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監修…小灘利春、河崎春美、藤田協、中川荘治、小川宣『人間魚雷 回天 命の尊さを語りかける、南溟の海に散った若者たちの真実』

 爆薬を積んだ魚雷に人間が乗り込んで操縦しながら、敵艦に体当たりするという、狂気の特攻兵器「回天」。

 この本では、そんな回天が開発された経緯、内部の仕組み、外観、搭乗訓練の様子、搭乗員たちの顔写真、遺書が紹介されています。

 特に、搭乗員たちの顔写真を見ると胸が締め付けられます。

 みんな凛々しい若者たち。

 戦争さえ無ければみんなどんな人生を歩んでいたのだろう…と想像しながら一人ひとりの顔を見ていくと、だんだん涙で視界がぼやけてきます。

 また、この本にはことさら、若者たちが「志願」して搭乗したと強調されていて、いかに戦時中が異常な状況だったのかを感じ取れます。

 「志願」せざるを得ない異常な心理状況に追い込まれていたのでしょう。

 ●グアム島近くで漂流していた8人の日本兵を見つけた回天の搭乗員(川久保中尉)が、彼らを収容するか迷っている艦長に対して、「あの8人を助けてやってください。我々4人の代わりに、8人が生還するのはめでたいことです」と懇願したおかげで、8人の日本兵は救助された
 (P46に掲載)

 ●気筒が爆発するという不慮の事故により回天が航行不能となった。後続艇の邪魔になること、敵艦に発見されること、潜水艦が自分を救助するために浮上してくることを避けるために、回天の燃料や空気を止め、内部に海水を入れて自沈したと言われている搭乗員(久住中尉)
 (P47に掲載)

 といったエピソードを読むと、悲しいやら腹立たしいやら…。

 なお、余談ですが、わたしは回天の存在を初めて知った日の晩、ひどい悪夢を見ました。

 回天に搭乗する悪夢を見たからです。

 本当は死にたくない、でも自分が行かなければ誰かが行くだけだ、この戦況ではどうせ遅かれ早かれ全員死ぬんだ、先にあの世にいって仲間を待つだけだ、それに一度回天に乗ってしまったらもう出られないから後は敵に体当たりするだけだ…と内心とても葛藤しながら出撃したのに、敵に体当たりすることがかなわず、操縦不能に陥り、海底で身動きが取れなくなり、脱出装置も通信装置もないので、酸欠で死ぬか自決するか選択を迫られる悪夢を。

 わたしは汗びっしょりになりながらベッドの上で目を覚ますことが出来ましたが、実際にその悪夢を現実として体験し、亡くなっていった若者たちがいたことにゾッとします。

 せめて日本がもう二度と戦争をしないことが彼らへの供養だと思います。



 〈こういう方におすすめ〉
 「回天」について知りたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 5時間くらい。

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