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現実逃避のうた

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#音楽

ほちょうきの現実逃避

こおろぎがなくころ、何かを夢みていた。

大草原にさく花々がささやく音。
きつねの兄さんが勇ましく食べ物をさがしにいく音。
ダンプカーに人が乗り降りするおと。
手拭いをまいたおとうちゃんがトンネルの中をあるく音。

音が自分の体を支配していく。

やがてぼくの聴覚が、研ぎ澄まされていく。
全部の音を支配していく。

音の支配人となったわたしは、いつでも
自由に音楽をうみだすことができるよう

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決意の現実逃避

ああ なんて素敵な歌なんだ

もう、追われる人生はやめよう
そして追いかける人生もやめてしまおう

この曲が終わるまでに、
ぼくの中のくだらない小さな願望や
小さな希望すら
全て捨ててしまおうではないか

大きな自分になるのをやめよう
小さな自分になるのもやめてしまおう

ぼくはぼくであり続けよう、
ここに眠る自分の声に耳を傾けながら
静かな、誰にも分からない私だけの人生を
生きよう

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古神真理の現実逃避

美しい音楽を奏でるわたし
ハープの音がこじんまりとした部屋に
響き渡る
誰かのために聴かせたい

そこでわたしは小さな椅子に
可愛いくまのぬいぐるみを座らせ、
そのぬいぐるみの耳もとでハープを奏でる

あなたのために聴かせたい
あなたのために弾きたい

想いは一層強まり、
わたしの小さな手はたちまち
大きくなって
そして体は大きなハープの何十倍もの
大きさになって、
やがては家を突き抜けて、

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ピアノ教師の現実逃避

もしも願い事を叶えてくれるのなら、
あの生徒のような手がほしい

あのなんともすなおで、
そして不器用な指たち
それをみるたんびに、
わたしの手の、
心をなくした機械のように動くみにくい姿を
見せて教へる自分の愚かさに
気づかされる

手を・・・変えてくれ。
手を・・返してくれ!

鍵盤の奴隷のように
意味もなく奏でるのはもういやだ

楽譜の下僕となって
言われるがままのメロディを
うちつけるのは

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