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著…奥田英朗『純平、考え直せ』

 ※注意
 以下の文には、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。



 この小説の主人公は、坂本純平という名前の21歳の男性。

 純平は下っ端やくざ。

 昔ながらのやくざに憧れていて、「他人から粋と思われたい」「頼られたい」という願望を抱いています。

 そんな純平は、親分から鉄砲玉になることを命じられました。

 「敵対する組の人物を拳銃で撃ち殺せ」という命令です。

 純平はなんといってもこういう性格ですので、断りませんでした。

 それどころか、「これで男になれる」「本物のやくざになれる」と喜んでしまいました。

 周囲の人たちは純平を止めようとします。

 「まだ若いのだから自分を大事にするように」と。

 けれど誰の言葉も、なかなか純平の心を揺れ動かすことが出来ません。

 …以上がこの小説のあらすじです。

 続きが気になる方は是非読んで確かめてください。

 その際は「自分ならどうやって純平を止めるだろうか?」「なぜ止めたいのだろう?」と考えながら読むのをおすすめします。



 わたしが特にこの小説の中で興味深く思ったのは、純平の女友達が「どうやったら純平に考え直してもらえるのか?」とアドバイスを求めてネットの掲示板に書き込みをするところ。

 その書き込みに対してレスが続々と返ってきて、その沢山のレスを純平も読む、というくだりが今の時代らしいです。

 レスの中には真剣にアドバイスをしてくれるものもあれば、からかってくるもの、むしろ殺人を煽るもの、右翼や左翼など別の話にテーマを逸らそうとするもの、純平やその女友達を架空の人物と疑うもの、レスを付け合う人同士で喧嘩するもの、純平を直接止めるためにみんなで集まろうと呼びかけるもの、など様々なものがあります。

 なんだかリアル…。

 …現実世界で起きている事件においても、犯人がネット上で犯行予告めいたものをして、でもコメント欄にそれをからかうような書き込みがあったり、ということもありますよね?

 ネット上で自殺予告した人に、死にたいなら死ね、と書き込む人もいたり…。

 …だから、わたしはこの小説を読んでいて、現実のネット上で起きていることを思い出さずにはいられませんでした。

 人間って人間に対して良くも悪くも関心があるから、一つの書き込みに対して色んなリアクションがあるんでしょうね…。

 いまこの瞬間もネットでは数え切れない人たちが膨大な量のやり取りをしているはず。

 その中で一人でも二人でも多くの方が犯罪や自殺を思いとどまってくれたらいいな…とわたしは思います。

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