見出し画像

黒豆にこだわって味噌仕込み

〇黒豆味噌仕込みワークショップを開催しました。

先日、今期最後の味噌仕込みワークショップを開催しました。
開催日がとても暖かな日だったので、皆さん汗をかきながら黒豆を潰していました。
潰すのは大変ですが、潰し方にはコツがあります。
手の平で擂るように潰すと楽に潰せます。
コツを掴まれた参加者の方は、パン生地を捏ねる感覚で楽しいとおっしゃっていました。
味噌仕込みの後は、自家製黒豆味噌や西京味噌を使った味噌調味料でお料理を作りランチ会。
盛り沢山の内容で、楽しくてあっというまの2時間半でした。
その内容はInatagramのhaccobo_kojiにも載せてありますので、
ご興味あればそちらものぞいてみてください。

一汁三菜の発酵ランチ



以前は黄大豆を使った味噌仕込みを行っていましたが、
最近は使う黒豆の品種にもこだわって黒豆味噌仕込みをご紹介しています。
なぜなら、美味しくてコクがある味噌に仕上がるから。
そして、黒豆は黄大豆には無い機能性成分を含んでいるから。

〇黒豆味噌っておいしい!

黒豆味噌を始めて知ったのは、以前信州に旅行した際に立ち寄った道の駅。
黒いけれども味噌の熟成した色とも違う、黒褐色の味噌に目が留まり手に取ったのが出会いでした。
丁度その味噌蔵で働く方が販売されていたので色々とお話を伺うと、色は濃くても渋みは無く、旨味とコクがあるとのこと。
購入し帰宅後さっそく開封。
黒褐色の味噌の多くは長期熟成の物が多いため、
熟成過程で産生される酸の影響を受け、やや酸味臭を感じることもあるのですが、黒豆味噌はむしろ甘い香り。
そして、販売されていた方の言う通り深いコクがあって甘い。
湯に溶かして飲んでみると出汁を使ったような旨味があります。
「黒豆味噌っておいしい!」

日本食品保蔵科学誌に記載されている技術報告に、黄大豆と黒豆を使った味噌を6か月間熟成させて行われた比較試験があります。
そこには、黒豆味噌の方がタンパク質分解成分である遊離アミノ酸とペプチドの量が多く、特に旨味成分のグルタミン酸とアスパラギン酸の量が多かったと記されています。
やはりおいしい理由がありました。

〇それなら黒豆は黄大豆よりたんぱく質が多いのか?

お正月のお節料理の代表格の黒豆ですが、そもそも黒豆って何?
食用として日本に流通している主なマメ科は
・ササゲ属
・インゲンマメ属
・ソラマメ属
・エンドウ属
・ヒヨコマメ属
・ヒラマメ族
・ダイズ属
・ラッカセイ属
に分類され、黒豆はダイズ属に属しています。
この属は更に種に分類されていて、ダイズ属にはダイズ種があり、
黄、青、黒、赤、茶、白など色々な色の大豆が属しています。

せいぶ農産 大豆の種類と用途から


豆腐などの原料となるのは黄大豆、うぐいす餅にまぶしてある緑色のきな粉の原料となるのは青大豆、そしておせち料理の黒豆煮の材料となるのが黒色の黒大豆、いわゆる黒豆です。
黒大豆は日本食品標準成分表(八訂)での五大栄養素を見る限り、
一般的な味噌の原料となる大豆(黄大豆)と大きな差はありません。
黄大豆は「畑の肉」と言われ、乾燥品では33~34%ものたんぱく質を含んでいて、イソフラボンやイノシトールなどの機能性成分も含まれています。
黒大豆にも、この黄大豆と同様の成分が含まれています。
 
〇大豆と野菜や果物などの色素成分両方の健康効果が期待できる。
黒大豆と黄大豆との大きな違いは色。
ブルーベリーやブドウの色素でもある「アントシアニン」の名称は良く知られていますが、実は、黒大豆の種皮にはこのアントシアニン系の色素が含まれています。
この色素は、野菜や果物において広く存在する色素で、
植物が紫外線などの有害な光から自身を守るために蓄える、抗酸化作用を持つポリフェノールの一種です。
黒大豆には、このアントシアニン系色素の中でも、特に抗酸化力が高いと言われる「シアニジン-3-グルコシド」が多く含まれていているそうです。

約2000年前の中国最古の薬物書「神農本草経」に、黒豆は黒豆衣(こくずい)と呼ばれる生薬として紹介されていました。
日本の薬学に多大な影響を与えた「本草綱目」にも、黒豆の薬学的効能が記されていました。
このように、昔から健康に役立つ生薬として黒豆は扱われてきましたが、近年の研究でも抗老化作用、血流改善作用、視覚改善作用、メタボリックシンドローム改善作用についての報告がされています。

〇黒豆味噌のおいしさはどこから?
発酵学の第一人者である小泉武夫先生によると、このアントシアニン系色素が黒豆味噌の濃厚な旨味と熟成に関与しているそうです。
色素がおいしさにも関わっているとは驚きです。
ちょっとお高い黒大豆ですが、おいしい黒豆味噌から機能性成分を摂取できるなら、こんな良い事はないですね。

参考資料
・谷口(山田)亜樹子・風見真千子・野口治子:黒大豆味噌の試醸および機能性 日本食品保蔵学会誌 VOL.45 NO.3 pp.135-140(2019)
・沖智之・古川(佐藤)麻紀・山下南穂・白土英樹・後藤一寿・奥野成倫・須田郁夫:国産黒大豆中の総アントシアニンと 総プロアントシアニジンの定量
Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol.60 No.10 pp.595∼600(2013)
・食品分析開発センターSunatec 「植物色素アントシアニンのサイエンス—化学、機能と活用」http://www.mac.or.jp/mail/151001/01.shtml
・せいぶ農産https://www.seibu-kaihatsu.com/
・八訂日本食品標準成分表
・公益財団法人 日本豆類協会https://www.mame.or.jp/syurui/bunrui.html
・丸ごと小泉武夫食マガジン https://koizumipress.com/archives/16227



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?