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ぐん税ニュースレター -お客様訪問- バックナンバー 2017年10月号

お客様との対談 ~高崎トーヨー住器株式会社様~

この記事は2017年10月に発行されたニュースレターvol.4から「お客様訪問」の記事を再編集したものです。最新情報ではなく、掲載当時の内容に基づいておりますので予めご承知おきください。

5SとISOを通じた人づくり。
会社の基本は方針決定と社員にあり。

小林浩一:先日はぐんま税理士法人ゴルフコンペにご参加いただきありがとうございました。
富沢 勇会長:いろいろな業種の方と知り合えて貴重な一日になりました。同じ経営者として悩みや共通の話題も多いから話が弾むんですよね。
小林:経営は答えが一つではないので、経営者の色が大きく出ます。そこに面白さを感じられる方も多いようです。
ここまで会社を大きくするうえで、富沢会長が大切にしてきたことはありますか。
富沢会長:まずは人づくりですね。日常的な朝礼や伝言一つをとっても学びは多い。家庭の中で親が子供にしつけをしたり、ルールを教えるように、各部署のリーダーが「5S」(5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字をとったもの)や品質について教えます。会社としてISO9001にも力を入れているので、規定や手順に則って仕事ができ、同時に品質も保てます。たとえば、使ったものをもとに戻す、といった簡単な習慣の積み重ねが人をつくり、会社の生産性を上げ、お客様に感謝され、信頼を得たり次の仕事につながるんです。自分を改めることができるようになると、何かあっても他人のせいにすることもないのでお客様にもご納得いただける行動がおのずと取れるようになる。お客様に「ありがとう」と言われることが増えて、別の仕事を紹介してもらえたり、仕事の幅が広がってくると仕事が楽しくなる。そういった先輩の背中を後輩社員は見てるんですよね。
うちは国や県から仕事をいただくにあたって資格が大きなポイントになります。一級建築士を取るためには、大学の専門課程を出ていると時間を短縮できますが、みんながみんなその勉強をしてきたわけではありません。資格を取りたい人は、日曜日など業務時間外に専門学校に通うんです。もちろん、会社が受講費用は負担しますが、自分の時間を使って取得した人が今までにも2名います。資格を取れば、技術手当も給与に加算されますが、そういった積極的な社員の姿勢を大変評価しています。
小林:人材の育成が、会社の成長を支えているということですね。その前提として、会社としての方針決めや展開が秘訣でしょうか。
富沢会長:商売において即効で簡単に儲かるなんていうものはないに等しいと考えています。しかも、新しいことを始めようとすると必ず反対する人が出てきます。時間をかけなきゃダメなんです。だから、常に先を見て計画し、行動しています。避けて通れないものは早めにします。月次決算一つにしても、翌月5日で月次の数字を出す。どうせいつかやらなくちゃいけないんだから。
たとえば、ISOは早い時期に認証取得しました。弊社みたいなところでなんでそんなに早くISOを取ったんだって聞かれるけど、最初にやることに意味があるんですよ。そして、継続することで社会的な評価につながります。更新審査に多少のコストや労力もかかりますが、それが社内統制やマネジメントの再構築になるんです。

先手必勝!すべては計画的に。
30代の息子へ世代交代したのも戦略です。

小林:世代交代が早かったのも関係がありますか。ご子息の哲夫さんは30代前半で社長に就任されましたよね。一般的に同族会社の事業承継では40代位で社長になるケースが多いように思いますが。
富沢会長:業種によって異なるとは思いますが、「社長」としての役割を果たせるようになるには15年くらいはかかります。そのため、それまで私がフォローできる期間を設けるつもりで早めに交代しました。息子には「売上が今の半分になっても、そこから息子のチカラで立ち上がれればいい」と言っています。むしろ立ち上げられないようであれば、それまでなんです。親がやってきたことをそのまま順調に継続することなんてできるわけない。実力が違うんだから。むしろ、一度、売上高が半分になってどん底の時期を経験してそこから、今の売上高まで自分の力で持ってくるような経験をして初めてこの会社の社長相当の実力だと言うべきなんです。
小林:実力がつくまで15年かけて育成しようということなんですね。職業柄、いろいろな会社を見ていますが、最近は、親がやってきたことを順調に伸ばしていけばいいとか、親がつくった借金を子供に返してもらおうなんて、簡単に考えている社長も中にはいます。社長が退職金を取りたいために会社で借金して、息子に継がせるなんて話も耳にしますが、どう思いますか?
富沢会長:退職金がほしいなら経営者として役員報酬をとって、それまでに自分の財産として積み立てておくべきです。事業承継の時に、無理して退職金を支払えば自己資本が少なくなって、より経営が難しくなる。そんな会社は長続きするわけないし、息子が苦労するだけ。
建設業界は景気の変動が大きく、いまは建築ブームだからいいけれど、それまでは長い間建設不況が続いたり、このあと東京オリンピックの後だって不況になるのは目に見えている。そうすると内部留保がないとどうしようもない。
これまで頑張ってきて、いまは運転資金のために借金はしなくても済むようになっているのも、まさかのために備えるため。建設業界は儲かるときにはうんと儲かるから、そうすると給与をいっぱい払ったり、投資をしたりしてみんな使っちゃう人が多い。弊社では一部を内部留保として貯めてきたから、これが体力になる。
小林:でも、中小企業を見ていると子孫に美田を残すなって思っているんじゃないかと思うような事業承継が多いですよ。不思議に成功企業ほど、後継者のことを考えて退職金は控えめで、内部留保をたくさん残して事業承継をしている。例えば、純資産が5000万円程度の会社で3000 万円も退職金を取ったら、純資産が半分になっちゃって、それで会社を継げって言われても後継者がかわいそうです。

富沢 勇会長

成績や業績の「見える化」を自ら実現。
社員が安心して働ける環境をつくることが経営者の仕事。

小林:ご子息を専務として15 年経験を積ませるという選択肢はなかったのですか。
富沢会長:ありませんね。うちは現場も、営業も、事務もそれぞれにリーダーがいて、任せられる組織になっています。社長は全体の流れをつかめていれば問題ないんですよ。
例えば、この資料を見てください。営業マン各人の成績を数値化して評価しています。
小林:「見える化」ですね。この評価システムはどうやって作ったので
すか。
富沢会長:自分で作り上げました。長年、現場に立ってきたので何が大切で、どこを改善すべきかはわかります。それを点数にしてウエイトをつけて評価しています。ただ数値化できるものだけでは70%ぐらいのもの。残りの30%は数値化できない。
こちらの資料を見てください。これは財務格付表です。流動固定比率や借入比率などの数値を点数化したもので、うちの総合点数は88 点。総合点を上げるように、それぞれの評価項目の点数を上げるためにはどうしたらいいかを考えて努力をしています。
小林:弊社も財務格付け表を決算ごとに計算して、関与先に決算説明の時などにお渡しするのですが、各項目の点数を上げようと努力される経営者はあまりいませんね。
富沢会長:今は、経理もこういう財務格付け表もコンピュータが作成してくれるから、数字を作る、資料を提供するだけが会計事務所の仕事じゃないはずです。数字は見ればわかるので、我々経営者は数字を言葉で説明してくれる人が欲しいんです。
小林:我々の努力不足で、お恥ずかしい限りです。早速、数字を言葉に変えて、お客様に提供するようにしていきたいと思います。
富沢会長:会社の信用力、財務力というのは重要です。大工さんや建設会社は施主から着手金、中間金、最終金と3 回に渡って入金があるんだけれど、弊社の場合は製品が建築の完成直前に納品されるので、建設会社に最終金が入ってからにならないと弊社が回収ができない。それまで、仕入メーカーには立替をしなくてはならないので、資金力が必要です。そのためには過去の利益をためておく必要があるんです。
また、人材についても先ほど言いましたが、一人前になるまでに何年もかかります。それまで人材に投資しつづけないといけない。そのためには強固な財務基盤がないと続きません。会社が赤字になっても、ある程度の給与を支払い続けることができるようにして、社員が安心して働ける環境をつくることが経営者の仕事だと思っています。
小林:人が採用できないとか、人手不足という話をよく聞きますが、御社はどうでしょうか。
富沢会長:福島の原発事故のときに就職難ということでハローワークから電話があって、新卒を採用することにしました。それまでは中途採用が多かったのですが、それをきっかけに新卒をとると翌年も新卒の紹介があり、毎年2-3 人ずつ採用しました。ここ数年は新卒採用が難しくなって、採用ができていませんが、この時に採用した社員が成長してきています。
小林:当時は民主党政権で求人倍率が最低でしたからね。どこも採用を絞っていた時に、積極的に採用し、人材に投資をしていたということになりますね。これも財務体質が良くないとできませんね。そういうところが高崎トーヨー住器さんの強みなんですね。一言でいうと、長期的に計画して、先回りして、実行する。
本日は貴重なお話、ありがとうございました。

富沢 勇会長(左)と小林浩一

高崎トーヨー住器株式会社
本社住所:群馬県高崎市浜川町1988‐3
業種:建築材料卸売業/アルミサッシの販売
設立:昭和48 年11 月/45 期
売上高:23 億円(平成29 年3 月期)
従業員:44 名
会長である富沢勇氏が脱サラし、個人事業を経て設立。現在は2代目の哲夫社長を中心として関東近県の量販店や公共事業、一般住宅等の主にガラス工事並びに建具工事の設計、請負および施工を手掛ける。LIXIL FC として全国でも有数の売上規模を誇る。平成28 年には前橋営業所を開設。

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