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翠子さんの日常は何かおかしい

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近未来の長編小説になります。 酒呑童子と八尺様の間に生まれた翠子さんが、 怪異を引き寄せては無双状態になります。 ギャグテイストの波乱の日常をお楽しみください。
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第1話 スカートの中身

あらすじ  近未来の日本、時田翠子は自身の能力を隠した状態で会社員として働いていた。父親…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第2話 夏の風物詩

第2話 夏の風物詩  塵に等しい星がポツポツと浮かぶ。  ホルンのような警笛が響く。永瀬…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第3話 わたし、綺麗?

第3話 わたし、綺麗?  時田翠子はいつもより早い帰宅に気を良くした。ワンルームマンショ…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第4話 小さな巨人

第4話 小さな巨人  住宅街の中にぽつんと公園があった。囲うように桜が植えられ、春には赤…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第5話 殺人鬼

第5話 殺人鬼  木々に覆われた駅舎は頑なに太陽を拒んだ。近くの岩肌の一部は黒く変色して…

黒羽カラス
2週間前

『翠子さんの日常は何かおかしい』第6話 夏の定番

第6話 夏の定番  待望の土曜日が訪れた。窓外の雀は早朝からチュンチュンと大乱闘。ベッド…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第7話 生家(その1)

第7話 生家(その1)  グレーのパンツスーツに着替えた時田翠子は苦々しい顔でベッドを見ていた。  ずらりと並べられた五着のチュニックは肝試し用と判明した。斬新なデザイン等ではなかった。 「なんで私は!」  腕の一振りでチュニックを抱えた。その状態でクローゼットの中に投げ込んだ。  ずんずんと歩いて黒のパンプスに足を捻じ込む。ドアの前に立ち、意識して表情を和らげる。口角が下がりそうになる度に人差し指と親指で押し上げた。十分に感覚を顔に馴染ませてドアノブを掴んだ。  朝陽が降

『翠子さんの日常は何かおかしい』第8話 生家(その2)

 六地蔵の裏手には細い道があった。緑に浸食されて数メートル先が見えない。  翠子は左手を…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第9話 生家(その3)

 風呂から上がると時田翠子は離れの一室で豪勢な膳を振る舞われた。薄っすらと微笑み、慎まし…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第10話 金の亡者

 仄暗い部屋に静かな寝息が聞こえる。規則的な音は急に止まった。数秒で唸るような声が漏れ出…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第11話 もしかして

 珍しく定時退社となった。時田翠子はパンツスーツで身を固めて最寄りの駅に急ぐ。  目が自…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第12話 目覚める

 時田翠子は苦しそうな顔で瞼を開けた。天井に取り付けられた丸い照明の光を遮るように手を翳…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第13話 心の深淵

 見晴らしの良いフロア―を貸切にした立食パーティーが催されていた。場所がホテルの為、提供…

黒羽カラス
2週間前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第14話 ポイ捨て禁止

 その日、時田翠子は山に訪れていた。  ベージュのサファリハットを被り、強い日差しに備えた。水色のパーカーの下には速乾性に優れた黒のインナーウェアを仕込んでいる。白いハーフパンツは歩き易く、肌を守る為に黒のスパッツを穿いた。携帯食料や細々とした物はオレンジ色のリュックサックに収めていた。  登山道に足を踏み入れて十数分。渓流のせせらぎが聞こえてきた。横手に顔を向けると細い木々の合間から清らかな流れを目にすることができた。  更に数分後、はしゃぐ子供の声が耳に入った。冷たいと言