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著…中村うさぎ『地獄めぐりのバスは往く』

 「アルコール依存症が酒屋に、ギャンブル狂が競馬場に吸い寄せられるように、私は受注会という名の地獄の門に引き寄せられてしまうの。だって、そこは、とっても甘美な地獄なんですもの!」
(P45から引用)

 という文に、人間の業の深さがよく表れていると思います。

 それが破滅の道だと頭のどこかで分かってはいながらも突き進んでしまうのですから。

 これ以上お酒を飲んだら健康を害して死ぬかもしれない。

 これ以上ギャンブルやショッピングにお金を遣ったら全財産を失うかもしれない。

 そういった理性のブレーキがぶっ壊れた状態って、その瞬間だけは最高に刺激的なのでしょうね。

 世の中って本当に、悪魔的な誘惑に満ちていますよね…。

 後から正気に戻ると「なんでこんなことに散財してしまったんだろう?」と後悔することだらけ。

 「たとえば、私のような買い物病の女は、欲しいモノを手に入れた瞬間の〝やったぜ!〟的な快感だけに執着するタイプであり、手に入れてしまったモノに対しては意外と冷淡である。要するに、衝動的なんだよ。だから、買ってから一度も袖を通してない服、タグがついたままの小物などもゴロゴロしてて、その中から金目のモノを選んで質屋に持ち込み、次の買い物の資金に充てるってワケだ」
(P85から引用)

 と、うさぎさん自身が客観的に分析出来ているにもかかわらず。

 それでもなおウン十万円のブランド品を買って買って買い狂って莫大な借金を背負ってしまうのだから、依存症って恐ろしい…。

 けれど、そんな甘美な底無し地獄にズブズブとハマっていたうさぎさんが、マツコ・デラックスさんにとっては蜘蛛の糸になったのですから、人生って不思議!

 仕事を辞めて実家で引きこもっていた頃のマツコさんにうさぎさんが声をかけなければ、きっと今のマツコさんの活躍は無かったはず。

 人と人との縁の巡り合わせって、偶然なのか必然なのかは分かりませんが、凄いですよね…。

 今まさに地獄にハマり続けている人も、もしかしたら誰かが蜘蛛の糸を垂らしてくれるかもしれません。

 逆に自分が誰かの蜘蛛の糸になれるかもしれません。

 きっとそういう相互関係にうさぎさんも救われたのではないかとわたしは思います。

 わたしはマツコさんがこの本の後書きに寄せた解説を読んで、「どんなにお金を出しても買えないものをこのお二人は手に入れたんだな」と感動しました。

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