結果は、すべてのグループでデータの改善がみられていました。特にOEグループが最も大きな改善が見られました。

この結果から装具やストレッチだけでなく、運動療法が効果的であることがわかるかと思います。ですが、この研究で紹介されていた運動療法は特殊な器材を使用していたため、今回は別の運動療法を紹介します。

2017年のscience directに掲載されていた内容で、後脛骨筋、長腓骨筋、長趾屈筋、および内側腓腹筋の筋活動をヒールレイズ時の足の位置を変えて筋活動量を測定した研究がありました。
ヒールレイズは、1)ニュートラル 2)30°外転位 3)30°内転位の3つの肢位で行っておりました。

結果としてはニュートラルと比較して、内転位だと長腓骨筋、外転位だと後脛骨筋と長趾屈筋に有意な筋活動がみられたという報告となっていました。


足部の位置を変えることで、筋活動量が変わります

一方そのほかの研究では足部外転位でヒールレイズを行う際に、小指側に荷重を乗せるようにすると、後脛骨筋が優位に働くという報告もありました。

いずれにせよ足部の位置がニュートラルよりも、外転位か内転位で位置を変えて行うことで、筋活動量が変化することが分かります。

臨床で行う際も足部の位置を変えて行うと良いかと思います。

5.まとめ

・後脛骨筋は内果後方の腱組織になると、血液供給が乏しくなり変性をおこしうやすい。

・後脛骨筋の機能不全に対する評価は6項目あります。そして、ステージⅢ以上になると手術適応となるケースが多いです。

・後脛骨筋に対する運動療法としてヒールレイズが効果的ですが、足部の位置を変えることで筋活動量も変化します。

最後にこの記事を読んで少しでも参考になりましたら、スキまたはフォローをよろしくお願いいたします♪

理学療法士・ピラティスインストラクター  辻川 真悟

参考・引用文献
Posterior Tibialis Tendon Dysfunction: Overview of Evaluation and Management
Orthopedics, 2015;38(6):385–391

・Petersen W, Hohmann G, Stein V, Tillmann B. The blood supply of the posterior tibial tendon. J Bone Joint Surg Br. 2002; 84:141- 144.

・Hintermann B, Gächter A. The first metatarsal rise sign: a simple, sensitive sign of tibialis posterior tendon dysfunction. Foot Ankle Int. 1996; 17(4):236-241.

・Mosier SM, Lucas DR, Pomeroy G, Manoli A II. Pathology of the posterior tibial tendon in posterior tibial tendon insufficiency. Foot Ankle Int. 1998; 19(8):520-524.

・足部・足関節 理学療法マネジメント
機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く

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