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京都のサーキットフェス「いつまでも世界は…第八回」に寄せて

嫌なことはいっぱいある。
だけど、あの日は心が満ちて楽しかったなあって思う。

そこに溺れるのはいけないことか。僕はそうやって生きていけばいいと思った。


京都、シックスブリッツ主催のサーキットフェス「いつまでも世界は…第八回」。僕は自分の出番の前後以外は、ぐちゃぐちゃに印の書き込まれた紙のタイムテーブルを友人に笑われるほど歩き廻っていた。僕は京都のライブハウスをほとんど知らなかったし、聞いたことはあるけど観たことのないミュージシャンがたくさんいたし、観たい人がたくさんいた。そして、それに紛れ込むように自分もライブをさせてもらえて、いまあの日を眺めるととても羨ましくなるくらい幸せな1日だったと思う。


京都の音楽シーンは、なんてふくよかな芯があるんだろうって思った。なんて豊かなミュージシャン同士やお客さんとミュージシャンの関係ができているんだろうって思った。

主催のシックスブリッツが、本当に瑞々しく素晴らしい音楽とライブをしていた。これはお世辞でも太鼓持ちでもない。トリと主催の魔法にかかっていたとしてもいい。

何よりお客さんの顔が素敵だった。いままで僕が体験したライブの中で一番素敵な顔をしていた。とても純粋だった。純粋にシックスブリッツやこのフェスを愛していると分かったし、それに見合う音楽が会場に鳴っていた。僕は初参加の岐阜の他人としてもそう思った。それはすごいことだと思う。

言い出したらキリがないけれど、西島衛さん(シックスブリッツボーカル、本サーキット代表)の何かしでかしたいという心地よい気持ちと、丁度いいかわいさのMC、左利きでP90のピックアップを鳴らすギター、ボランティアスタッフをステージに上げる心意気、長い髪、落ちそうな大きな黒縁メガネ、遠くからでもわかるその奥にある目の光、ロックバンドでありながらの多彩で豊かなリズムワーク、舞い散らされた風船、悲しみの中から浮上しようとする音のアンサンブル。今回はシックスブリッツだけはべた褒めしてもいい日ですよね、すみません。ほとんど話したこともない、初めて観たバンドでした。気持ち悪いかもだからもうやめます。だけどそれくらいに、僕はいいなって思った。



chamという四条河原町あたりの路地を一本入ってさらに日本家屋の居酒屋の脇の細道を奥に行ったところにある一軒家のカフェで、僕は演奏をさせてもらいました。

決して多いとは言えなかったけれど、何人かのお客さんが僕を観に来てくれた。僕が知っている人も、知らない人もいた。どちらもとても嬉しかったです。近場から遠くまで14くらいの会場があるフェスでその時間にそこに来てくれたこと。それが嬉しい理由は、言うまでもないと思う。

僕はひねくれているのかもしれないし、卑屈なところがあるのかもしれないです。だけど、やることをやった。媚は売りたくないと思ってやった。この曲をやったらお客さんが何人か好きになってくれるかもしれないと思うのを辞めて演奏をした。いま歌いたい歌を歌うことが、その日のステージをやる意味だと思って自分の歌を歌った。観てくれた人にどう響いたかはほとんど分からないけれど、僕はとてもやりきった気持ちになれました。それで、よかったって思う。ミュージシャンでは、ゆ〜すほすてるの江川くんと青木拓人さんと砂場ミヤザキナツキさんも観に来てくれていた。それにたくさんの投げ銭のお金をスタッフの方を通してお客さんにいただきました。僕はそういうサプライズにも、心がほころんで嬉しかった。



鴨川の橋の下から、新京極あたりの通りの脇、狭いバーの奥や、あらゆる地下や地上のライブハウスで、音楽を演奏する人たちを観た。街中に音楽が紛れ鳴っていた。あとからそれは海外のあるフェスをモチーフにしているというような話を京都の友人から聞いたけれど、それはとても楽しいことなんだと分かった。そして、楽しいは力になるのだと今も実感しています。

このフェスへの出演は、僕は公募枠からのエントリーだった。片田舎の僕にこんな機会を与えてもらえて、声を出して喜んだ。衛さんとは、ずっと前に三重のドレミファといろはで共演させてもらっていたけれど、自分の音楽が、やっぱりこういうことがあると、少し認められたようで嬉しかったです。そして、一日楽しんだ。それは、けっこう自信があります。


スタッフの方々、本当にお疲れ様でした。ただの一出演者だったけれど、全てのスタッフの方を知らないけれど、僕の演奏したchamのスタッフの方が誠実で聡明で、とても安心して気持ちよく演奏ができました。衛さんをはじめ関係者の方にも直接会ってお礼が言いたかったけれど、本当に出演させてくださって嬉しかったです。ありがとうございました。

なんにも知らないくせにズケズケと色々感想めいたことを並べてすみません。岐阜の田舎者の一感想として、うっかり見てしまった方はそっと戻るボタンを押してもらえればと思います。


5月のくせにうだるような暑さの京都で、このフェスの一部になれて、関西の知り合いのミュージシャンにもたくさん会えて血が再び巡るように心満たされた思いです。知らないうちにたくさんのあたたかい人に出会っていたのだと、ありがたいなあと思っています。


京都にはまた、6月20日、二条にあるnanoというところに行きます。その時までに、2本のライブと3週間あまりの時間がある。そのときの僕をまた歌えれば、きっと沈まずにもう一歩、次の足を踏み込めるのだと思っています。そのためにまた、今を頑張ります。

長々と読んでくださってありがとうございました。では、また。


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