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理想のスタウト

「隣、いいかな?」

「あ、どうぞ...」

「ごめんね、いきなり話しかけちゃって。君のこと、すごい可愛いなってさっきから気になってたんだ。よかったらこれ、一緒に飲まない?好きそうかなって」

男は淡いロゼのシャンパンが入ったグラスを差し出した。

「あー...ごめんなさい、私そういうのちょっと苦手で...」


とあるパーティ会場。
出会いを求めてここに来たのは私も同じなのに、あからさまにそれが伝わってくるとなんか違うんだよなぁなんて思ってしまう。
すらっとした長身、タイトなスーツを着たいかにも青年実業家風に男に話しかけられた私は、ちょっと困ったような笑顔を浮かべて答えた。

声をかけてくれるのはありがたいけど、見た目で判断されるのってもううんざり。私多分、あなたが思ってるような感じの女の子じゃないし。


きっとああいう人がモテるんだろうなっていうのはわかる。でも残念ながら全然タイプじゃない。私はもっと落ち着いてて大人っぽい、どっしり系の強そうな感じの人が好き。そう、例えばあの人みたいな。

バーカウンターの横に一人佇み、静かに会を見守っている男性に私は声をかけた。


「あの...もう飲み物頼みました?私ビールが好きなんですけど、ここ、クラフトビールも色々ありますよね。スタウトとかピルスナー?とかよくわからなくて...。何かおすすめとかあったりしますか?」

すると男は申し訳なさそうな顔で、少し笑って答えた。

「すみません、僕アルコールが飲めなくて。全くわからないんです」

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