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記憶の街と、本屋さんと

 子どもの頃行った公園に、大人になってもう一度行ってみて「あれ、こんなに小さかったっけ?鉄棒も、こんなに低かったっけ?」とびっくりするような経験は、きっと誰しもあると思う。その感覚を、里帰りしてあちこちで体験した。

 海外渡航が間近になり、久々に故郷の町に帰った。
 3年間通った高校の近くを本当に久しぶりに歩いてみる。15年以上経っているのに、地図無しでさらさら歩ける自分に驚いた。
 ところどころ店舗が変わっているものの、駅前のコンビニも、図書館も、カフェも、モスバーガーも、ほとんどそのままの姿で残っていた。

雰囲気のよい通りを歩くと見えてくる書店。

「きれいな街だなあ」
 歩いていて素直にそう思った。
 なぜだろう、高校三年間、通学路に対してそう思ったことなんて一度もなかったような気がする。こんなにきれいな街だったっけ?
 きっと高校生の頃は勉強のことや、どうして自分はこうなんだろうとか、ネガティブな気持ちで心がいっぱいだった。
 自分で自分の人生を変えようとか、変えられるなんてまったく頭になくて、つまり街並みなんてどうでもよかった。
 でもいま、見上げると街路樹が心地よくそよいでいるし、レトロでおしゃれなマンションや、お店もある。
 日本に帰ってきたらここに住もうかな?それもいいかもしれない、なんて考えながらお目当ての場所へ向かった。
 そう、実はここで途中下車したのは母校に行くためではない。(一応門扉まで行ったが、ばっちり夏休みだった・・)
 とある本屋さんに行きたかったから。

ブックスキューブリック(福岡市)

 台湾へ行ったら本屋さん巡りをしたいと考えている私。
 そもそも日本にはどんな特徴的な本屋さんがあるのか?と思ってネットで調べていたところ、なんだか見覚えのある街並みが。
 あれ!私の通った高校があったところじゃん、と思って目が釘付けになったのである。
 その本屋さんは、私が高校生の時分からあったけど、先述したように私はほぼ三年間、素通りしていた。一度だけのぞいてみたことがあった気もするが、制服姿の自分に気が引けて中までしっかり見なかった。気がする。
 世間は狭いなあ。そう思って、帰省の折に寄ってみることにしたのだ。

 自分が好きな本、欲しい本がごそっ、と並んでセレクトされていると、選者の方と好みが近いのかな?なんて思って嬉しくなる。

気になっていた本が何冊も勢ぞろいしていた

 土曜日の午後、ちらりちらりとお客さんが途切れずに常に一人二人は入っている、という感じだった。
 店員さんにいきさつをざっくり話し、許可をいただいて撮影。途中、鮮やかな橙のアロハシャツに麦わら帽子のおじさんが、スタスターッと入ってきて、真っ先にカウンター前のパンを手に取って購入した。なんだ、パン目当てか?と思ったら、その後じっくりと本棚を眺めていて、面白かった。粋なおじさん、という感じ。

店内。広くはないけど、きちんとまとまっている
ああ、毎週通いたい…。

 粋なおじさん、といえば、この書店の創立者も素敵な方だなあ、と調べていて思った。福岡は私にとっていい思い出ばかりの場所ではない。心象風景と言う言葉があるが、現実の街と心の風景が重なって、街がなんだか灰がかった色味に見えることもあった。
 でもそういう場所でも、日本のあちこちで働いてイタリアと関わって素敵な本屋さんをつくって・・・という開けた人、素敵な人もいる。もちろん街自体も、年月とともにどんどん変わっていく。
 独立系書店、と言う言葉を聞くようになったのも最近だし、BOOKOKAとという本のイベントのことも、初めて知った。

 時間の流れに流されて一周して、昼寝から目覚めた子どものように、また新しい気持ちで世界を見ることができたらいいな、なんて思いながら、記念に文庫本を一冊購入して帰路についた。
 本の感想はまた別の機会に書きたいなと思う。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※訪問の際は、オフィシャルな情報を必ずご確認ください。

【訪ねた場所】
福岡の書店・本屋|ブックスキューブリック[BOOKSKUBRICK] | 福岡の書店・本屋|ブックスキューブリック[BOOKSKUBRICK]

【参考にさせていただいたサイト】
独立系書店ブックスキューブリック店主 大井実さんインタビュー【地方編】 | ニュース | 福岡ふかぼりメディア ささっとー (sasatto.jp)

BOOKUOKA / ブックオカ 福岡を本の街に


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