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自分ごとになっていなかった日中関係。学生インターンが「東京-北京フォーラム」を通して学んだこと。

こんにちは!言論NPOインターン生です。

2023年10月、言論NPOは「第19回 東京-北京フォーラム」を北京で開催しました。このフォーラムは、政治・外交、安全保障、経済、デジタル、メディアなど、様々な分野での日中の有識者が集まり、日中やアジア、世界が抱える課題に真摯に向き合い議論する、民間対話です。

私は学生インターンとして北京に同行し、言論NPOが行う「民間外交」の現場をたっぷりと体験させていただきました。そこで今回は、「東京-北京フォーラム」での経験やそこで得た "気づき" について振り返ろうと思います!

"近くて遠い中国"ー自分ごとになっていなかった日中関係

私は今まで中国を訪れたことはなく、中国に対するイメージはメディアやネットでの情報によってかなり固定化されていました。

普段よく耳にする議論は何かと敵対意識が強いものばかりで、中国を身近に、ましてや「どうしたら協力を推し進められるのか」ということを真剣に考える機会はなかなかありませんでした。

そんな中、2023年の5月、「東京-北京フォーラム」の事前協議のために人生で初めて中国を訪れ、その後、本番の10月にも北京へ同行しました。

また、インターンとして「東京-北京フォーラム」の広報に関わる中で、なかなか理解されにくい「中国との民間対話の重要性」を多くの人に伝える方法をとことん考えました。

さまざまな人の話を聞き、その意見を自分自身で理解し、伝える方法を模索する中で、それまで受動的に飲み込んでいた「日本 vs 中国」という単純な構図がいかに表面的なものだったかを痛感しました。

下記では、私が「東京-北京フォーラム」をきっかけに大切さを実感した、3つのことについてお話ししたいと思います。

1. 日中関係の未来を考えること

まず印象に残っているのは、5月に行われた事前協議後の座談会におけるやりとりです。

対立意識が強まる中、多くの一般の人はなぜ「東京-北京フォーラム」のような場で中国と真剣に議論するのか、疑問に思うだろうという話がありました。それでも中国と議論しなければならないのはどうしてなのか、その信念とは何なのか、そうした質問が投げかけられたのです。

それに対して、参加していた宮本雄二・元中国大使はこう発言しました。

この隣の大国とどういう関係をつくるのかというのは、まさに自分の国の将来に直結する最重要問題です。そこで対立と衝突の道を選ぶのか、それとも平和と協調の道を選ぶのか。その選択によって、両国の将来は完全に分かれてしまう

この今のご時世で、対立と衝突になった時に人類が被る悲惨な結果は、単に経済の問題だけではなくて、大変な惨事になるわけです。いかにして平和と協調を実現し、そして共に繁栄していくという道を選ぶのか。時々その可能性は小さくなったりしますが、その可能性をいかにして大きくするか、というところで日本社会は一生懸命努力することが必要です。

2023年5月26日 座談会「第19回東京-北京フォーラム」に向けて

「対立と衝突になった時に人類が被る悲惨な結果は、単に経済の問題だけではなくて、大変な惨事になる。」今もなお続くウクライナ戦争の惨状を脳裏に浮かべながら、この言葉の重みをひしひしと感じていました。

お互いのポジションを譲らず、ただただ「けしからん」と言い合うだけでは何も進まない。そして、長期的な視点でお互いに繁栄できる道を実現しなければ、決して人ごとでは済まされない事態が起きてしまう。そこへの強い危機感と問題意識を抱くきっかけになりました。

2. 世界的な課題に正面から挑むこと

民間外交の現場で見たものとは?

ウクライナ戦争やイスラエルとハマスの衝突、台湾海峡の緊張といった、世界の平和秩序を揺るがす出来事が、安全保障の問題から経済活動にまで影響を及ぼしています。これらの重大な世界の課題に、私たちはどのように向き合うべきなのでしょうか。

「東京-北京フォーラム」を通して目の当たりにしたのは、「対立と戦争の不安を解消し、平和を実現する」という壮大な目標の下で、日中がそれに対してどのような役割を果たせるのか、そのために日中関係はどう発展すべきなのか、そんな骨太の議論を中国側に幾度となく迫っていく工藤代表の姿でした。

議論本番の前日、中国側との事前協議に臨む
言論NPO代表 工藤泰志

普段は吸い上げられない平和を願う国民の声に向き合い、政府間の恒常的な対話の設置やアジアにおける核不拡散の合意など、さまざまな提案を真っ向から中国側にぶつけていくのです。

特に衝撃を受けたのは、夜明け前まで続いた中国側との「合意文」の交渉。東京-北京フォーラムでの議論を踏まえて作成されるこの合意文は、単に "〜〜について話し合った" と確認し合うだけのものでは全くありませんでした。

“中国の新しい外交スタンスをどう引き出すのか”、本当にそんな勢いで交渉が行われていたのです。

立場や意見が異なるため、着地点を見出すのが難しい場面にもかかわらず、なんとかして中国側からの合意を引き出そうと模索する。
そうした工藤代表からの提案に対して中国側も真剣に向き合い、さらに議論を深めることで、お互いの懸念を理解し、相互理解が深まっていく。そんな過程を目の当たりにしました。

紛争や核問題など国際課題に関する政府間交渉は普段見られるものではなく、今までは「外交」という枠組みの中で、一般の国民がどのような役割を果たすことができるのか、全く想像できませんでした。

しかし今回私が目にしたのは、政治の世界での対立が深まる中で民間が、「平和」という直球なアジェンダ設定を行い、その実現に向けて次々と議論を展開していく姿でした。

さらに、「これらの民間の取り組みが、政府間外交の環境を変える可能性がある」そんな強い信念と使命感を持って厳しい交渉に臨む姿です。その戦いに身を投じる姿を目の前にして、私には "民間外交の可能性" というものがより鮮明に浮かび上がり、深く心に響きました。

(「民間外交って何?と思った方は、是非こちらの記事をご覧ください!👇)

自分ごとになっていなかった日中関係、そして世界の課題。そこから、様々な意見に触れる中で問題意識が芽生え、民間外交の現場に深く関わることで、気づいたら真剣に、これらの課題に向き合っている自分がいました。

3. 既存の枠組みにとらわれず行動すること

最後に、もう一つ大きな刺激を受けたのは「東京-北京フォーラム」をきっかけに知った、国境を超えて活躍する日中の若い世代の姿です。

なぜなら、"当事者として考えるようになった" という上記の変化に加えて、「私たちのような若い世代が将来の社会に向けてアクションを起こす担い手になっていくんだ」そんな責任感と "ワクワク感" を強く感じたからです。

「東京-北京フォーラム」青年対話終了後の集合写真 
会場を訪れた中国人の学生や中国の大学に留学中の日本人学生も一緒に。

「東京-北京フォーラム」では、ミドルシニア、シニア世代の有識者だけでなく、20代・30代の若いパネリストが議論する「青年対話」のセッションが設けられています。そこには、気候変動やメディア、ビジネスなど様々な分野で活躍する若手パネリストが参加しました。

「新しい日中関係を目指し若者が担うべき役割」がテーマのこのセッションで多くのパネリストが口を揃えたのは、若者から既成の枠組みから脱却し、行動を起こしていくことの重要性。

グリーンテックや電気自動車、ロボット技術など、既存の社会、産業構造を打ち破る流れが加速する中で、既にそうした分野で奮闘する若い世代の声はとても刺激的でした。

今まで感じていた "危機感" だけでなく、自分たちから行動を起こし、変化を起こせるかもしれない、そんな "ワクワク感" を感じる前向きな議論からは大きなパワーをもらいました。

言論NPOのインターンを始めてから自分の中で育ってきた世界や社会と向き合い続ける姿勢。その深く根付いてきた当事者性を必ず社会に貢献できるものにしていきたい。

そのための挑戦はあまりにも大きなものに見えることもありますが、“ちょっとした勇気” を出して一歩ずつ前に進み続けたい、そう思っています。

まとめ

いかがだったでしょうか。私はとても濃密だった「東京-北京フォーラム」で感じたことを言語化するのがあまりにも大変でした…(笑)。

ですが、改めて学んだことの大きさに気づくとともに、様々な場所に行き、自分の目で見て、聞いて、多様な視点に触れることで、凝り固まった考えを壊していくことの大切さを実感する、とても良い機会になりました。

日中関係についてもそうですが、メディアの報道だけでなく、自分自身で能動的に情報を得て、多様な視点から物事を考えてみることを、これからも大切にしていきたいものです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次回もお楽しみに!


日中の有識者約100名が参加した「第19回東京-北京フォーラム」。7つの分科会で具体的にどんなことが議論されたのかについては、言論NPOのウェブサイトにて詳細なレポートが公開されています。ぜひ、こちらからご覧ください!


<この記事を書いたインターン生について>
早稲田大学国際教養学部4年。大学2年生の秋から1年間デンマークのコペンハーゲン大学にて交換留学を経験し、社会課題の調査や提言を行うシンクタンク業界に興味を持つ。帰国後に言論N P O参画し、広報に携わる。

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