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大正 近代文学 名著復刻版

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1912〜1926(大正元年〜大正15年)
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記事一覧

雪明りの路

伊藤整 21歳。詩人からのスタート。のちに小説家、文芸評論家。 小樽高商の先輩に小林多喜二。 箱もカバーもない素朴な詩集。自費出版。 北国の厳しい風土や日常生活を描いている抒情詩。 小冊子のような本ですが、116編もの詩が掲載されています。 あ、なんかわかるような気がする。私自身、公園を散歩しているときにこういう瞬間ってたまにあるので・・。特に雨上がり。緑の匂いがたちこめるとなぜか昔のことを思い出す。しかも良いことばかり☺︎ 緑の効果って本当にあると思う。 著者 伊藤整

死刑宣告

萩原恭次郎 26歳。詩人。 同郷の先輩詩人に萩原朔太郎(名前が似ていますね)。 社会への怒り、叫びのような詩集になっています。 創刊誌「赤と黒」の表紙には「詩とは爆弾である!」と衝撃的な言葉。 これまでの近代詩とは全く違うスタイル。 装丁は岡田龍夫、挿絵は村山知義など。 恭次郎の絶望と叫びの詩集。 ・・・ 表紙はドイツのバウハウスっぽい特徴。色(黄、赤、青)、デザインは直線的で幾何学的。これまでの文芸の表紙とは違うイメージです ☄︎☄︎☄︎ ・・・ 病のため39

注文の多い料理店

宮沢賢治 28歳。詩人、童話作家、教師、宗教家ほか農林学校で「農芸化学」を学ぶ。 自費出版、装丁と挿絵は図画教師、菊池武雄(賢治と同じ岩手出身) ダークネイビーとゴールド文字の組み合わせ。高級感漂うステキな本☺︎ イーハトヴ(イーハトーブ)とは賢治の造語で*理想郷* 語源は親しんでいたエスペラント語の影響とも・・ 「その土地の自然と食を愛する気持ち」がひしひしと伝わってくる序文。 著作者 宮澤賢治 発行所 杜陵出版部 農村向上運動での過労で病に倒れ、38歳でこの世

同志の人々

山本有三 37歳。劇作家、小説家。 「同志の人々」戯曲集、真実を追求する内容。  電車で隣の人に押されて木村屋のパンが少しつぶれた・・ バターが値上げした・・など主婦と女中の会話。 中間層が増え、女中が少なくなっていた時代のとある家庭の波乱話。当時の生活の様子が垣間見えます。 著作者 山本有三 発行所 新潮社 ・・・ 小学生の頃に「路傍の石」を読んであれから**年がたちました。「路傍の石」の吾一同様、山本有三自身も奉公していた時期があったようです。ただ途中で逃げ出し

青猫

萩原朔太郎 37歳。 可愛らしい詩集「ソライロノハナ」。 時が過ぎ、10年後に「青猫」が出版されました。 前回の素朴でほのぼのとした詩集とは違い、今回はしっかり製本されしかも上部はアンカットになってます。 ところでアンカット本ってやはり中身が気になるんですよね☺︎ あと、目次を見てみたら興味深いタイトルが並んでいて・・んー、なにやら独特な朔太郎の不思議ワールドが広がっているような気がするー。 著作者 萩原朔太郎 発行所 新潮社出版 ◎猫たちの表情がちょっとこわい

水虎晩帰之図

芥川龍之介 30歳。自筆紙本。 久米正雄との合作(馬の尾にぶらさがる河童)。 大正9年くらいから河童の絵に夢中になっていた芥川。 ◎左側:芥川龍之介作。 「水虎晩帰之図」「我鬼画」 ・身体の線が細い河童(芥川自身?)が後ろを振り向きこちらをじっと凝視している ◎右側:久米正雄作。 「提燈のような鬼灯岸に生へ」 「三汀」とは久米の俳名 ・馬の尾に必死にしがみついている河童の姿 ・・・ この絵を描いた5年後の1927年(昭和2)に小説「河童」を発表。当時の社会を批判した

殉情詩集

佐藤春夫 29歳。詩人、作家。 67ページのコンパクトなサイズの詩集です。 ◎本の装丁=作家の愛着とこだわり◎ 表紙の図柄は春夫お気に入りの「英国ネクタイ」の模写。 あと、この本のように表紙全体が小紋柄だと汚れや経年変化が目立ちにくいですね。反対に無地だとそういったものが目立ちやすい。その点、この本は長期保管を考慮して装丁されているのかな?と感じました。 ・・・ 著作者 佐藤春夫 発行所 新潮社 価 格 90銭 ◎佐藤春夫の裏話も・・

赤い蠟燭と人魚

小川未明 39歳。 童話作家、ネオ・ロマンティシズム(新ロマン主義)。 故郷、上越地方の人魚伝説の影響を受けているといわれている短編。 未明らしい北国の幻想的なストーリー。 想像力豊かになりそうなとても素敵な本。 これが101年前に出版されたなんて信じられません…. 本体はピンクとゴールド、カバーは赤、白、紺、黒。 本の上部には天金加工で高級な仕上げになっています。 口絵、挿絵はロシアのビリビンによる怪奇画。(カバーのみ作者不明) ・・・ ・・・ 著 者 小川

友情

武者小路実篤 35歳。恋と友情の物語。 「自分は失恋の名人だったから、その方の気持ちがわかる」と実篤。 恋することで魂を向上させ、勇気を持って正しく生きていく・・そんな主人公の姿を描いている。 黒の布張り、白とオレンジ。表紙いっぱいに描かれたいきいきとしたデザイン。 表紙、扉、見返し 岸田劉生 洋画家  *麗子像(代表作) ・・・ 著作者 武者小路実篤 発行所 以文社 ・・・ 失敗して落ち込んだとき、元気になりたいときに読むと前向きになれそう🌷 *失敗は成功

性に目覚める頃

室生犀星 31歳。 幼少〜青年期の自伝的な短編小説。 青といえば・・*青春*  ・・・ ◎大正モダンのおしゃれなフォント ヨーロッパから始まった、曲線が特徴のアールヌーボー(Art nouveau 新芸術)の影響もありそうですね あと、なんとなく江戸川乱歩が浮かんだり・・🥀 ◎モダンガールにちょっとあこがれる 著作者 室生犀星 発行所 新潮社 *「中央公論」に発表し、のちに新潮文庫にて出版 ◎室生犀星記念館 故郷、金沢に記念館があります。企画展や講座などもしてい

傀儡師

芥川龍之介 25〜27歳にかけての作品。全11の短編集。 この頃の芥川は海軍学校の嘱託教官、結婚、人気作家の第一人者として活躍🏃 著作者 芥川龍之介 発行所 新潮社 ・・・ ◎「芥川龍之介記念館」開館予定!(2023年3月末までに)もうすぐですね😀 ◎田端文士村記念館 「芥川龍之介生誕130年記念展」(2022年5月21〜9月19日) *他にも多くの作家や芸術家が紹介されています。

たけくらべ(真筆版)

樋口一葉 短編小説家。五千円札の表面。 結核により24歳で亡くなる。 「たけくらべ」を書いたのは1895年、23歳のとき。 吉原に住む14歳の少女と僧侶の息子との恋&地域のストーリー。 樋口一葉がこの世を去って22年後にこの本は出版されました。自筆の原稿と当時の文豪たちによる思い出集になっています。 さわやかな色、パステルブルーとミントグリーン🌱 ・・・ 口絵:鏑木清方 画家、浮世絵師。 ・・・ ・・・ ・・・ 編集 樋口邦子 発行所 博文館 ・・・ ◎

生れ出る悩み

有島武郎 40歳。 こちらをじっと見ている「ミミズク」 *どんな建物にある窓なのか・・? ・・・ ソフトカバー。全体的に質素な本ですが、ページの上部すべてがアンカットになっています。 ◎同じ白樺派、志賀直哉の「大津順吉」も似たような装丁です。 ・・・ 本の最初にホイットマンの詩「The Torch」をあげています。↓ 洗礼、キリスト教、西洋の教育や文学の影響を強く受けていた有島武郎。 最後は婦人公論の記者だった人妻と心中、45歳の生涯を閉じます。 著作者 有島

異端者の悲み

谷崎潤一郎 31歳。 最初にこの本を見て思わず・・おぉ、かっこいい! 箱の表側はブラック。 本体は輝くシルバー。 箱の裏側はグレー。(オールブラックだとちょっとキツイ) 本体のほうは表と同じ、きらきらシルバー。 グレーとシルバーの組み合わせがとても美しい。 本の上部は天金加工。 天金加工の特徴は、紙の劣化防止、埃よけ、高級感。 当小説が中央公論に掲載されたのは母の死後四十九日目となる。 ・・・ 「異端者の悲み」主人公、章三郎とは谷崎自身のこと。 「この本は告白