「好きなことで生きる」のは、バラの咲き乱れる「イバラの道」

昨日の記事の続き。

イラストのタッチ(画風)について悩むイラストレーターは多いものだ。かくいう私も、なかなか画風が定まらず悩んだし、ある程度絞り込めてからも、どちらをメインにすべきかずっと悩んでいた。

どちらか片方の評価がものすごく高ければ、潔く決められるけれど、それぞれにどちらも「いい」と言ってくれれる人がいるので困ってしまう。

「絵が上手い」の先にあるもの

自分ではどっちの絵がイイなんてことはわからないし、逆に言えば、明らかにダメな絵はあるけど、誰にとってもいい絵なんてないのだと思っている。20世紀美術界の巨人・ピカソの絵だって万人に好かれると言う訳ではないように、ファンがいるほど、アンチもいると言っても過言ではない。

よく「絵が上手いですね」とも言われるんだけど、プロの絵描きにとって「絵が上手い」と言うのは褒め言葉ではない。何故なら「当たり前」だから。

イチローに向かって「野球うまいですね」とか、ミシュラン☆3つのフレンチのシェフに「お料理上手ですね」とは、わざわざ言わないだろう。それと同じように、絵描きは「絵が上手い」のなんて、当然のことなのだ。

その先にあるものを見なくてはいけないのがプロだ。上手い絵の先にある、味わいや個性や、人を惹きつける何か。

「いい絵」とは「個性のある絵」?「使いやすい絵?」

さらに、商業イラストレーションは、使われる媒体によっては、インパクト重視だったり、ある程度のどぎつさや、強烈さを求められることもある。いわゆる「ヘタウマ」が求められることだってある。絵だけを見てよさ悪さを判断するというより、使われてこそナンボの世界だったりもするのだ。

誰もに好かれるような、キレイだったり、かわいらしかったりするものだけの需要がある訳ではない。

かといって、個性が強すぎても、使われる媒体が狭まってしまう。「いい絵」「個性のある絵」「使いやすい絵」はどれも同じであるとは限らないのが、またややこしい。

好まれるイラストは、媒体によっても違う

教材や書籍のカットなどは、どちらかといえば、あまり個性の強くない、当たり障りのないようなタッチが好まれる。そういった仕事は数はたくさんあるけれど、単価は安い。それでも、定期的に仕事が来て、安定収入が見込めるという点では、ありがたい。

逆に、個性の強い絵は、書籍のカバーや広告など、目立つ場所に使われることが多い。そういった仕事は単価も高く、イラストレーターとしての名誉にも繋がるので、誰しもやりたい。元々多くないうえにパイの奪い合いなので、かなり大変だけど、ここで売れっ子になれば、一流イラストレーターの仲間入りだ。

「好きなことで生きる」のは「イバラの道」

前述の通り、個性の強い絵は、ファンが付く分、アンチも増えやすい。それでも、一流を目指すためには、アンチが増えるのも覚悟で、イバラの道を行くしかないのだ。

でもそのイバラの道は、美しいバラの咲く素敵な道でもあるんだよね。

だって、「あなたに描いて欲しい」と言われて描くことができるんだから。誰が描いても同じような仕事で「使い捨て」になるか、唯一無二の自分になって「イバラの道を行く」かは、自分次第なのだ。

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陽菜ひよ子 / イラストレーター&漫画家&文筆家

著書『アトピーの夫と暮らしています』(PHP研究所)。イラストのお仕事は、NHK・Eテレ『すイエんサー』、書籍『おいし なつかし なごやのおはなし』(戸田恵子著、ぴあ)など多数。現在2冊目の本の執筆中。ひよことプリンとネコが好き。 http://www.hiyoko.tv/

アート×デザイン=クリエイティブ

アートとは「自己表現を通じて鑑賞者の感情を励起する装置」であり、デザインとは「機能や目的に向けてユーザーの行動をアフォードする装置」である。故に両者の総和たるクリエイティブとは「暗黙知を通じて人々に新しい知見や体験を与えるプロダクトを生む活動」に他ならない。
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