ひーろのひろまーれ★美術・舞台鑑賞のススメ

美術館、劇場に行けば人生変わる!? ★美術館の展覧会、バレエ、ダンス、クラシック音楽な…

ひーろのひろまーれ★美術・舞台鑑賞のススメ

美術館、劇場に行けば人生変わる!? ★美術館の展覧会、バレエ、ダンス、クラシック音楽など舞台のレビューを中心に。 【ひーろ🥺】芸術全般を執筆。趣味は写真、温泉旅行、スイーツ巡り。東京在住。男。

最近の記事

中村佑介20周年展★横顔の少女が見つめる先

 セーラー服を着た少女が横顔をみせるイラストが多いのは、学生時代に恥ずかしがり屋で、同級生の女子を直視できず、授業中、その横顔をこっそり眺めていたからだという。もちろん、それだけではないだろう。  「高校生の音楽」の教科書や、小説『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉著)『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦著)の表紙画を手掛けたことで知られるイラストレーター・中村佑介(なかむら・ゆうすけ、1978~)。その画業を振り返る「中村佑介20周年展」が、東京ドームシティ(東京都文京区

    • 松下洸平、生駒里奈、舞台「カメレオンズ・リップ」★嘘つきだらけ

       嘘(うそ)つきばかりの登場人物たちが、騙(だま)し合い、事態をますます混乱させ、謎は深まるばかり――そんな舞台公演が、有名人たちの嘘、フェイクニュースの話題が駆け巡る、現代の世相と重なってみえた。  NHK連続テレビ小説や民放ドラマで活躍している俳優の松下洸平(まつした・こうへい)、アイドルグループ乃木坂46の元メンバーで女優の生駒里奈(いこま・りな)らが出演する舞台「カメレオンズ・リップ」(東宝、キューブなど主催)が4月15日、シアタークリエ(東京・日比谷)で上演された

      • この世界は悪夢か現実か?★新国立劇場オペラ「アルマゲドンの夢」

         電車に揺られるうちに眠ってしまい、ハッと目覚めた瞬間、この世界が現実でよかったと思うのか、まだ夢の続きであってほしいと思うのか――。そもそも21世紀のこの世界は、かつて人々が思い描いたユートピア(理想郷)なのか、ディストピア(暗黒世界)なのか。そんな問い掛けを発するオペラが、今日の世界の社会状況を見渡したとき、より一層シリアスに響いた。 チラシから  イギリスのSF作家H.G.ウェルズが1901年に書いたSF短編小説『世界最終戦争の夢』を題材として、藤倉大(ふじくら・だ

        • ユニクロ、T、7、SMAPのデザイン戦略★佐藤可士和展

           ユニクロ、Tカード、セブン-イレブン――街中でよく見かけるデザイン。歩いていると、ふと目に飛び込んでくる。そういえば、街を見渡すと、店の看板・広告、外国料理店の国旗、駅やトイレの案内など、競い合うようにデザインだらけ。赤色の「〒」マークだけで郵便ポストだと分かるように、普段意識していなかったが、デザインって結構面白い。  ユニクロ、Tカード、セブン-イレブンなどのグラフィックデザインやパッケージなどの企画を手掛ける佐藤可士和(さとう・かしわ、1965~)の個展「佐藤可士和

        中村佑介20周年展★横顔の少女が見つめる先

          LEO 箏(こと)リサイタル★和洋、今昔を奏でる新風

           箏(こと)の奏者は古来、女性が多かったとされるが、平安時代に書かれた「源氏物語(げんじものがたり)」では、光源氏(ひかるげんじ)が名手(めいしゅ)であった(正確には琴(きん)の名手。箏(そう)と区別され、「こと」は総称)。「春の海」を作曲した箏曲家(そうきょくか)・宮城道雄(みやぎ・みちお、1894~1956)も思い浮かぶが、そんな箏の世界に、新しい風を吹かせる若きホープが現れた。 チラシから   箏奏者、LEO(本名:今野玲央=こんの・れお)のリサイタルが、ハクジュホ

          LEO 箏(こと)リサイタル★和洋、今昔を奏でる新風

          電線絵画展★――デンセン中――

           電柱(でんちゅう)から電柱へと何本も張り巡らされた電線(でんせん)――街を縦横無尽(じゅうおうむじん)に走る電線――見慣れた光景だから、気に留めることもない。現代人が景色を眺めるとき、電線・電柱を無意識に外しているか、景観のジャマだと思いながら見ているか、そのどちらかだろう。あるいは、そこに故郷の原風景をみるか。いずれにせよ、そんな電線がなければ、電気も電話も使えないのだ。 カタログから 海老原喜之助《群がる雀》 昭和10年(1935)頃 東京国立近代美術館  「電線絵

          風を待ち、海を渡る★没後70年 南薫造展

           瀬戸内海(せとないかい)の穏やかな海では、船がゆったりと浮かんでいる。日本海や太平洋の荒波で大きく揺れる船とは、だいぶ趣(おもむき)が異なる。そんな瀬戸内海に面した広島県呉(くれ)市には今も、風待ち・潮待ちの港だった頃の歴史的景観が残り、かつて帆(ほ)を張って風に任せて進んだ船の姿が想像できる。人生も、そんな順風満帆(じゅんぷうまんぱん)でありたいと人は願うものだ。 カタログから 南薫造《少女》 1909年 油彩・カンヴァス 東京国立近代美術館  明るい色彩と穏やかな作

          風を待ち、海を渡る★没後70年 南薫造展

          高畑充希、主演ミュージカル「ウェイトレス」★女性が描く、女性のリアルな悩み

           アメリカの田舎(いなか)町で、束縛(そくばく)の強いモラハラ夫(暴力夫)に悩みながら、ウェイトレスとして働く女性が、思いがけず夫の子を妊娠。病院に通うが、そこの産婦人科医の男性と恋仲になってしまう――。夫と別れて医師と再婚するか、離婚してシングルマザーを選ぶか、それとも夫でガマンするのか。  NHK連続テレビ小説や民放ドラマ、映画などで活躍している女優、高畑充希(たかはた・みつき)が主演するミュージカル「ウェイトレス」(東宝などが主催)が2021年3月11日、日生劇場(東

          高畑充希、主演ミュージカル「ウェイトレス」★女性が描く、女性のリアルな悩み

          不美人の一発逆転?★オペラシアターこんにゃく座「末摘花」

           平安時代の恋愛小説ともいえる『源氏物語(げんじものがたり)』で、美男美女が登場する中、最も美しくない女性として描かれるのが「末摘花(すえつむはな)」である。末摘花は皇族の姫君であり、その噂を聞いた光源氏(ひかるげんじ)が一夜を共にするが、翌朝、その顔を見て驚いた、という何とも失礼な話である。だが、末摘花は一途に光源氏のことを思い続ける――。 公演チラシより   オペラシアターこんにゃく座によるオペラ公演「末摘花」が、俳優座劇場(東京・六本木)で上演された(2020年9月

          不美人の一発逆転?★オペラシアターこんにゃく座「末摘花」

          優美な木版画、でも豪快な人生★没後70年 吉田博展

           朝焼けのピンク色に染まる剱岳(つるぎだけ)、その手前にあるテント小屋までの光を表現した色のグラデーションは、木版画(もくはんが)とは思えないほど美しい。木版画といえば、彫刻刀で木の板を彫って摺(す)る”白黒”の世界がまず思い浮かぶ。そんな木版画で色彩豊か、優美な作品を生んだ画家だが、アメリカで絵を売って荒稼ぎした、黒田清輝(くろだせいき)と喧嘩(けんか)した――など豪快なエピソードが常についてくる。 吉田博《劔山の朝》 大正15(1926)年  明治から昭和にかけて風景

          優美な木版画、でも豪快な人生★没後70年 吉田博展

          長引く在宅生活は、檻の中の動物と一緒?★アイサ・ホクソン『Manila Zoo』

           舞台中央に設置された大型スクリーンには、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」のように分割された画面。1画面には1人ずつ、計5人のダンサーたちが、自宅の部屋にいる様子が映し出されている。だが、その姿は全員素っ裸で、動物のように暴れ回っている。感染症の影響で、外出が制限され、ストレスをためながら、自宅の部屋にこもる人間の生活ぶりを、動物園の檻(おり)の中の動物に見立てたのだろう。その着想にまず、驚かされた。  公演チラシより  フィリピン出身のダンサー・振付家アイサ・ホ

          長引く在宅生活は、檻の中の動物と一緒?★アイサ・ホクソン『Manila Zoo』

          都会の音、人間を写す★「写真家ドアノー/音楽/パリ」展

           芸術の都パリと、現在の東京・渋谷の街には案外、共通点がある。バレエやミュージカルを上演している劇場があり、映画館、ライブハウス、ファッションブランドが充実し、酒場もある。どちらの街も賑(にぎ)やかで、音楽があふれている。  パリを舞台に多くの写真作品を残した写真家ロベール・ドアノー(1912~94)の回顧展「写真家ドアノー/音楽/パリ」を、東京・渋谷にあるBunkamuraザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura地下1階)で見た(3月31日で終

          都会の音、人間を写す★「写真家ドアノー/音楽/パリ」展

          本当はBL(同性愛)の話?★「がまくんとかえるくん」の絵本作家アーノルド・ローベル展

           仲良しの蛙(かえる)たちを描いた絵本「がまくんとかえるくん」シリーズで知られるアメリカの絵本作家アーノルド・ローベルの展覧会『「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念 アーノルド・ローベル展』を、東京・立川のPLAY!MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 Green Springs W3)で見た(3月28日で終了)。現在、ひろしま美術館(広島市)に巡回中で、4月3日から5月23日まで。来春には兵庫、東北に巡回。  絵本「がまくんとかえるくん(原題:frog and toa

          本当はBL(同性愛)の話?★「がまくんとかえるくん」の絵本作家アーノルド・ローベル展