島尾敏雄

桐野夏生『デンジャラス』(中央公論新社)

2018年6月の読書記録。

桐野夏生『デンジャラス』(中央公論新社)読んだ。谷崎潤一郎と三人目の妻松子、その妹重子『細雪』の雪子のモデル)、松子の息子の嫁千萬子、の物語。重子の視点から、兄と姉の夫婦の愛情の揺るぎなさ、自分の薄幸さ、兄の寵愛が義理の息子の嫁に移っていく焦燥感を描いていて、これは小説だからすべてがすべて事実ではないだろうけれど、書くことの業、書かれることの業が執拗に追求されていて、

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島尾敏雄「島の果て」

島尾敏雄については去年卒業論文を書くために散々読んだのですが、いかんせん論文を「学位論文として」まとめるという手続き的なところへの配慮が自分のなかで勝ってしまったこともあり、集めたまま使わず終いの資料ですとか、書いたけれども論旨から逸脱する等の理由で削ったですとか、そういうものはそれきり放っておいたのでした。論文では『死の棘』を扱ったので、それ以外の作品について、というわけで、「島の果て」について

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イザヤ書42.1‐4の試訳

さて、前回の記事で触れたイザヤ書の42章1‐4節を訳してみましょう。ただし私もラテン語教師ではなく、ただの独習者にすぎませんので、以下の語釈・解釈には誤りを含む可能性がありますことを、はじめにご承知おきください。

1 ecce servus meus suscipiam eum electus meus complacuit sibi in illo anima mea
dedi spiritu

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ルカ伝福音書3.22の試訳ー挨拶も兼ねて。

Et descendit Spiritus sanctus corporali specie sicut columba in ipsum: et vox de caelo facta est: Tu es fillius meus dilectus, in te complacui mihi.

そして鳩のような姿で、聖霊が彼に降り注いだ。
そして天からの声が聞こえた。
「あなたは私の愛する子、

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昨年面白かった本

2018年は本を100冊ちょうど読みました。今年はもう少し沢山読めるといいな、と思っていますが、どちらかというと集中力を研ぎ澄まして、きちんとテキストを読み取り味わう読書を目指した方がいいような気もしています。

舞台「豊饒の海」を見る前に三島由紀夫『春の雪』『奔馬』を再読(『暁の寺』『天人五衰』もこれから読みたい)、舞台「メタルマクベス」disc1を見たら、あ、原作当たっておくべきだった、とdi

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ブックガイド「すぐそこにある異界を感じるスリリングな5冊」/ 翻訳家・鴻巣友季子

この連載では、飯田橋文学会のメンバーがテーマごとに必読書をご紹介していきます。今回は、翻訳家・鴻巣友季子が「すぐそこにある異界を感じるスリリングな5冊」をテーマにオススメの本をご紹介します。

「すぐそこにある異界を感じるスリリングな5冊」

朝起きて、今日も平凡な一日が始まる。家を出ていつもと同じ信号、いつもと同じ電車、あるいは、いつもと同じスマホ、いつもと同じ掃除機。でも、よく見るとうっすら亀

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