皆さん…いきなりですが　ここで問題です

『しつけ』という言葉がありますが
皆さんは　漢字で書けるでしょうか？

答えは  …

「躾」　です！

字を見れば『なるほど』と思いますよね
「身」＋「美」　で　「躾」という訳です

私が子供の頃に 母の「躾」で忘れられない
ことがありましたので  今日はその話を聞いて
下さい

母は父と結婚して　田舎で暮らし始めましたが
都会で生まれ育った母には　田舎での生活が
性に合わず　日頃から不満を溜め込んでいたの
かも知れません

父は温厚で誠実な人柄でしたが　母は少しだけ
お怒りっぽいところがありました

そんな母から受けた『躾』というのは …

ゴミは捨てずに持ち帰ること！

…でした

な～んだ　そんなことかと思われるかも
知れませんね

だから私は　小学校へ登校し　自宅に帰るまで
の間自分のゴミは全て　どこにも捨てないで
自宅に持ち帰りました

私が学校から帰ると母は
『さぁゴミを出して～』
と声を掛けます

それで私は　ズボンと上着のポケットの中が
分かる様に　裏地まで引っ張り出してその日
１日分のゴミをテーブルの上に置きます

母は出てきたゴミを確認すると
『さぁ 手を洗って　おやつよ』
と言うのでした

ところが　私が小学校３年生のある日
事件が起きました

小学校は　自宅から徒歩２０分の所に
ありましたが　田舎の道路ですから  舗装など
されてないジャリ道で　その両側には雑草が
生い茂っていました

その日も　学校から戻ると　あのゴミ確認が
始まりました

しかし … 私はドキドキしていました

理由は  いたって簡単です

家を出てから　帰宅するまで
ゴミらしいゴミは　何も無かったからです

誓って言いますが　その日は
何もゴミが出ない日だったのです

そして　最悪な瞬間がやってきました！

母はこう言い切ったのです

『１日 学校にいて　ゴミが一つも
　出ないことなど　あるハズがない！
　学校に引き返して　自分が捨てたゴミを
　すぐに拾ってらっしゃい！』

きっとまた何か気に障ることが
あったのかも知れないのですが…
こうなると　もう止まりません

私は仕方なく　
自分が捨てたことになる
ゴミを拾いに行くことにしました

そうだ…こうなったら　もう
証拠を捏造ねつぞうするしかない！

黒いサタンが　私の背後に忍び寄り
背中に張り付いて　耳元で囁きました

（何でもいいから　落ちてるゴミを
　拾って　それでお茶を濁すんだよ！）

残された道は　それしかありません

私は  ジャリ道をトボトボと歩いて
学校に着きました

田舎の学校ですから　校庭の周囲に
フェンスなどは無いので　自由に
出入り出来ましたが…

しかし 校庭にはゴミらしき物は
何もありません

教室にはカギが掛けられていたので
中に入ることさえ できません

困りました …
もう どうしたら良いでしょうか？

もしこのまま　手ぶらで帰ろうものなら
タダでは済まないでしょう

何かで叱られた時の わが家で一番恐ろしい
懲罰とは…真っ暗な押入れの中に　灯り無しで
２時間も閉じ込められる『押入れの刑』です

もう想像しただけで　ゾッ  とするあの刑
だけは「まっぴら  ごめん」です

アレだけは 何としても回避しなければ…

途方に暮れて　帰り道を歩いていると
何と　道路わきの草むらの中に
丸めた『茶色っぽい紙くず』を発見
しました！

やったぞ！

それを拾い上げ そのままズボンのポケットに
押し込みました

ひとつしか無いけど … まぁ何とかなるだろう！

　　…

私は　急いで自宅に帰り着くと
拾った紙くずを　ポケットから
取り出して　母に差し出しながら

『捨てたゴミが見つかったから
　拾って来た…』

と… ウソの説明をしました

すると母は　その紙クズを広げて
しばらく眺めていたのですが　何も言いません

訳がわからず　母が広げた紙くずを覗きこむと
それは『SHINSEI（しんせい）』という名前
の茶色いタバコの外箱でした

私と全く関係ないゴミであることは明白です！


だめだ　バレた！
これで「押入れの刑」は確定だ…！


と思ったとたん

母はこう言ったのです

『自分のゴミ●●●●●をよく拾って来たわね！
　　今度からは捨てたりしちゃダメよ … 』

そう言うと 母は
ポロポロと涙を流して
泣き始めました…

私は いつも気丈な母が
泣いている姿などを見たのは
初めてだったので…

なんだか  とても悲しくなって
母と一緒に泣きました

その時から　私は

路上でゴミを捨てることが

出来なくなってしまったのです

だから　ゴミを捨てない分だけ

私の「身」は「美」しいです！

しかし  それ以外は…

それなりです！