医者

医者が言わないこと、看護師が伝えたいこと

「手術は無事に終わりました。傷を調子をみて、良ければ明日からリハビリをしましょう。早ければ2週間で退院です」

 現役看護師天童水葉です。天使の黒い戯言20回目は「お医者様の言うことは信じるな」です。と言っても医者が嘘をついているわけではないです。ついてはいないけども、釣られるな……というお話。

Ⅰ 医者は多くは語らない、語れない

 私の看護師人生の中で、患者様への説明がうまいと思う医者は数人しかいません。おそらく研修医を含めて100人以上の医者とお仕事をしてきたのですが、その中で数人。ただ私が良い医者にめぐり合えていないだけかもしれないのですけど。
 私から見た説明の良くない医者のパターンをあげてみます。
1:まず話をしない
 この医者のパターンみかけます。患者様に状態の変化があった場合や、治療に変化があった時など、看護師からみたら一度は説明したほうがいいんじゃないか……という時も医者は話をしません。そういう医者は病室にきても「特にお変わりないですねー」と言って、すっといなくなっちゃう。特に療養病棟はそういう医者をよくみかけます。確かに療養病棟となると患者様に大きな変化は起きないので、話をする機会自体が少ないとは思います。しかし患者様が脳梗塞を起こしてても家族に連絡せず、看護師からご家族に連絡をいれた……ということがありました。大抵のことは看護師からも説明はできますが、やはり病態の変化があった場合は医者からしたほうがご家族や患者様自身も安心するのではないでしょうか。まぁ、看護師からしたら医者の説明が下手なのですが。では続いての説明が良くない医者のパターンは……
2:専門用語を使う
 医者はどうしても日常的に専門用語を使って看護師などとコミュニケーションをとってるせいか、患者様・ご家族様にも同様に専門用語を使って説明しちゃいます。そして理解しているかどうかを確認することもなく話を終えてしまいます。
 会話はキャッチボールと言いますが、医者のそれは絶えず変化球(難しい言葉・表現)を投げるだけ投げて、受け手のことあんまり考えません。受け手はボール(情報)をキャッチすることに一生懸命、返球なんて出来ずとり損ねてもどんどんボールは放られてきますから、話が終わった頃には受け手の周りにはボールが転がって呆然としている……という状況でしょうか。患者様やご家族様も医者と話すことに緊張を伴うので、医者から「今の話でわからないことないですか?」と聞いたとしてもわからないことだらけで「ハイ、ダイジョウブです」と雰囲気にのまれて答えてしまうこと多いです。あとあと時間をおいて看護師が「お医者さんの話でわからないことなかったですか?」と聞くと、「実は……○○ってどういう意味ですか?」と説明のキモが伝わっていないことが時折あります。
3:プラスαの説明がない
 冒頭の言葉は手術後の医者からの説明例です。再度載せます。
「手術は無事に終わりました。傷を調子をみて、良ければ明日からリハビリをしましょう。早ければ2週間で退院です」
 どんな手術でもかまいません。もしご自身やご家族など手術を受けたと仮定して、上記のような説明を受けて安心するでしょうか? 安心する方も多いと思います。しかし看護師からしたら説明不十分なんです。
 どんな手術でも手術自体がうまくいっても、合併症というのがあります。特に高齢になればなるほど。むしろ手術が終わってからが怖いのです。手術の傷から思わぬ出血があったり、寝ている時間が長いことや麻酔の影響で肺炎になったり、所謂エコノミー症候群が発生したり……。私個人としては高齢者の方の認知症の発症・悪化、筋力の低下が懸念するのですが、そういった所謂起きうるバッドニュース的な説明は医者はしてくれません。
 なので私はしています。
 手術後の医者の簡単な説明のあとでほっと安堵しているご家族に、バッドニュース的な説明をするのは心苦しいのですが、患者様・ご家族を労いつつなるべく専門用語を使わないように説明をします。説明最後には「そういった(バッドニュース的な)ことは起きないように看護していきます」という言葉を添えて。
 手術に限らず、医者の中には「肺炎で入院したら肺炎のこと」「脱水で入院したら脱水のこと」しか説明をしない人もいます。そういうなか「肺炎で入院して、肺炎は良くなったのに筋力が低下して寝たきりになった」「脱水で入院したのに、脳梗塞になってしまった」ことも時々あるのですが、そうなったときにご家族はこう言うのです。
「医者から聞いていた話と違う」と。

Ⅱ そばにいない医者より近くの看護師を捕まえろ

 医者は外来でも多くの患者様を抱えており、正直入院中の患者様をじっくり診る時間がないです。それも現状どこの病院もそうかもしれません。そして看護師の方が患者様と接する時間が長いです。看護師の方が患者様のことを知っていますし、医者よりかは話しかけやすいと思います。まー、これもまたどこの病院も一緒で看護師はパタパタ忙しそうにしていると思うのです。それでも患者様やご自身が入院していたとして、病状や入院中のことで心配なことがあったら看護師にまず聞いてみてください。医者よりもわかりやすい言葉で教えてくれるかもしれません。もしも看護師の範疇を超える内容であれば、医者との話し合いをセッティングしてくれると思います。ただ残念ながら看護師にもピンからキリがあります。そこは接していく中でわかってくると思いますので、うまく見抜いてくださいね。

Ⅲ まとめと今日の黒い戯言


  私の看護師人生で悟ったことのひとつに
『病院は病気が治るところではない。治そうとするところ。病気が治らないこともあるし、新しい病気になることがある』というのがあります。
 そのことをご自身や身内の方が入院したら心のどっかに置いておいてください。そして医者の言うことだけでなく、看護師からも話聞くことをオススメします。
 今日の黒い戯言は
「けっこう変わり者だから医者になれるのかも」
 というところで。今日もありがとうございました。
 

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