トマトクミンそうめん

スパイスの意外な使いみち トマトクミンそうめん

料理雑誌みたいなタイトルをつけてしまった。

そうめんは日本の麺文化史上では最も古い麺のジャンルだと言われている。その後にほうとうやおっきりこみ、冷や麦、うどん、そばなんてのが続くわけですね(「増補版 日本めん食文化の一三〇〇年」奥村彪生 農山漁村文化協会)。

つまり日本の夏はそうめんの夏、とも言えなくもない。人々は1300年ぐらい夏が来るごとにそうめんと向き合ってきたわけである。

そして今日もここでひとりの中年が汗を拭きふき向き合っている。

まだ8月に入ったばかりだが、お盆を過ぎるとテレビや雑誌や料理サイトなんかで「そうめん活用レシピ」みたいなのが盛んに取り上げられるのが毎年の恒例で、その際もはや定番と化して新鮮味がないレベルまで浸透したのが「トマトそうめん」だろう。トマトの旨味成分や程よい酸味はカツオと昆布ベースのそうめんつゆにとても相性がいいという科学的な主張もある。

で、ですよ。そのトマトそうめんにももはや飽きた、という方にオススメしたいのが今回のレシピ「トマトクミンそうめん」である。材料は以下のとおり(一人分)。

・そうめん・・・1〜2把 
・トマト(完熟)・・・半分〜1個 
・青じそ(大葉)・・・1〜2枚(好きなだけ) 
・めんつゆ(濃縮4倍とかのやつを希釈せずに使用)・・・適量、たぶん大さじ3〜5 
・クミンシード(パウダーじゃなくてシードがオススメ)・・・ひとつまみ 
・オリーブオイル・・・適宜(お好みで)

トマトは1〜1.5cm大のさいの目切り、あるいはスイカみたいにくし切りをさらに縦に切り、そうめんがからみやすい大きさに。青じそを刻んでトマトと合わせ、小ぶりのお鉢やボウルに入れる。めんつゆをひたひたにかけて冷蔵庫に10分以上放置。置いておくことで味がなじみます。1時間とか一晩とか漬け込むとまた味わい深くなります。10分程度だとトマトのフレッシュ感が残ります。

そうめんをさっと茹で、ジャバジャバ洗い、水気をシャキッと切って皿に盛る。

そうめんに上記のトマトをぶっかけ、クミンをひとつまみふりかければ出来上がり。お好みでオリーブオイルをひと回しかけてもOK。

ここで言いたいのは、「絶対クミンシードをかけてくださあ〜い!」ということ。この一言につきる。それほどまでにクミンシードは必要不可欠。これをかけることによって、いつものそうめんにどこか異国情緒が漂い、シルクロードの楼閣が蜃気楼のように見えてくる。上品な香味が食欲をそそり、あっという間に平らげてしまうだろう。言い尽くされた表現だがまさに「食欲の落ちるこれからの季節にぴったり!」。

香りをもっと立てたい場合はクミンシードをフライパンで空炒りしたり、すり鉢で摺るという小技を効かせてもいいかも。

オリーブオイルは味変ぐらいに考えてもいいかもしれません。なんかクミンシードとオリーブオイルを両方ともいくと、場合によっては無国籍になり過ぎてウッ、てなるかも。

このクミンシードって、存在感パないわりに癖やイヤミが少なく、トマトそうめん以外にもフツーに塩コショウで焼いた豚や鶏にふりかけるだけでも一気にエスニックな風味に舵を切れるので、すごく重宝。塩鯖焼いたあとなんかにふりかけてもおいしいだろうね。やったことないけど。

もしあなたがこれから豊かなスパイス料理生活を歩みたい、でもスパイスっていろいろありすぎてどれから揃えたらいいかわかんないわ、という岐路に今立っているのであれば、迷わず「まずクミンシードを買いなさい」と進言したいぐらい、活用範囲の広い立役者だと思う(余談だが、クミンの次はコリアンダー、ターメリック、フェンネル、シナモン、マスタードシードあたりを揃えると、市販ルウなしでキーマカレーぐらい簡単にキメれるようになります)。

ところでそうめんの1把って、少なすぎないですか? 絶対2〜3把食べちゃうけどなあ。

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