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別れの季節に読みたい1冊

 3月も早いもので、半ばに差し掛かりましたね。仕事の繁忙期が終わり、時間に少しゆとりができ、生活に彩りを添える余裕が出てきました。人生には、ゆとりと時間が生み出す『すき間』が必要ですね。

 さて、今日はそんな3月の別れの季節に読みたい1冊を紹介していきます。3月と言えども、朝晩は肌寒い日が多く暖かい日差しと心地の良い春風が私たちの心を潤してくれる日が、待ち遠しいですね。そんな1冊を提供できれば、幸いです。


『また次の春へ』 重松清さん

 東日本大震災をテーマとした短編集です。文庫になる前に1度、文庫になった時に再読している作品です。重松清さんといえば、『その日のまえに』や『流星ワゴン』なども有名ですね。

 ちなみにこの作品は、春になる前に読むからこそ、作品のもつ独特の切なさを感じることができると思います。読書メーターより私の感想を引用します。

 人は運命という言葉に時に苦しみ、時には助けられるのかもしれない。しかしそれは、その運命に直面した人にしかわからないものでもあると思う。この作品を読んで東日本大震災のことを思い返した。陸前高田市出身の知り合いは、震災でお姉さんを亡くしている。来るべき明日が来ないというのは、想像を越える悲しさと悔しさ、やるせなさの海に放られるようなものだろう。いやそれ以上なのかもしれない。その知り合いは、そんな言葉にできない悲しみの塊を抱えていたはずなのに、それを決して見せることはなかったことを、今でも私は思い出す。

『また次の春へ』|本のあらすじ・感想・レビュー - 読書メーター (bookmeter.com)

 悲しみの塊を抱えたまま、暖かい季節を迎えた時、あの彼はどんな思いで次の一歩を踏み出したのだろう。今年の3月11日は、どんな思いで迎えたのだろうか。そんなことがふと、私の頭をよぎりました。どうか幸せの種を自らの手で蒔いて、今年は、爛漫の桜の中でそっと、微笑んでいてほしいと願うばかりです。

 私たちもまた、次への一歩を踏み出す前に、新しい風を取り入れていくことが大切だと思います。踏み出す足を上げる前に、この1冊をおススメしたいです。

『夜と霧』ヴィクトール・フランクル

 名著ですね。ナチスの強制収容所での壮絶な実体験が書かれている作品です。ユダヤ人精神科医であるフランクルは、この作品を通して「生きる意味」を教えてくれました。初めて読んだのは、今から12年ほど前なのですが、今でも好きな本の1つです。自分として生き抜く、そして命を全うするために必要なことやその価値を語りかけてくれる1冊でもあります。
 そんなフランクルは、多くの名言を残しています。その中でも特に私の心を大きく揺さぶったのは

人間としての最後の自由だけは奪えない。

この一言です。生きていると、わたしたち人間は、ありとあらゆる環境や立場、そして自らが望んでいない出来事や物事の波に巻き込まれることがあるでしょう。しかし、その状況を自力で抜け出すのか、はたまた抜け出せなかったとしても、その場所にいる自分に価値を見い出すという「自由」は残り続けていくものだと思います。

 先日同僚にこんな相談を持ち掛けられました。
「自由ってどういうことだと思う。」

 私はすかさず「自由とは選択できることである。」と答えました。そしてその「選択」が、誰かにとっては、間違っていたとしても、もしくは他者から賛成を得られなかったとしても、その選択したという自分の自由意志は永遠に残るのだと信じています。
 そこに「自分」としての「価値」を見い出すことで、彼女の悩みも少しは軽くなるのではないかと私は思ったのです。

 彼女は私の「選択できること」という言葉の真意をどのように受け取ったのかは、また少しの時を経てからそっと、彼女の心を開いた時にわかるような気がします。

次の出会い(出合い)へ

 大学生の頃、仲の良い友達が言った一言を思い出します。

『春って嫌いなんだ・・・。悲しいよね。寂しいし。』

 ぼそっとつぶやいた彼女。疎遠になったとはいえ、今ごろまた寂しがっていないかと思うと、「大丈夫かな」と情が湧いてくるもんですね。

 特に、日本は四季がはっきりとした国だからこそ、彼女のような心情をもつ人も少なくないように思います。しかし、言葉を換えれば春があるからこそ、夏もあり秋もあり、冬もある。物悲しく寂しい時季(時期)があるからこそ、快活で朗らかに過ごすことができるひと時もあるのだと、言えるのではないでしょうか。

 四季ごとの、一瞬一瞬を読書を通して、深め広げることができたら人生はより彩りの強いものになると思うのです。
 最後まで読んでいただきありがとうございました。あなたの生活の補色となるお話となっていれば幸いです。


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