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なんてDolce!(さつまいものガトーショコラ)

 マスクをする生活になって残念なことがある。子供に対して私の表情がわかりにくくなったことだ。それにせっかく話しかけても、多分聞き取りづらい、それに話している時の口の動きを見せてあげることができない。これは子供の言葉の発達に酷く悪影響なのではと、気になっている。

 しかし、外でもマスクを致し方なく外す瞬間が最近2つある。子供にたんぽぽの種を吹いて見せる時と、シャボン玉を吹く時だ。今子供と遊ぶ手段が限られている中、毎日の日課になっている。

 この家に住んで3−4年になるが、最近初めて発見した小道がある。近所の家と家の間にある幅1メートルにも満たない雑草が荒々しい小道。子供はこういう道が何故か好きだ。私もかつて好きだったし、今でも子供と通るとワクワクする。絵の額やもしくは家の柱に刻みたくなるような名も知らない雑草雑花を見ると、そのイメージから続け様に私の想像は走る。この小道のゴールにはふわっとたくさんのたんぽぽの種が風に吹かれている。アパートの裏、しかも室外機の前の小さなファンタジア。私の子供はいつもそこで2本だけ摘み取って、走って吹き飛ばす。(吹く真似は一応するけれど種を飛ばすまでの技量はまだない)そして最後に何故か茎を裂くのだ。これは驚いたことに既視感があった。多分私も小さい頃、たんぽぽの茎をぴーって割いていたんだと思う。

このなんとも素敵な小道の話を夫にすると、

「あーあのStradinaね。気になってた」とのこと。

 これがまた私がイタリア語を好きなところなのだが、イタリア語はある程度単語を覚えてくると、全く自分が知らない未知の単語にいざ出会しても、なんとなくわかるという事象が起きる。知らない漢字がなんとなく意味がわかる、みたいな感覚に似ている。頻出の言葉が組み合わさった単語などもそうだが、この語尾に「ィーノ」「ィーナ」というのが何かの小型版みたいな時に使う。これがなんとも可愛くて私は大好きだ。「Strada<ストラーダ>」はもしかしたらフェリーニの映画でご存知の方もいるかもしれないが、「道」という意味で、「じゃあ小道ってなんて言うんだろう」って思ってると「Stradina<ストラディーナ>」なのだ。「あ!なーんだ!」ってなる。例えば「Pantaloni(ズボン)」→「Pantaloncini(半ズボン)」とか「Seggiola(椅子)」→「Seggiolino(車のベビーシート)」になる。可愛すぎると思うのは私だけなのだろうか。たまにこんな様子で、適当に私の造語を試しに言っても通じたりする。特に子供の持ち物は全て「ィーノ」にされる。子供の靴下のことを「Calze(靴下)」というと通じなくて「あーCalziniね」と訂正される。日本語的には訂正するまでのことなのか!?って思うんだけれど。

 日本に知られているイタリア語の中で、実はいろんな意味、使い方があるというのも結構面白みを感じるところだ。例えばDolceという単語も日本では「デザート」の意味でしかほとんど知られていない。しかしこれは元々「甘い」という意味で、それから転じて「柔らかい」とか「優しい」「うっとりする」みたいな意味もあって、使われ方が幅広い。Sei dolce!(あなたって優しいのね)もいうし、はたまた「acqua dolce」とは軟水を意味する。この芋づる式になっている言語の仕組み。言葉ってだから面白い。

 さてさてPatata dolceという野菜がある。Patataはじゃがいものことを指すのだが、Patata dolceはサツマイモのことだ。本来イタリアの野菜ではないと思う、名前の感じからも多分アメリカから渡ってきたんだろう。しかし、このPatata dolceを使ったガトーショコラのレシピを私は何故かイタリア人の友人から教わった。御宅にお邪魔した時に「さて、このケーキはなんの野菜が使われているでしょう?」と謎かけられた。それまで自分が作ってきたガトーショコラよりもしっとり、数段美味しくて、恐れ入ったという感じだった。砂糖も小麦粉も使っていないから、普通のガトーショコラよりもちょっとだけヘルシーな気がする。甘ーいサツマイモを使うと美味しい、けれど何よりやっぱりイタリアのチョコレートを使うと格別になる。いつもイタリアのマンマから送ってもらうVenchiのチョコを使っていたが、最近はLindtのこのチョコでも美味しく仕上がることを発見した。85%ぐらいがちょうど良い、けどお好みで。

私はこのケーキを作るためだけに、いつもサツマイモは手に入れたらマッシュして冷凍している。もうそろそろ季節もおわっちゃうかな。

※レシピ

La torta di cioccolato con le patate (ガトーショコラ)

<材料>(直径20cm型)

サツマイモ(1本 およそ250g マッシュしたもの)、卵2個、蜂蜜(大さじ4杯)、バター60g(室温に)、ココアパウダー(40g)、チョコレート(溶かし40g)、塩少々、牛乳少々、バニラビーンズ(あれば)

1. サツマイモに蜂蜜を入れてかき混ぜ、溶かしたチョコとバターと塩少々、バニラビーンズ少々混ぜる。

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2. よく混ざったら、卵も一緒に混ぜる。

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3. ココアパウダーをふるいにかけてヘラで混ぜて、少しずつ牛乳も入れる

4. 型にバターを塗って、ココアをまぶす(分量外)これで型が取り出しやすくなる。生地を型に流し込む。

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5.オーブン160度で45分焼く。少し冷やして食べましょう。

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