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物語

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よしみんの物語をまとめています。
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記事一覧

カラフル

カラフル

あ〜もう、うんざり。
こんな雨の日に外回りなんて最悪!
傘を差してはいたがこの雨でどうしても足元が濡れてしまった。
濡れた舗道を
慣れないヒールで滑らないように歩くのにもてこずっているのにストッキングが濡れてまとわりついて気持ちが悪い。

4月から入社してなんとか滑り込みで社会人になり2ヶ月がたった。
私は童顔なのでスーツ姿がまだ面接に向かう学生に見られているのではないだろうか…。
いや、その方が

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ランドリー 陽子編

ランドリー 陽子編

あら?み〜ちゃんがいないわ。
何処に行ったのかしら?
お店の扉が少し開いてるわ。
お店の方に行ってしまったのかしら。

「み〜ちゃん」「み〜ちゃん」
「み〜ちゃん、何処にいるの?」

私は扉を開けて店に出た。
あ〜お客様だわ。年は20代ぐらい
若いわね。ご夫婦かしら?
「お客様でしたか、いらっしゃいませ」

「あら、み〜ちゃんここに居たの?
この子はね。うちの店の看板猫なのよ。」
「そうなんですね

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ランドリー 雅史(まさし)編

ランドリー 雅史(まさし)編

「ニャ〜ん」と鳴き声がして白い動くものが俺たちを横ぎった。

猫?
白い毛と黒い毛と黄土色の毛が混じった猫だった。
「み〜ちゃん、そっちに行ったの?」
店内の奥戸から人の声がした。
「お客様でしたか、いらっしゃいませ」
白髪のおばあさんがにっこりした顔で俺達に言った。
「あら、み〜ちゃんここに居たの?
この子はね。うちの店の看板猫なのよ。」
「そうなんですね!み〜ちゃんか!
私も皆んなにみ〜ちゃん

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ランドリー 美来(みく)編

ランドリー 美来(みく)編

洗濯機が壊れた
それもなんの前触れもなく
困ったなぁ、どうしよう?
「ねぇ。洗濯機、壊れちゃったんだけど
修理、頼もうかな〜それとも新しいの買った方がいいかなぁ〜」
「とりあえず見てもらえば」
携帯電話ごしの雅史が言った。
「そうだよね〜買うよりも安く済むかもしれないし…」
「でもさ〜今、洗濯したいんだよね!
どうしよう〜!」
「だったらコインランドリー行けばいいじゃん。俺、けっこう使って時あった

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ポトフ

ポトフ

私は荒々しく玄関のドアを閉め、足早にキッチンに向い、冷蔵庫を開けて
そして飲みかけのミネラルウォーターを飲み干し、平静を保とうとした。

私はおもむろにまた冷蔵庫を開けしばらく冷蔵庫の前に立ちつくしていた。
冷蔵庫の開けっぱなしのお知らせ音が鳴り止まない。

そう、私の中でお知らせ音はとっくに鳴っていたのだ。
だが私は今まで気づかないふりをし続けていた。

冷蔵庫の冷たい冷気が私を正気に戻すのに今

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愛LOVEハンバーグ 

愛LOVEハンバーグ 

結婚してハンバーグを良く食べるようになった。
ハンバーグは嫌いではないが物凄く好きとゆうわけではない。

私の人生にハンバーグを食する機会が増えたのは私の夫がハンバーグ、大好き人間だったからである。

夫には私に話してくれたハンバーグ伝説があった。
若い頃、今も大好きな某チェーン店のハンバーグを週5日、続けて食べに通ったらしい。
頼むのは必ずデミグラスソースだ。
かなり、自慢気に武勇伝のごとく

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洗濯物と青い空

洗濯物と青い空

今日は携帯のアラームより早く起きた。
すっと目覚めた朝は私は機嫌がいつも良い。
カーテンから柔らかな光がこぼれている。私はカーテンを開けて、窓を開けた。

今日は天気が良くなりそうだなぁ。
休みの日に天気が良いってどうしてこんなにも自由を感じるんだろう。
外に出かけようかなぁ。家でゆっくり好きな事でもしようかなぁと考えるだけで心の奥が弾んでくるのだ。

隣のベッドの抜け殻を見て、もう起きていたのか

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雨の夜は

雨の夜は

夕方から降り出し始めた雨。
今日は天気予報を信じて傘を持って
出かけて良かった。
濡れた傘を開いては閉じて水滴を飛ばしてから傘を傘立てに入れた。

私は誰も居ない暗がりの部屋に進み
窓を開けてみた。
まだ、雨は止む気配はしない。 

一晩中、雨は降っているのだろうか。
しばらく、窓を開けて雨の音を私は感じていた。
雨音が体に心に響いてくる。

雨の夜はあの人の事をまた想い出してしまう。

雨の中、

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珈琲

珈琲


「ブラックで頼むよ」
調子の良い声で彼が言った。
私はインスタントコーヒー
の粉を自分が作るよりも
2倍ぐらい入れた。
お湯の量もいつもより
減らして。
私が飲んだら苦すぎてとても飲めないだろう、その濃い目のブラック珈琲を
彼は満足そうに
飲み干すのだ。

彼の人生はブラック珈琲のように苦かった。
むしろ、そんな人生を好むような所がある。

2人で生活をともにする事は
苦い珈琲にミルクを入れ、ま

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