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シンカ論:⑱ヒールのヒールは誰なのか

 ツイッター上で使われる、#KuTooというハッシュタグがある。
 これは#MeToo(性犯罪の被害者だと名乗り出た者がいたら、真偽確認をせずに加害者と名指しされた者を集団で吊るしあげようというフェミニズム運動)のもじりで、いわゆるヒールつきの靴で足が痛くなったりするので、ヒールでない靴を履かせろ、という運動である。

 勝手に履くわけにはいかないのか?

 いかないらしいのである、フェミニズムの主張するところによれば。なぜなら彼女らによると、ヒールは「女性に美しさを求める」男性社会によって強制されている「性差別」だからだというのだ。

1.そもそも怪しい事実

 この運動を始めた石川優美氏はグラビア女優でライターであり、葬儀社で弔問客の案内スタッフのアルバイトをしていたらしい。その葬儀社で体験したという「ヒール・パンプスの強制」をやめろというのが彼女の言い分である。

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 これが石川氏が、当初#KuToo運動のキャンペーンに使用していたシンボル画像である。非常に高いヒールだ。これだと足の角度がぐっと急斜面になってしまい、つま先立ちのような形になる。いかにも不便そうだし、言われてみれば足が痛くなる人もいるというのは理解できる。

 だが、実際には石川氏は、こんな靴は履かされていなかったらしい。実際には、ヒールを強要されたというのは「服務時の身だしなみについて書かれたパンフレットに、ヒール5~7㎝程度のパンプスを履くようにと書かれていた」だけだったというのだ。5㎝のヒール(ミドルヒールと呼ぶらしい)というのはこんなのである。

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 どうもだいぶ印象が違う。むしろ石川氏が宣伝に使った画像のヒールは、こちらの10.5cmのものに近いように見える。

 では5㎝のヒールは、それでも女性の足に負担なのだろうか。私自身は女装趣味のない男性であり、履いたことがないため一般の声を聞いてみよう。

 なんと! 5cmのヒールは歩きやすい、しかも太いヒールであれば安定感も抜群というのだ。まるで女性への拷問器具のように言われて来たヒールであるが、名誉挽回ではないか。

 結局、石川氏は当初自分の#KuTooキャンペーンに使用していた画像を後から差し替えている。

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 しかもである。どうも石川氏はこの5㎝のヒールさえ履くことを強いられてはいなかったというのだ。この点について疑問の声をあげたのは、一級葬祭ディレクター佐藤葬祭の佐藤信顕氏である。彼によると、そもそもそんなルールの葬儀社があるという情報自体が「疑問」であったようだ。

 ここでいう「会社の規定」というのは業務中の身だしなみのオリエンテーションで冊子の中に示された服装基準のことらしい。会社が提示した基準は低くて5cmほど、なおかつ無視して2cmのヒールを履いていても注意されなかったという。

 さらに佐藤氏は、YouTubeに投稿している自身の動画シリーズの中で専門家としての立場からこう明言している。

 葬儀の世界の服装マナーとしては、高いヒールは無しよっていうのが実は葬儀の服装コードになっています。それは自宅葬やお寺で元々葬儀をしていた時代に、足元が悪かったわけです。そういった時代背景を考えて頂ければ分かると思います。足元が不安定な靴は危ないからやめましょうという事で、ヒールの高い靴、特にハイヒールはダメという、昔のマナー本なんかにはちゃんと書いてありました。
 それから高いヒールは性的な魅力を出すものだから葬儀の時には相応しくないからヒールはやめましょうという事も、やはり葬儀のマナーとしては常識的な範疇な話でございます。

2.石川擁護側メディアの「被害者意識」

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