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自己紹介④(母の経験から小児漢方外来を立ち上げる)




専門医を取得し、妊娠を考える


小児科専門医取得後より
天疱瘡になった時から考えていた妊娠について本格的に考え始めました。

「お母さんになりたい」
そう願う気持ちがはっきりとありました。
ここから病気と妊娠について考える時間が始まります。

母になりたい

天疱瘡を患った時からの夢だった「お母さんになること」
キャリアを優先してきましたが、年齢も30歳を超えていました。
もちろん、産める時間も限りがあります。

自己免疫疾患は、妊娠出産による再発リスクはゼロではありません。
ハードな仕事を続けると症状が再燃し、ステロイドの内服量を増やす→落ち着いたら減らすことを繰り返していました。
一旦、仕事を減らし赤ちゃんに会うために体を整えようと決めます。

ありがたく上司の理解を得て、非常勤勤務となって、働き方を変えました。
正直、疲れすぎていて妊娠できる状態ではなかったと思います。
鍼灸や漢方薬もしっかりと使いながら、妊娠できる力をつけることが必要でした。

子どもは授かりものというけれど、神様からの預かりものだと感じています。欲しい欲しいと願う私の元には、なかなか授からず。
努力したら報われる世界から、努力してもどうにもならないことがあるような気持ちにすらなりました。

「2人での生活」を考えた矢先、妊娠がわかりました。

母になる

ありがたく、妊娠経過を無事に過ごし、34歳で出産しました。
しかし、育児は想像上に大変でした。
あれほど会いたかった我が子なのに、とにかく必死な毎日。

可愛いのだけど、湧き上がるような気持ちがなく
お世話することで精一杯。
次第に余裕がなくなり、1人の時間が欲しいと思うことも。

子育てをしていても、仕事に復帰すること、今後の漢方専門医・アレルギー専門医の取得への道をどうするかを考え、目の前の我が子との時間を存分に味わえないことがありました。

目の前に我が子がいるのに、心が落ち着いていない。
直感的に「何かが違う」「これではいけない」と思い、
子育て本を100冊以上読んで、正解を探したけれど、
我が子と自分が作る唯一無二の正解はどこにも書いていない。

表面的な問題を解決しても、
本当に心が通い合う親子になれているのか自信がありませんでした。

心が通い合う家族を諦めたくない

小児科医ではなく、1人の母として、
どうしたら心が通い合う親子になれるのかと向き合い続けます。

とにかく必死に、エリクソン、マズロー、ジョン・ボウルビィなど、
沢山の書籍を読みました。そして「愛着」というキーワードに辿り着きます。

「愛着」とは

「愛着(アタッチメント)理論」とは、イギリス出身の精神科医であるジョン・ボウルビィ(1907〜1990)が提唱した考えです。愛着(アタッチメント)とは、子どもが特定の他者に対して持つ情緒的な結びつきです。

ボウルビィは1950年代、第二次世界大戦のイタリアの孤児院で、戦災孤児の発達や死亡率が問題になったときに原因の調査に関わりました。彼は、「施設での子どもの死亡率は院内の感染症だけが要因ではない」という考えのもと調査を進め、その後、世話をする人がどれだけ子どもと接触したかがその子の死亡率や発達度合いに関係していることを証明しました。
これらの研究をもとに、0歳から2歳までの間に、母親を中心とした養育者との間に形成される信頼関係が、子どもの発達において非常に大切なことがわかりました。(ここでは愛着形成を築く人を母親として説明しますが、肉親でなくても良いと言われています。)
 
愛着形成には4つの段階があります。
1      愛着形成の準備段階(0〜3ヶ月)
2      愛着形成の段階(3ヶ月〜6ヶ月)
3      他者を識別する愛着形成の段階(6ヶ月〜2歳)
4      養育者に確固たる安心を持ち、心の拠り所とする段階(3歳頃から)

「子どもが外に出ていくために、心の安全基地が必要」
愛着が形成されると、心の中に母親という存在が内在化します。いつも心の中に安心感がある状態になり、子どもたちは外に出かけたり、挑戦することができるようになります。また、他人との関係性を育むことが上手になる一方、1人でいることにも不安感がなくなります。

完璧な母親にはなれない


でも、子育てをしていると完璧な母親になることって本当に難しい。
そもそも、受容や支持するだけでは子育てができない場面もあります。

外来でも
「子どものことは大好きだけど、子育てが辛い」
「働きながら、子育てをしていると心身ともにクタクタだ」
「イライラしたくないのに怒ってしまう」と多くの相談を受けます。

育児書を読んでも、心の不安が改善されず、子育てに悩む母親はとても多いことを知りました。そして「良い母親」にならなければという思いで自分自身を苦しめている母親が多いことも痛感します。

母親にこそ安全基地が必要


親子の診察を経て、子どもの安全基地を作ることはもちろんですが、母自身の安全基地を作ることも大切であることを感じました。

母親が飾らず、偽らず、等身大の自分で子育ての悩みを相談できる場所。
安心し、また子育てに向かって行ける場所。

「お母さんと子どもたちの安全基地を作りたい」
難病患者としての経験・医師として命があることがいかに大切かを知った経験・そして母としての経験から、2021年春 小児漢方外来を立ち上げます。


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