見出し画像

1度死んだ私

私は1度死んだ。
正確には死にかけた、だが。
2012年5月末、私は団地の5階から飛び降りた。
飛び降りる直前から病院に運ばれてからの2日間の記憶は全くない。
人間の脳は上手く出来ているようで、記憶から抹消したい部分は綺麗に消えてしまうみたいだ。
それほど恐ろしく痛い体験だったんだろう。まるで他人事のようだ。
しかし落ちてから救急車に乗ってからも、私は終始意識があったらしい。
「どうやって落ちたの?ねぇ、どうやって落ちたの?」
とはっきりとした口調で聞き続けていたらしい。全く覚えていない。
人って恐ろしい。
それから私の記憶がはっきりしたのは、入院して2日目。
1日目に兄夫婦が来てくれたらしいが覚えていない。そして翌日来てくれた時の記憶はうっすら覚えている。
大量の痛み止め(恐らくモルヒネ)で意識は朦朧としていた。

後に聞いたが骨盤内出血が酷く、運ばれるのが数分遅ければ出血多量で死んでいたのだそう。
血圧が上で40を切っていたとのこと。
緊急手術により輸血を受け一命を取り留めた。

骨折箇所は両足踵粉砕、骨盤一部粉砕、背骨圧迫、右手首とかなりの数に及び、私が動かせるのは首と左手のみになった。
両足はボールのように腫れていたのだそう。だって踵が粉々に砕けてもう原型をとどめていなかったから。
背骨の圧迫骨折は神経を傷付けているかどうかギリギリの箇所だった。レントゲンでは分からない微妙なライン。つまり後になってみないと分からないってこと。

そこから私は何も考える暇もないまま寝たきり状態で治療とリハビリの毎日を送ることになる。

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?