弥太郎、なかなか旅立たない
三月十九日 日記は「この日長崎を発つはずだったのだが」と言い訳のような書き出しで始まります。妓楼への支払いが多すぎ、帰郷の費用に差し障りが出そうで思案していると、上司の下許武兵衛から「今日はどうするの?」と声がかかります。早朝から茶屋阿山楼へと誘われ、「心に適わなかったけれど」出かけました。
少し酒に酔ったところで、浪花楼と花月楼への支払いが滞っていることを下許君え相談いたしたところ、下許君は早速承知いたし御引受け下さったので大いに安心いたし、万一家山(故郷)より金子入りの