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著…芥川龍之介 絵…げみ『蜜柑』

 あなたは最近、「世の中はまだ捨てたもんじゃ無い」と思ったこと、ありますか?

 あなたが少々イラつきながら公共交通機関を利用していた時、そこでたまたま他の乗客の心あたたまる様子を見て、ほんの少し幸せな気持ちになったことは?

 これはまさにそういう素敵なシーンを描いた小説です。


 主人公と同じ汽車に、ある一人の少女が乗り合わせます。

 少女は三等車の切符を手に持っているのに二等車に乗ってきましたし、窓を開けてしまったら黒煙が入ってきてしまうのに何やら必死に窓を開けようとします。

 主人公にとって、少女がとる一連の行動は、どれも戸惑うことばかり。

 「なぜそんなことをするんだ?」と、主人公は腹を立てます。

 ところが、少女の行動の理由が分かった瞬間。

 まるで点と点が繋がるように、「そうだったのか…」と主人公の心の中にあたたかいものが広がっていきます。

 読む度に読み手の心も優しい気持ちで満たされる、美しい作品です。

 〈こういう方におすすめ〉
 家族愛にほっこりしたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 30分くらい。

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