ホンダ

気狂わないために書きます。 朗読したりhttps://anchor.fm/hondaa

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最近の記事

明日になれば今日が終わる。日はもう落ちかけてビルに反射した光が右頬を照らす。苦しいとも不安とも違うものが僕の中で膨らんで息が詰まるようなでもそれは同時に満たしてくれてもいる、震えるような痺れが全身に広がっていく。音楽が僕の中で鳴っている。止めないでくれと止めてくれが痺れを増幅させて僕は昇っていく。今なら歌が歌えそうだ。聴くものはいない。怖がっているのは誰だろう。消えていく。太陽が地球の影に隠れてしまう。まだ間に合うともうダメが、言葉と音が、くだらないと冷えた足先が、惨めと毛布

    • 風と雲は友達だろうか

      どうしようもない人間であることは、どうしようもない。休憩室には卓球台があってカップルが打ち合うピンポン球のコン、カンコンの音のリズムの中では書けないからバルコニーに出る。今日はまさに雲一つない青空で照りつける日差しは強烈だ。朝から2時間ほど陽の下で読書していたから顔が赤くなっている。これなら酒を飲んでもバレなくていい、言い訳が立つ。酒を飲みたいわけじゃないのに、飲みたい。昨日の深夜、今日の明け方、何と言えば正しいか知らないが、空きっ腹に飲みすぎたからか内臓が焼けて熱く重く、ま

      • 愉快な死のマーチ

        明日も書きたいなと眠る前に思う。やりたいことが明日にあるなんて幸せだ。それは久しぶりの感覚だった。幸せなのはそれが生きたいに似ているから、いやほとんどまったく生きたいと同じ意味だ。 朝起きて見ていた夢を書き起こす。タバコのことを考えながら先にキッチンに降りる。バナナを齧りながらコーヒーを入れる。バルコニーに出る。早起きした日に限って曇り空だ。皮だけになったバナナを、それはもうバナナじゃなくてバナナの皮か、巻いたタバコに火をつける。書きたくなってパソコンを取りに戻る。そして今。

        • 酒とタバコと盗人

          書きたいから書くで文章を始めてもいい。自分語りの文章はつまらない気もするが、つまらないは人が決めることで、書けた書いた感触が快感につながっているから大丈夫だ。脳の快感を感じる神経は繰り返し使われることによって強化されていく。もっと気持ちよくもっと気持ちよくと求める一方で、快感自体には慣れてしまうから際限がない。というより限界を迎えれば死んでしまうかぶっ壊れるか。どちらも同じか。どちらにしろ死んでしまった本人、壊れた本人には関係のない話だ。そんなことは知らずにはいさようならと次

          ハッパと少年

          青いなぁとぼーっと見ていられる空、日は眩しくて暖かい、遠くでサイレンが鳴っていて街はいつもの毎日を動いている。二杯目のコーヒーと、体がもういらないと言うのを知っていてタバコを吸う。心臓が微かに痛い。狂ったような語りを聞いていると突然電波が途切れて背伸びをする。深いリラックスと内側の奥の奥がダムの放流のような勢いでせめぎ合っている。日の当たる右半身だけが暖かくて心臓を温めなければと思う。待ち人は予定通りにはやって来ずに待ち人ですらなかった。異常な食欲がこの体を維持している。機械

          ハッパと少年

          冷たさの優しさ

          好きなように過ごせばいいのに何かに追われるように焦りを感じる。琥珀色のウイスキーをコーヒーや紅茶で薄めるのも煩わしくコップに注いだそれを流し込んで喉を熱くする。幸い咎める者はいないから、それは不幸かもしれないが、ぼやけた頭でこうして文字を打つ。音がないと不安なのか、あちらこちらから聞こえる街の雑音をかき消すように久石譲のミニマリズム2を流している。ミニマリズム。この音楽がミニマリズムなのか素人の俺には分からないが、確かにシンプルだと感じる。ものをなくせばスッキリするのは本当で

          冷たさの優しさ

          人の心は秋の空

          人を待ってもう二週間になる。予定ではこの月末にやってくるはずが、ずれこんで五月の半ばになると連絡が来た。男はいつでも待たせるだけで女はいつでも待ちくたびれて、なんて歌があるが、男だって待つのだ。しかし湿っていてもしょうがない。カラッとして迎え撃つ気概だ大事なのは。今年はおみくじを引いていないから、待ち人来ずだかどうか分からないが引いていてもどうせ忘れている。なんとなく大吉の心持ちだ今は。それもきっとコーヒーを飲んだからでカフェインやら人と話したことやらで気分が高揚しているのだ

          人の心は秋の空

          雨の中でこそ狂喜乱舞

          屋上に留まる鳥に見えていたのは鉄の塊だった。降ったり止んだりを繰り返していた雨は今日の朝からは降り続け街の汚れを洗い流していく。遮光カーテンで真っ暗な部屋ではいつまでも眠ってしまい、目が覚めても時間が止まっている。毎日ワインを買っていられるほど贅沢な身分でもない、財布の底はとっくに見えている。度数が高ければ手っ取り早く酔っ払えて財布にも優しいだろうとスコッチウイスキーを買った。昔、沖縄本島の市場にあるコーヒー屋でアイリッシュコーヒーなるものを見つけ飲んでみた。コーヒーにウイス

          雨の中でこそ狂喜乱舞

          まとまらない取り留めがない

          今日もスタイタワーは一歩も動かずにそこに立っている。夕日に照らされてオレンジ色に左の輪郭だけが光っている。メタリックな壁面をペタペタと両手両足をくっつけながらわたしが登っていく。それは手が張り付いてしまうほど冷えていて、しかしそのおかげでビュービューと音を立てる強風に吹き飛ばされずに済む。展望台の人たちには景色しか見えておらずわたしの姿に気づくものはいない。助けを求める気もなかった。少しずつでも進めばタラップのところまで行き着ける謎の自信があった。寒さに耐えながらほとんど寒さ

          まとまらない取り留めがない

          街の血液

          部屋の隅にワインの空瓶が3本立っている。さっき買ってきたワインを注ぎながら一人部屋にこの光景は異常だろうか、掃除に来た人が驚くかもしれないと考える。もうワインは半分しか残っていない。バルコニーからはマンションの窓がいくつも見えて、可愛らしいライトで飾った部屋や怪しげなブルーライトで照らされた部屋など、人間がそれぞれの生活をしているのが目に入る。蜂の巣のようなそれがいくつも立っていてどれだけの人間がここで生きているのかと気持ちが悪くなることが昔はあったが、今は反対にそれぞれの暖

          街の血液

          グチャグチャ、渾沌、カオス

          酔わないと書けないというのは思い込みだ。起きたのは昼前だった。朝方まで飲んでいたワインの残ったコップを見つめ、クイっと飲み干す。寝起きのタバコはよりニコチンに依存するらしい。普段は朝食後だが怠惰に流されて一服する。うまいのかまずいのかもはや分からない。ビリリと脳が少し痺れる。 昨夜も夜の街を歩いた。雨が降ったり止んだり風が強い一日で履いていたランニングシューズが滑って何度か転けそうになる。コンサートホールの入り口が入場を制限するために綱で仕切られている。その名称を調べるとベル

          グチャグチャ、渾沌、カオス

          雨降りの金曜の夜

          閉店間際の酒屋に駆け込んでまたワインを買う。入り口は鉄格子のドアで遮られロックがかかっている。ブザーを鳴らすと今行くよとインド人の店員が開けてくれる。ものを選ぶのが遅い俺は大した舌を持っていないからなんとなくパッケージの良さそうなPinot Grisを選ぶ。酔えればなんでもいいのだ。お世話になったタイ人のお母さんがPinot Grisしか飲まなかったからいつもそれを選ぶ。バッグはいるかと聞かれ、裸のままの酒を持って夜道を歩きたくなかったから、欲しいと答える。いい夜をと挨拶を交

          雨降りの金曜の夜

          クソの戯言

          移動時間は現実から切り離されている。ということを書きたかったがあまりに酔いが回ってかけそうにない。回るの漢字もきっと間違えている。久しぶりにワインでもと、地産のワインをホステルで開ける。レビューが一つもないホステルを部屋の写真だけ見て予約したら昨日オープンしたばかりだった。宿泊客が少なく幸運にも一人部屋へとグレードアップされる。騒がしいのが嫌でここに選んだから嬉しかった。ニューオープンといっても泊まっている7階のトイレの鍵は壊れていて閉められないし、外の道路が見えるはずの窓も

          クソの戯言

          現実迷路、脇道

          割れそうな頭から時間が流れ出して現実が溶け出した。サマータイムもクソもなく時間など知ったことか。しかし息はしている。大丈夫だ僕はここにいる。ここ、こことは、どこだ。足元がぐらつくいや空間自体がぐらついているのだ。僕は背筋を正した。見失ってはいけない。しかし一体何を見ればいいのか。信号の青。道を行く車の黄色いランプが照らす顔はよく表情が見えない。割れるように頭が痛い。ビール缶を開けて喉に流し込む。動悸はいつから始まったのか。気づいてしまったらもう戻れない。すっかり暗くなった空と

          現実迷路、脇道

          光のブラインド

          なかなか部屋が見つからずやっと内見にありついた部屋は街の外れの工場の目の前で仕事場からも遠かった。パックパッカーの騒がしさに耐えきれなくなっていたから一人の空間を持てるそこに深く考えずに決めて次の日には移り住み始めた。同居人の静かで過ごしやすいというのは真っ赤な嘘で、もしかしたら部屋の位置もあるかもしれないが、日当たりも悪く縦2m横3mの大きな窓からは強い西日が入ってくるのみで目の前の道路を大型のトラックが轟々と音を立てて通っていく。ボォーと大きな音がして目が覚めた夜中にプロ

          光のブラインド

          雲はゆっくりゆっくり流れてく

          休憩時間。ベンチに寝転ぶ。タバコを吸いながらスマホを手に持つが頭の中が渋滞している。テーブルに置くと空の青さに初めて気がつく。本当にきれいな青だ。羊の雲がニヤけていくように笑ってヒョーっとふざけて雄叫びをあげた。小学生の頃に雲、という詩を書いた。学校の提出物に本音を書くなんてありえないと捻くれた自分は思っていて、しかしなぜかその詩の授業だけ素直に書いてみようと思った。 雲はゆっくりゆっくりながれていく  僕ものんびりいきたいな と最後に書いたのは覚えている。先生が、その時は若

          雲はゆっくりゆっくり流れてく