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そばにあるだけで大丈夫になる物語

 先日アップしました『トキのフィルム』という小説でnoteのコンテストに参加しています。

 この記事はその後書きのような感じ。一番最初に書いた小説『透明に鳴らすさよなら』を書き終えてすぐ、お風呂の中で天使のトキがわたしに話しかけてきた。わたしにはすぐに、彼が次の物語のキャラクターであることがわかった。天使のトキはカメラを持って、さまざまなイメージを切り取る。わたしは、自分の頭の中を出し切ったあとに知らない場所からぽんとやってくるアイデアが好きだ。それはわたしの頭の中の記憶や関連ではない、まったく新しい次元からやってきた。わたしはわたし自身が知らないことを書く。わたしは読みながら書いている。

 『トキのフィルム』を書いている間ずっと、下北沢のゆるやかな坂道が頭の奥にあった。それはレイヤーになってずっと物語の奥に敷かれている。冬の朝のきんとした空気。暑い夏のすべてが溶けてにじんでいる景色。ところどころに次元の穴がある。いつでもストンと落っこちてしまいそうな気配にドキドキする。
 ずっと、わたしはひとりぼっちで暮らしている。人生の中で、わたしの世界を誰かが通り過ぎていくことがある。しかし、それは永遠ではない。いつも時間が過ぎればまたひとりぼっちに戻る。だけど、本当は友だちが何百人いようとひとりぼっちなのだ。そんなことに絶望する。さみしくなる。でも、それが地球にいるということなのかもしれない。

 トキは、この物語を書いている間ずっとわたしのそばにいた。もうひとりの主人公リリも、わたしの一部になった。人間はパズルのように、誰かや何かの一部になる。誰かの一部になったわたしは、彼らが変化することで剥がれ落ちたり成長したりする。わたしとは無関係なところで、わたしが動いている。これは分離とは逆の作用だと思う。ひとつになっていく力。ひとつだと認める明晰さ。世界がすべて自分自身なのだと認めること。

✴︎

 一度、わたしはこの物語を大きく書きかえた。半分くらい書いたところでラストシーンがやってきて、その終わりと今までの話がどう繋がるのかわからなかった。わたしは違和感のあった部分や仮で書いていたところを見直した。すると「正しい順序」のようなものが見えてくる。最初のパートを削除して並び替え、もう一度ラストシーンを見ていると、ある言葉が浮かぶ。「わたしは地球に帰ってきた」それがこのストーリーなんだと理解した。

 わたしはよく体を離れてしまう。遠い宇宙の意識の状態になる。俯瞰することは楽なことだ。しかし、体のわたしを置いて行ってはいけない。わたしは体のわたしと約束をした。絶対に離れないし、大切にすると。生きている時間はとても短い。その間にわたしは体を与えられている。体の自分と、宇宙の自分。その間には大きなギャップがあるときもあれば、ぴったりとくっついて離れないときもある。ただ、わたしは、リリは、もう少し体にくっついて、置いていかないで生きてみようと決めたのだ。

 そんなに長くない小説なので、ぜひ読んでみてもらえたら嬉しい。内容を理解しようとせず、ただ読んでみてもらえば勝手に宇宙のあなたが必要としている情報にアクセスされるようなエネルギーを込めている。わたしはいつも、読まなくても、そばに置いておくだけで大丈夫になる物語を作りたいと思っている。わたしのベッドのかたわらに積み上げられている本たちがそうだ。わたしは、その本たちがあるから、さみしさに押しつぶされずに毎晩穏やかに眠ることができるのだ。 

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