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コトバ

 複数のSNSをしていると、時々「〜でお勧めの本はありませんか?」という質問をいただく。
 質問自体はありがたいのだが、それに応えるのは毎回苦労する。自分の感覚が他人にも通用する、という自信が持てないでいるからだ。

 数ヶ月前。ある男性から、子どもと一緒に読める絵本を紹介してほしい、というメッセージをいただいた。
 この質問者さんは、ある一つの前提に立っている。それは、「本ノ猪」という人は、当然「絵本」も読んでいる、である。

 実は数年前にも、別の方から、子どもと一緒に読める絵本を紹介してほしい、とメッセージをいただいたことがあった。当時の私は、お勧めの絵本どころか、ただ絵本のタイトルをあげることさえできない状況で、ほぼ絵本を手に取ったことがなかった。
 ちゃちゃっとネットで調べて、それらしく繕うこともできたのだろうが、それではあまりに無責任だと思い、「絵本は詳しくないので……」と断りを入れる。
 そのことがきっかけとなって、積極的に絵本コーナーにも足を運ぶようになり、実際に手に取る機会も増えた。今では、とくに意識することもなく、ジャンルの一つとして絵本を楽しめている。

 男性からの質問に、話を戻そう。
 私がまず伝えたのは、とりあえず子どもと書店に行ってみましょう、ということ。大人間でああでもないこうでもないと議論するより、まずは子どもが実物を見て「欲しい!」と思えたものを手に取ってみる。
 次に、大人の考える「子どもが楽しめそう」や「子どものためになる」には限界があることを踏まえた上で、私からも控え目に3冊の本を紹介した。
 後日いただいた男性からのメッセージによれば、その内の一冊がとくに子どもからのリアクションが良く、親子で楽しく読めているという。メッセージには、絵本からの引用も付せられていた。折角なので、私も引用しておこう。

「コトバの力って すごい
 あんしんできる あたたかい 毛布にもなるし
 あいてを きずつける ナイフにもなる」
細川貂々『こころってなんだろう』講談社、P18)

「とりあえず
 「たすけて」「ありがとう」「ごめんなさい」
 これがいえれば だいじょうぶ」
細川貂々『こころってなんだろう』講談社、P19)

 二つ目に引いた文章は、私もお気に入りである。
 大人になると、特に一つ目の「たすけて」が言いにくくなる。すべてを自分の力だけで解決することを当然視するのではなく、困ったことがあれば周囲の人に「たすけて」と言う。そうすることで、周りの人もあなたに「たすけて」と言いやすくなるかもしれない。
 「自分は言えてるかな……言えてないかも」。絵本を前にして、私もぶつぶつと考える。



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