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短編小説『月と犬』

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奇跡というより、ある意味で事故に近い。 偶発的な出会いで動き出す、美月とげんの物語。
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月と犬『あとがき #1』

月と犬『あとがき #1』

ロク「この『あとがき』では、ユニット作品の裏側や、制作を通した学びについて話していきたいと思います。」

ミツキ「よろしくお願いします。」

ロク「さて、記念すべき#1は【短編小説『月と犬』第2話”MY FOOT”】です。」

ミツキ「#1なのに第2話からなの?笑」

ロク「はい。第2話です。笑」

ミツキ「なんで。笑」

ロク「んー、思い入れがあるというか、個人的にはよく書けたなと思ってて。だか

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短編小説『月と犬』第2話“MY FOOT”

短編小説『月と犬』第2話“MY FOOT”

※第1話はこちらから

「たんとお食べ。」

お掃除ロボットがゴミを吸い込んでいく。その横でげんもご飯を食べている。
“二人”とも気持ちのいい食べっぷりだ。

夫婦のボーナスを少しずつ出し合って、新三種の神器の最後のひとつを購入した。犬とお掃除ロボットの共存には相性があるようだが、げんには心配ご無用だったようだ。

新しい家電によってもたらされた時短効果に最初は感動したものだが、人間の生活は慣れる

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短編小説『月と犬』第1話

短編小説『月と犬』第1話

私は歩く。犬を引いて、月あかりの下を。

暗くて、そこに道があるかどうかよく見えないけれど、犬は自信満々に私をひっぱっていく。
かわいい見た目の割には賢くて勇敢なところが自慢の犬だ。

子供の頃から犬が欲しかった。でも、自分より小さい命よりも自分の価値観を優先しそうな父
と、自分より小さい命に対してきっちりすぎるほどに管理しそうな母を前にして言い出すことはなかった。

大人になって、なんて口にする

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