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著…山本譲司『刑務所しか居場所がない人たち 学校では教えてくれない、障害と犯罪の話』

 実際に服役した経験のある著者の本。 

 刑務所=悪い人を閉じ込めておく所、と思っていた著者が刑務所の中で出会ったのは、認知症のお年寄りや、重い病気の人や、障害のある人たち。

 悪い人に騙されて利用されたり、地域社会から孤立していて刑務所しか居場所がなかったりと、事情は様々です。

 この本には、いじめや虐待などのある冷たい世界から避難するため、或いは自分の行動が法に触れると知らずに罪を犯し、刑務所に何度も戻って来てしまう人たちのことが書かれています。

 刑務所はまるで福祉施設のような面も持っており、刑務官や受刑者仲間がまるで福祉施設の職員のようにそうした受刑者のお世話をしているけれど、このままで良いのか? と著者は読者に疑問を投げかけます。

 何度も犯罪を繰り返してしまうということは、周囲の理解とサポートが足りないせいで犯罪に追い込まれたということでもあり、社会全体の問題だと気づかされます。

 勿論、犯罪が行われたということは被害者がいることも意味しており、被害者の気持ちにも配慮しなければいけません。

 加害者に高齢・病気・障害などの事情があるからといって情状酌量の余地が認められてしまったら、被害者の苦しみは深まるばかり。

 しかし、そうした人たちが地域社会で適切なサポートを受けられていさえすれば、中には未然に防げる犯罪もあったはず。

 無関心な社会は、加害者と被害者を自ら生み出し続けているのだ、とこの本を読んでいるとハッとさせられます。

 また、わたしはこの本の中で、

 「刑務官が福祉施設で研修するんじゃなく、福祉関係者が刑務所に行って研修したほうがいい。そのほうが、罪を犯した障害者の立場になった支援ができるだろうから」
(P105から引用)

 という文に共感しました。

 わたしは福祉関係者の端くれで、窃盗から殺人未遂まで様々な前科のある方の支援もしてきましたが、改めて考えてみると、わたしは刑務所で研修を受けたことも内部を見学したこともないことに気付かされました。

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