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映画「ファイト・クラブ」に見る衝動の解放

こんにちは。
今回から、映画の感想を書いていこうと思います。
第一弾は、「ファイト・クラブ」です。
※ネタバレありですのでお気を付けください。

エドワード・ノートン、ブラット・ピッド主演
監督はデヴィッド・フィンチャーで、ヘレナ・ボナム=カーターも重要な役柄で出演しています。

まず、ファイト・クラブは、男があらゆる抑圧から自身を解き放ち、衝動に身を任せていく映画です。

この映画を観ようと思ったのは、傑作アニメ映画の「映画大好きポンポさん」に出てくるキャラクターが好きな映画として本作を挙げていたことがきっかけ。
曰く、「いかにも映画好きの男の子って感じの作品」ということで、映画好きの男の子である私も観ることにしましたが、まんまその通りの映画と言っていいです。

ポンポさんもめちゃくちゃ面白いので興味があれば是非ご覧ください。
創作に携わる方、一つのことに打ち込む人を羨ましいと感じる人におすすめの傑作です。


▼ファイト・クラブのざっくりあらすじ

  • ファイト・クラブは、退屈な毎日や社会の抑圧に耐えて生きている主人公たちがその衝動を発散させていく映画です。

    満たされない日々を送り不眠症に悩む主人公は、タイラーという人物に出会い、自宅が火事になったことをきっかけに彼と暮らし始める。そして、夜な夜な男たちが殴り合い衝動を発散出来る「ファイトクラブ」を創設することに。
    ファイトクラブには同じような思いを抱えた男たちが集まり続け、徐々に主人公は日常生活でもタイラーのように衝動を発散させていく。
    そして徐々にファイトクラブはタイラーの"軍団"と化し、さらなる抑圧からの解放=テロに手を染めていく。主人公はタイラーの行き過ぎた変化を危険視し彼を止めようと動き出すが、実は主人公は二重人格であり、彼こそがタイラー本人だったことが明らかになる。爆破テロ計画実行の時、主人公は自分に銃を撃ち、タイラーと決別(統合)することになる。

ざっくりとはこのようなあらすじです。

▼ファイト・クラブとはなんだったのか

さて、本作は冒頭に流れるテーマサウンドからもう最高にカッコいいです。
血を滾らせ闘争本能を刺激するような音圧は、これ以上なく「ファイト・クラブ」の名に相応しい。
そう、この映画はカッコいいのです。本作のブラッド・ピッドは最高に自由で男らしく、アウトローながらも「一度はこう生きてみたい」と思わせるような男のひとつの理想像。
また、二重人格というギミックも主人公の抑圧と発散というテーマとも結びつき、安っぽく感じない。
カッコよく、アウトローで、上質なエンタメ。これがファイト・クラブだと思います。
 
また、男臭の強い映画ではありますが、ヘレナ・ボナム=カーター演じるマーラのメンヘラっぷりはあまりにも見事で、彼女なくしてこの映画はあり得ません。感情の表現が非常に細やかで、見入ってしまいます。

▼ファイト・クラブのギミック

終盤にタイラーが二重人格だということが分かりますが、序盤からその伏線は張られ続けています。

・不眠症で睡眠前後の記憶が抜けることがある主人公と、夜勤しかしないタイラー
・主人公とタイラーの会話に割って入ってくる人間が存在しない
・一度も主人公の名前を呼ぶ人がいない

など、よくよく見れば不自然な場面が多く、すぐに2回目を観ても楽しむことが出来ます。「シャッターアイランド」を観た時も似たような感覚。こちらも名作です。

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要所に「コピーのような毎日」「フィルムに一瞬映る男」「良いシーンで映るイチモツ」など、タイラーが二重人格であることやタイラーの遊び心が作品に投影されている様も見られ、観賞後に制作の意図に気づいて楽しめる部分も多い。
また、タイラーの屋敷にある本はどれも臓器が人格を持った小説で、これもタイラーの内なる人格のメタファーであり、二重人格が露わになった作品終盤でその意味の理解が追走してくる構成になっています。
決してギミックありきの映画ではありませんが、パッションとギミックが相互作用をもたらして目が離せない時間を楽しめます。

▼何故男たちはファイトクラブに集まったのか

ファイトクラブで殴り合う様子を観て、「何故この男たちはただ殴り合って喜んでいるんだろう?」という疑問を抱く人もいるでしょう。
もちろん現代では殴り合いは犯罪になってしまうし、表立って人と殴り合いたいと言う人も少ない。しかし、だからこそ衝動の発散というテーマにこれ以上ないのが、タイラーが作り出したファイトクラブなのです。

この手の催しは賭けの対象になりやすく、儲けが発生するため組織の乗っ取りなども起こりやすいが、今作ではそのような素振りすらない。これはファイトクラブに集まった男たちが様々な抑圧を受けてきた者であり、衝動の発散そのものを目的とした純粋な存在だったら(だからこそ目的の異なる者への口外を強く禁じていたとも取れる)。
タイラーが軍団を作り上げた際、彼らがあれほど従順だったのも同様の理由。
抑圧に立ち向かうこと、衝動を発散させること、目的に向かって歩むこと、そのような純粋な思いは高いモチベーションを生むことを私たちは知っているはずなのです。

▼ファイト・クラブ総評

冒頭にも書いたように、ファイト・クラブは「映画大好きポンポさん」という傑作アニメ映画の中で、主人公格のジーン君が好きな映画のひとつ。
ジーン君はクラスのカースト最下位に位置してきた人間であるが故に、衝動に身を任せたくなる欲求を我慢してきたことも多かったと思います。そんな彼にとって、ファイト・クラブでタイラーが自由に衝動を解放していく姿はさぞ魅力的に映ったことでしょう。
(ポンポさんも本当に面白いので是非観てほしい)

もちろん現代の日本で殴り合いなんてしようものならすぐに逮捕されてしまう。ただ、本作を観て私は少し救われた気持ちになりました。
本質は衝動の解放であり、私たちはいつでも自由になれるのだということ。無論人に迷惑をかけるのは論外だが、常識や体裁に縛られず生きるという選択肢があることは、人生の救いの一つだと思います。

と、いうようなテーマを考えなくても楽しめるようなギミックや遊び心満載のエンタメ作品がファイト・クラブです笑。
映画は本人が楽しめれば何でもいいと思いますが、本作はまさにそんな映画。
映画のギミックが好きでも、男たちが殴り合う様が好きでも、タイラーの生き様に憧れても、それら全てに共感できなくても、その全てを肯定してくれるような映画です。

繰り返しになりますが、ファイト・クラブは「映画好きの男の子」にピッタリの映画だと思います。


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