花火

自分は何者なのかを伝える、わかってもらうと何が起きるか

この5月から7月までの約3ヶ月の間、ものづくり(照明)をまた懲りずにしようと思ったことと、とある照明関連の企業との新しいプロジェクトのことで自分史上初の難関の中にいました。それは、今までやったことのないことなので、自分の中で前例がなかったということ。まず、関わる人たちが私と初めてコミュニケーションをとることになるので、私のやっていること、やってきたこと、私に何ができるのかを知らなくてはいけないというのが最初の壁。

金融機関からお金を借りる

新しいものづくりをする為には資金がいるので、融資を受けることにしました。国の助成機関ではなく、今回初めて金融機関に融資の申し込みをしたのです。自身の仕事の拠点、東京深川の信用金庫へ。町の信用金庫はイメージ的には地元密着で企業規模に関わらず親身になってくれて、そう難しくなく融資をしてくれる、と思っていました。。銀行員が主人公のTVドラマの影響もありました(笑) それが、、甘い・・! 甘かった・・のです !  まず、私が何をしてきたのか、何をしようとしているのか、様々な書類をつくりながら、社会人になってからの経歴、なぜ飲食店と照明の仕事をやってるのか等々。しかし今まで何度もいろんな人に説明してきたことと同じように説明しても、なかなかわかってもらえません。「なぜこの照明器具が4万円以上もするんですか ? こんな高いものが売れるんですか? 収益はちゃんと考えていますか? 」もう、「?」の嵐な質問ぜめ。そして、一番私が嫌な質問「飲食と照明の売上の割合は?」二足のわらじと言われるたびに「二足ではなく一足です」と説明してきたことが全く世界の違う人たちにわかってもらえないのです。たにたやという飲食店は照明のリアルな空気を体感できるプレゼンテーションの場。だから、私の中でこの二つの事業は乖離していなくて、どちらも二つの事業にとってなくてはならない存在。しかしどうしても彼らは乖離させたいらしい。だが、ここでブチ切れては新しいものづくりができない。。と思い、どうしたらこの人たちに理解してもらえるのかをあの手この手で説明、説明、また説明。の日々でした。

トム・ディクソンの新作発表からの写真。デザイナーの中でもトム・ディクソン氏はビジネススキルに長けていると評判。彼に教えを請いたいと思ったくらいの日々。

大企業

もう一つ。とある照明関連では知名度高い企業への新規提案を求められていました。これは、私の中で光の本質と向き合うことでもあり、ぜひ企画を通してやったみたいと思い、何度も企画書や資料提案を繰り返していました。同業界なので、こちらもスムーズに通るかと思っていたのですが、、、甘い・・! 甘かった・・こちらも。。 こちらは逆に、さらに視点の違う角度から、数字に直結する内容でなければいけないという指摘に、一度は諦めようかと弱腰にもなりました。彼らが持っていないことで私に有ること、彼らができなくて、私ができることは何か。これと向き合い、綺麗事では進まない現実を突きつけられる日々でした。

↑ 紙媒体で、3箇所記事を書いた商店建築の別冊「コマーシャルスペースライティング」誌。これが金融機関にも大企業にも効果があった一番の資料

自分は何者なのか

信用金庫と大企業、どちらも共通していたのが「タニタさん、あなたはどんな実績とどんな経歴があって、なぜ今ここで飲食店もやってるんですか」最後のよりも、"実績と経歴"が知りたいのです。それは、お金を融資できる理由、企画を通す為の理由、がお互いの信頼を築くためにに必要なこと。改めて考えると、今年で独立して5年目を迎える間、自分はいったい何をしてこれたんだろう? と資料を作ったり情報を収集しながら考える機会でもありました。書き出してみると、その実績や、やってきたことの時々に依頼してくれた人、関わってくれた人たちの顔が浮かんできました。省みながら、そうすると、「◯◯をした私」「◯◯を書いた私」「◯◯をつくった私」、だから「◯◯信用金庫さん、これからやる◯◯の為にはこの実績とこの市場が活きてくるんです、可能性すごく有るでしょ」と、自信を持って言えるし、「◯◯社さん、◯◯と関わってきましたから、この業界のネットワークが有るんです。◯◯をつくるメーカーのネットワークが有るので、こんなこともできますよ」と納得できる裏付けが言えるのです。いずれも、ビジネス成功本に書いて有るような定型文じみたコンセプト文なんて必要とされてないこともわかったのです。

モチベーションが上がり、人の意識が変化していく

信用金庫の担当の人は、見た目真面目で堅物そうな感じ。何度も苦労しながら説明する私の話を向こうも頑張って理解しようとしてくれてました。聞いてくれるから熱も入ります。誰でもやっていることに融資してもそれはレッドオーシャンにお金を貸すのと一緒でしょ、なんて話もしたかもしれません。最近、その担当の人が融資課の人を連れてきました。実際にどんな人がどんなところで仕事をしているのか見て欲しいからと言って。するとその融資課の人が「◯◯(信金の担当者さん)は、社内で社長さんの(私のこと)ことをすごい熱く語るんですよ」とポロっと。えっ? ! この人が私のやっていることを熱く語っている ? ? 照れ臭そうに笑う信金の担当の方。この約1ヶ月くらいの間、この人は私のやろうとすることを必死でわかろうとしていたんだと、それは嬉しくなりました。だんだんTVドラマの銀行もののように(笑) 一方、企業の方は、この企画をやりたいという事業部数名の方から別々にメールをもらうようになっていました。皆、だんだん長文になってきて、メールの文章に熱意が感じるようになってきました。事業部全体がやる気満々になってきて、役員、社長へと何度もプレゼンをしていたようです。これも、2ヶ月前とは違う空気を感じるようになり、要は"私が"ではなく、"彼ら"の為の"私の意味"ということでしょうか。人の意識が変化していくと、状況を変えるパワーとなっていくのですね。

新メニューのコロッケ。この中には近所でお世話になっていたお豆腐屋さんのおからが入っている。おからをしっとりと仕上げ出汁を効かせた味に。

これからが始まり

結果、数日前に希望額にはならなかったけど、その2/3の融資がおりました。さらに、意識が変わった(と私が勝手に思っている)信金の担当の方は、足りなかった分をプロパーで融資できるかどうかを継続して社内に交渉してくれています。企業の方は、これも数日前に社長プレゼンが通ったという報告がありました。私の弱腰も一変し、もう前に進むしかありません。こんなに人の気持ちを変えるくらいの力がまだ自分には有るんだと思うのも一瞬。責任を持って彼らの期待に応えていくフェーズに入ります。そう、まだ何も始まってない、これからが本気のスタート。何者であるか、また問われる日々が始まります。

秋田のりんごジュースを使ったメニューを現在研究中。その中の一つ、「ピスタチオ、レーズン、くこの実を入れたりんごジュレ」冷やしてデザートに。

自分の変化

この2、3ヶ月、そういうことでこれまでにない密度であちこち駆け巡っていて。いろんなことも犠牲にした感がありつつも、自分の変化に気づきました。融資への資料つくり、企画の為の資料つくりで時間がいくらあっても足りないのにウィークディのたにたやの営業はあるわけで。今年の5月、6月が例年に比べちょっと厳しい状況だった中で、これまでにやったことのない料理がいくつか生まれ、定番のメニューがさらにバージョンアップしたようです。来客してくれた親しい方からの評価が高く、自分でもびっくり。窮地に追い込まれた時、生まれる新たな力というのか、どちらかの仕事が大変だから片方は手をかけられないというのは私には無いのだということ。片方が大変だと、もう片方も自ずと力が入るんです。面白いですね。これこそ、このnoteのテーマでもある「「光」と「食」の関係と可能性を追求する日々」ですよ ! これまでに起きたことが無いことが起きると関わる人の気持ちの変化、自分自身の精神的な変化が起きる。この状況を糧に恐れず前を向いて、まだ見ぬ世界にまた突入して行こうと思います。


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