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著…京極夏彦『京極夏彦画文集 百怪図譜』

 決してこの世の住人ではないのに、ごく身近な存在にも思える。

 実は背後や部屋の片隅にいて、ジッとこちらを見つめているような気がする。

 「寂しい」とか「悔しい」といった、他人には打ち明けられないネガティブな感情も、分かってくれそうな気がする。

 それが妖怪たちの魅力。

 この本には「何もしない」「誰にも会わない」「何も視ていない」「何者であるのか、誰にもわからない」といった妖怪たちの哀しみが描かれています。

 わたしがこの本の中で特に哀れだと感じたのは、「狂骨(きょうこつ)」。

 「対象を持たない激しい恨み。誰を怨んでいるのか、何故に憾んでいるのか、もう判らない。血肉が落ちて骨だけになった今、そんなことはもうどうでも好くなっている筈なのに。それだけ甚だしい怨嗟が、いつかあったということなのだろう」
(P22から引用)

 こうなってしまうと、もし自分が恨みを晴らそうとしていた相手と出会っても、気づかずに通り過ぎてしまうのかもしれませんね…。

 もはや、自分が誰だったのかも思い出せないのかも…。

 そんな風に成り果てても、恨みだけは残っているなんて…。

 哀れです…。

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