原神漢字研究所

原神に登場する漢字や、引用されている古典等、主にゲーム内に見られる漢字文化的側面を取り…

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原神に登場する漢字や、引用されている古典等、主にゲーム内に見られる漢字文化的側面を取り扱った記事を気ままに書いています。気分で他の雑多なテーマを扱うこともあります。 【Twitter】 https://twitter.com/genshin_kanji

最近の記事

世界任務「仙人遊荘」の少女の正体について

【R6.3.17 翻訳修正により全体的に改訂】  元々は、記事を公開した当初のツイートにもあるように、クエストの最後に見られた翻訳問題への言及が主旨であったが、(恐らくVer4.5のアプデにて)その修正が確認されたため、全体的に文章を調整した。 任務のあらすじ まず、簡易的にあらすじを述べる。ゲーム内時間で夜になると、以下の場所に筏に乗った少女シャンジュン(原文:香莙)が現れる。この原文の表記を頭の片隅に置いておいて欲しい。  少女の話を要約すると、「自分には薬草採りのお

    • 棘薔薇の会のロゴが「心臓みたい」は誤訳か?

       Twitter(旧X)で、ナヴィアの以下のボイスが時たま話題に上がっているのを見かけることがある。  ナヴィアが棘薔薇の会のロゴマークに言及する際のボイスであるが、どうやら最後の「心臓みたいな形でしょ」という箇所について、「心臓」という生々しい言葉が使われていることへの違和感、「ハート」の誤訳じゃないかという不信感があるらしい。  例のごとく原文を召喚することとする。  最後の「你看,轮廓像颗心脏一样呢。」というのがそれである。一応、語句を説明しておくと、 你看:見

      • 【原神】仙人の豆知識

         あなたは不老不死になりたいですか?いや、怪しい宗教勧誘ではないです。ただ、一度は考えたことはあるかと思います。よほど厭世的な思想を持っている人でも無い限りは、その響きに魅了されることでしょう。古代人も同じでした。 そもそも仙人って何? 「仙人」とは、修行により不老不死を体得した、伝説上の超人的存在を指します。古代中国において、不老不死を求める人々の理想的存在であり、主に道教の信仰対象とされてきました。 Q.すみません、道教って何すか? A.中国の民族宗教で、仙人になる

        • 【原神】謎翻訳語の真意

           原神において、謎翻訳の台詞がたびたびネタにされるのは周知のことですが、この記事ではキャラクターボイスの中から代表的なものをいくつか取り上げ、それらが本来どういう意味なのかを紐解いていきます。また、もし自然に訳すとしたらどのような候補が考えられるか、まで言及したいと思います。  先に言っておくと、私自身はこれから挙げる謎翻訳語は大好きです。なので、翻訳を変更してほしいという気持ちは全くなく、あくまでその真意を探ることが目的です。所々に、筆者個人の解釈が含まれていることは言う

        世界任務「仙人遊荘」の少女の正体について

          ナヒーダ天賦名・星座名論考

           ナヒーダはかなり仏教色の強いキャラクターであり、それが天賦名や星座名にも表れている。そもそもスメールという国が、仏教発祥の地であるインドをモチーフの一つに組み込んでおり、ましてやその神ともなれば、当然といえば当然である。  今回は語釈が中心となるため、複数の工具書を参照するのはもちろんのこと、熟語を羅列した造語については、なるべく意が通ずるように全体を解釈することに努めることとする。また、意味が曖昧なものについては、深く解釈することはせず、客観的に判断できる事柄のみを記載

          ナヒーダ天賦名・星座名論考

          リオセスリと胡桃の「いってらっしゃい」は全然違う

           「行って…らっしゃぁい!」と「いってらっしゃーい!」の違いについてのお話です。  バージョン4.1予告番組内でリオセスリが紹介された際に、元素爆発ボイスと思われる「行って…らっしゃぁい!(CV小野大輔)」が流れ、少し話題になりましたね。  これは素直に受け取って大丈夫です。普通の行ってらっしゃいです。原文では「一路顺风」で、遠方に行く人を見送る時の挨拶です。英訳のHave a safe tripも分かりやすいですね。  これからぶん殴る敵に対して言うことを考えると、他

          リオセスリと胡桃の「いってらっしゃい」は全然違う

          煙緋の台詞から学ぶ成語

           煙緋は博覧強記な法律家ゆえか、台詞の中に成語が結構でてきます。今回はそれらをピックアップし、文脈における意味合いなどを考えていきましょう。あとついでというかおまけとして、「炎食いの刑」「獬豸」の話もします。 後生畏るべし 『論語』にある孔子の言葉に、「後生畏るべし」というものがあります。「後生」とは字の通り、自分より後に生まれてきた人を指します。「先生」の対義語ですね。それを「畏れるべきだ」というのは、自分より若い人は可能性が無限大で、将来どんな大物になるか分からないのだ

          煙緋の台詞から学ぶ成語

          珊瑚宮心海と『孫子』

          【R5.9.12】全体的に加筆。  今回は珊瑚宮心海と『孫子』についてのちょっとしたお話です。  ご存知の通り、心海は海祇島の現人神の巫女ですが、幼い頃から兵学に関する書物を嗜んできたという設定があります。兵学とは、どのように兵隊を動かして、どのような戦術を駆使して戦うかといった、軍事に関する学問です。そしてここ東洋においての代表的な兵法書といえば『孫子』でしょう。  『孫子』は、紀元前5世紀半ば〜紀元前4世紀半ばにかけて、孫武という人物あるいはその一派が著したとされる

          珊瑚宮心海と『孫子』

          小4でもわかる世界任務「善悪のクヴァレナ」あらすじと用語一覧

           この記事は、ver3.6のメイン世界任務「善悪のクヴァレナ」の簡易的なあらすじと、関連するゲーム内用語を一部まとめたものである。  あらすじは「小4でもわかる」レベルで徹底的に簡易化し、細かい部分は省き、大筋だけ掴めるようにした。専門用語は一切使わずに言い換えたが、該当する用語を適宜ルビ形式で示した。だいたい5分くらいで読み終わる分量である。 あらすじ本文  教令院から冒険者協会に「砂漠の北の方の空にクソでか穴があるから、現地の謎集団から情報を得て調査してくれ」という

          小4でもわかる世界任務「善悪のクヴァレナ」あらすじと用語一覧

          原神命名考察「申鶴」

           申鶴は原神に登場するキャラクターで、留雲借風真君の弟子です。この記事では彼女の名前について、その由来を探っていきたいと思います。  はじめに「申鶴」は「名前」なのか、それとも「苗字+名前」の構成なのかということを確認しておきましょう。魔神任務間章で見れる、彼女の父が書いたノートでは「申鶴」ではなく「鶴」と呼ばれています。  原文では「阿鶴」となっており、「阿」というのは呼び名の前につけることで親しみを示す表現です。そのため「鶴」は下の名前である可能性が高いですが、苗字は

          原神命名考察「申鶴」

          原神で学ぶ和歌

           原神では稲妻のキャラクターが、そのボイスの中で和歌を口ずさむことがあります。丸々引用することもあれば、部分的にうたったり、あるいは和歌を元にした言い回しをしたり。  今回登場する典拠は『万葉集』と『古今和歌集』で、誰もが知っている日本を代表する歌集ですね。普段ゲーム内で一番聞く機会が多いのは、楓原万葉の元素爆発ボイスでしょうか。ただその他にも色々散りばめられているので、今回は三人のキャラクターを取り上げ、それぞれのやまとうたを巡ってみましょう。  目次は、詠んだキャラク

          原神で学ぶ和歌

          若陀龍王の「若陀」とは何か

           もうすぐ鍾離の誕生日なので、それに因んで彼の友人である若陀の話をしましょう。 (鍾離の話はしないんですかというつっこみは受け付けません) 若陀の発音について 現代中国語で、「若」には二つの発音があります。一つは「ruò(ルオのような音)」で、これが一般的な発音です。「〜のごとく」「もし〜」等の意味の時はこの音で読みます。  もう一つの発音は「rě(ルァのような音)」で、これは少し特殊な発音です。何が特殊かというと、サンスクリット語(昔のインドの言葉)の音訳語を読む時にし

          若陀龍王の「若陀」とは何か

          【原神】セノダジャレ辞典

           セノのダジャレを収集した謎の辞典。原文を参照しないと理解しにくい部分については、その都度解説を加える。今後新たにセノがやらかした場合は、随時追加していく予定である。 「大マハマトラ」と「大マッハマシン」 2022年9月22日、原神公式Twitterにて以下のツイートがあった。  セノのキャラクター詳細のツイートであるが、そのツイート本文に「教令院の学者たちを監督する「大マハマトラ」。クシャレワー学院が作った『大マッハマシン』よりも効率よく仕事をこなす。」とある。この文言

          【原神】セノダジャレ辞典

          原神難読漢字教室 〜難読漢字に悩むあなたへ〜

           この記事は、最近原神を始めてしばらく経ったものの、見たことのない漢字が頻出して読めなかったり、思いもよらない読み方をされたりして、名前や物語が頭に入ってこないという方や、読めはするけれど意味が分かりづらい、言い回しに違和感を覚えることがあるという方を想定読者として、少しでも疑問を氷解させられる教科書的なものがあればという意図のもと、執筆されたものです。もちろん新規でない方にとっても、楽しんでいただけるかと思います。 【R5.11.19】一部加筆・削除・修正。 はじめに 

          原神難読漢字教室 〜難読漢字に悩むあなたへ〜

          【原神】胡桃はなぜ「胡桃」なのか?

           この記事は胡桃(フータオ)の名前の由来についての話になります。せっかくの誕生日なので作ってみました。特に目次を立てることもなく、だらだら書いていきます。 【注意】 胡桃の伝説任務の一部ネタバレがあります。  まず前提として、胡桃は姓が「胡」、名が「桃」です。これは鍾離が「胡堂主(フーどうしゅ)」と呼んでいることや、英版で雲菫と同様に「Hu Tao」とスペースが空けられていることや、胡桃の去年の誕生日メールの中で「胡家(フーけ)」という表現があることからも明らかです。

          【原神】胡桃はなぜ「胡桃」なのか?

          【原神】璃月文字概要

           この記事は、璃月地域に見られる架空文字(以下、「璃月文字」という。)について、その形体分析や解読の可能性等について論じたものである。 第一章 璃月文字とは(一)璃月文字の定義  璃月文字について論じる前に、まず璃月文字とは何かを定義づけておく必要がある。璃月には漢字を元にしたと思われる架空文字、つまり璃月文字が何系統か存在する。主なものについていえば、 一、璃月港を中心とした璃月地域全体の看板等見られるもの。 二、秘境「伏龍の木」の入り口に見られるもの。 三、禁忌滅却の

          【原神】璃月文字概要