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服装が相手に伝えるメッセージ:NY流ビジネスの第一印象を制するイメージマネジメントvol.01:『FUMIKODA JOURNAL』寄稿

※本記事は『FUMIKODA JOURNAL』に掲載された日野江都子コラムからの転載です。

日本国外の方々とのビジネスを考える時、まず最初に頭に浮かべてしまいがちなのは「何語が話せるか?」という語学力について。しかし実は、アピアランス(外見)・プレゼンス(あり方・存在感)を非言語な世界共通言語として身につけることこそが、グローバルに活躍する方々には求められます。その最重要ポイントは、「Appropriateか否か」。例えば服装を選ぶ際にも「似合う」という自己中心軸ではなく、他者からの期待値をコントロールするための客観性と知性が求められます。基準となるのは、仕事の文脈に沿っているかどうか。それは社会における自分の立場や状況を理解し、任務を遂行する覚悟であり意思表示でもあります。

一般的に第一印象は6秒で刻まれると言われています。しかし、国際社会、それもビジネスの世界においては0.1秒。それは一目惚れをする時間とまさに同じであると私は提唱しています。数多の事柄や人と関わり、常に決断をし続けながらグローバルにキャリアを構築してきた立場のある人々は、瞬速で「アリかナシ」かを判断するのです。「こちら側の人間か、そうでないか」という言葉の方がわかりやすいでしょうか。それは「見た目」による判断です。

とある研究結果によると、人間は「目で見た情報」と「耳で聞いた情報」の二つがある場合、前者を信じる生き物とのこと。自分の目で確認したことを「事実」と認識するわけです。どれだけ言葉を尽くすよりも雄弁なのが「見た目」。それによって作られるのが第一印象。そう考えると、語学を堪能にする前に、見た目をご自分のビジネスの世界で通用する非言語として最適化させ磨き上げる方が、共通認識を一瞬で築くことで信頼感を高めることができ、「あなたと仕事をしたい」とオファーされる率が格段に高くなると言えるでしょう。

逆説的にいえば、見た目をAppropriateにすれば、自分の前に不要なハードルを作らないで済むようになる訳です。このハードルとは往々にしてその人の個人的感情や好みが大きく反映された外見(主に装い)によって作られます。状況を踏まえ、自らの立場と役割、そしてミッションを理解して行動できる人と、自分の感情が優先な人、どちらと仕事をしたいかといえば、当然前者でしょう。言語が共通でない場合は、なおさら大事な判断要素であり、価値観を共有する手段ともなるのです。

アピアランス・プレゼンスのブランディングとマネジメントが素晴らしい世界的な女性エグゼクティブの具体例として私がよく挙げる人物が次のお二人。

まずは、米IBMのCEOバージニア・ロメッティ氏。彼女はクラッシーでエレガントなダークカラーのスカート・スーツが多い人。世界的大企業、それもコンピューター業界という男性の多い企業だからこそ、周囲との共通意識・共通言語としてダークカラーで落ち着きのあるスタイル。かつ、女性CEOであることも表した上質な仕立てのスカート・スーツという選択をしています。

そして、米アップルの小売担当シニア・ヴァイス・プレジデントであるアンジェラ・アーレンツ氏。彼女の前職は世界的ファッションブランド「バーバリー」のCEOです。アップルという新しさとスタイリッシュさを大事にする企業のエグゼクティブとして、上質でトレンドもふまえたスーツ、それに合わせるジュエリー遣い、足元はブーツなど、クリエイティブで洗練された商品を生み出す企業イメージの表現として、ファッション性も惜しみなく全面に出しています。

このように、彼女たちは本来ご自身が持つルックスも違えば、業種も違います。しかし、自分の役職、場面、目的、対象者を踏まえ、そこで自身の率いる企業の文化やメッセージを体現する一番の広告塔として存在することも、エグゼクティブである自分の大事な役割のひとつとしている意識は同様です。だからこそ、現在の地位を築けたとも言えるでしょう。

私の知人である外資系大企業を渡り歩いた元エグゼクティブの女性は「服は衣装であり手段。その場と仕事の文脈で必要であれば、ピカチュウの着ぐるみだって着るのよ」とおっしゃいました。そう、すべては仕事の文脈なのです。

「見た目が国際社会での第一印象を左右する、そして大事なのはAppropriateである事」相手に0.1秒でそれを読み取ってもらえることが大事だとお分かりいただいたところで、是非ご自身に問いかけてみていただきたいことがあります。「今日、どうして私はこの装いをしているの?」と。選んだのは感情なのか目的重視なのか? なんとなくの思いつき、もしくは何も考えていなかったのか? まずはここがスタートです。グローバルに活躍する方々にこそ、Appropriateなアピアランス・プレゼンスが仕事のスキルとして求められ、それが世界共通言語となるのですから。

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