見出し画像

池上彰・津田大介著 『メディアの仕組み』【前編】

この本は約6年前の2013年5月に発売されたものです。今や情報に関するツールの流行り廃れの動向は激しく、我々を取り巻く環境は刻一刻と変化していますが、この本はメディアというものに携わる方の信念や情熱についても深く触れていて、時代において届けるツールの形は変われど、「この情報を伝えたい」という熱い想いを持つ人の志は、いつ何時も変わらないのだということを知り、感銘を受けました。

6年前ともだいぶ変わっている現代社会のメディア環境においても、内容として古いという感覚はなく、むしろ今こそ読み返してよかったと思いました。

この本前半の3章は以下に分かれています。
第一章:テレビの仕組み
第二章:新聞の仕組み
第三章:ネットの仕組み
普段は表面しか見ていないこれらメディアの裏側を知ることで、そこから得る情報を、そのまま受け取るのではなく、自分なりに解釈して、自分の頭でもちゃんと考えようと思えます。

興味深いエピソードはたくさんあったのですが、特に面白かった部分を少しだけピックアップしてみます。

『第一章:テレビの仕組み』より

池上彰さんが2012年にテレビ東京の選挙特番に出演した際、池上さんが意識していたのは「他局との差別化」と「視聴者が知りたいことを伝える」ことだそう。(ちなみに、他の選挙特番にも出演依頼をされていたけれど、テレビ東京のオファーが一番早かったからテレ東に出演したとのこと。)

テレビ東京はNHKやテレビ朝日と比べて取材・制作スタッフの人数が少ないので「当確」を打つのは圧倒的に遅いとのこと。確かに選挙特番の時にチャンネルを変えながら見ていると、局によって数字の出方に差がありますよね。

だから、当確速報の競争は初めから放棄し、視聴者の目線に立って政治家に鋭い質問を切り込むことなどに注力しているそうです。

以前石原慎太郎さんが、インタビュアーが池上さんだと気付かずに怒り出し、後から「あなただと気付かずに失礼な態度をとってしまって...」と言われた時も、「石原さんは、相手によって態度を変えるようです」というコメントを返したことがありました。そこには、視聴者代表として質問しているという気持ちが揺らがない様子がうかがえます。

『第二章:新聞の仕組み』より

この本が出版された後2014年くらいから、新聞の発行部数はそれ以前より早いスピードで減り続けているようです。電子版へシフトしている層もありますが、総合して見るとやはり新聞離れの速度は速いですよね。

私個人としては、一人暮らしであれば新聞はとっていないと思いますが、新聞を読んでいると、やはり自分で取捨選択しているネットの情報では得られないものに出会うことができ、ネットニュースとは担う役割の違いを感じます。

津田大介さんのこんな言葉にはっとしました。

昔は「ネットに情報を置いておけば10年後でも100年後でも、みんなで知の共有ができるはず」という暗黙の前提がありましたよね。それが、まったく間違っていたことが、この数年でわかってきた。「ああ、ネット上の情報は、こんなに簡単に消えてしまうものなんだ」と思ったことがある人は多いんじゃないでしょうか。

そうなんです。ネットは、最近何が起こっているのかをまんべんなく知ることはできても、ちょうど10年前にはどんなことがあったんだろうと調べることって難しいんですよね。何かしらのキーワードを使ってピンポイントに調べていくのが主な方法になると思うし、そういった記事が過去に存在していたとしても、その記事が載っているサービスが終了したり、サイトが閉じられたりしてリンク切れになっていることも多いですよね。

ネット上には、無限に情報があり、あらゆる方法でいつの時代でも引き出し可能のような気がしていましたが、それはごく最近の情報にしか目を向けていないからなんですよね。

ネットがそれほど普及していなかった時代には、学校のレポートを書く際など、よく図書館を利用したものです。

津田さんはこの本の中で、これからの新聞はすべて、データベースとして販売すればいいのではないかと書いています。

2019年現在では、このようなサービスを行っている新聞も増えていますね。

今自分には、お金を払ってまでリアルに必要性を感じませんが、新聞記者・雑誌記者などそういったメディアの仕事をしている人にとってはかなり充実したコンテンツになっているのかもしれません。

この本全体を通して感じたことでもありますが、例えば新聞に関してなら
・未だ紙の新聞をとっている人・新聞の電子版を購読している人・ネットニュースしか読まない人・ネットニュースも読まない人......など、いろいろな層の人が存在しているはずなのですが、自分以外の層の存在って忘れがちだなあということです。

ネットのみから情報を得ていると、テレビや新聞があるニュースを引き伸ばして伝えていることについて「これは、何か重要な事件から世間の目を背けさせるための陰謀に違いない」という説がよく出てきて、それを鵜呑みにしてしまうことも私はよくありました。それはメディアがただ単に、世間がもう関心を失っていることに気付かず惰性で追いかけているだけの場合が殆どという池上さんの言葉もありました。

そういった情報全てに対して、何が正しいのか自分の頭で考えるためには、少なくともネットの情報だけを追いかけていては難しいのではないかと思います。

長くなったので、後編に続きます。

#日記 #エッセイ #毎日投稿 #毎日更新 #メディアの仕組み #メディア #津田大介 #池上彰 #新聞

いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。