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宝生流能楽師をもっと身近に。インタビュー記事

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宝生能楽堂インターンシップとは?【参加学生にインタビュー】2023年夏季

いつもお読みいただきありがとうございます! これまで「お稽古場探訪」についてインタビューしておりましたが、 今回は特別編として、宝生能楽堂で年に2回開催しているインターンシップについてご紹介したいと思います。 「能楽を支える”若い世代”を育てたい」という宝生流のお家元の熱い思いから始まったインターンシップ制度。各分野の第一線で活躍する講師から、舞台芸術・文化活動に関わる仕事の「実際」を学ぶことができます。 今回は2023夏季インターンシップにご参加いただいた3名の学生に

⑳【田崎甫 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

今回の五雲能で「高砂」を勤める田崎甫先生。 夜桜能の運営に携わる中で気づいたことや、能の英語版イヤホンガイドについてもお話をお伺いしました。 甫先生にとって「つなぐ」とは? ――甫先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 私の場合、「受け継いできたもの」ではなくて「勝手に受け継ぐと決めたもの」なのですが、それは「夜桜能」です。毎年4月に靖国神社で私の芸父(田崎隆三)が催しておりまして、私も子どものころから携わってまいりました。 屋外で行う薪能の中では大きい規模に成長したと思

⑲【小林晋也 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

今回の月浪能特別会で「翁」を披く小林晋也先生。 「翁」だけでなく「熊野」や「正尊」の見どころ、解釈なども詳しくお話いただきました。 晋也先生にとって「つなぐ」とは? ――晋也先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 祖父(小林一師)と父(小林与志郎師)から譲り受けた袴です。 僕が高校生のとき、父から楽屋働きをするように言われたのですが、当時は袴を持っていなかったので、祖父が「自分も新調するから晋也のも一緒に作ってやるよ。」と言ってくれまして。今日持って来たのがそのときに祖

⑱【東川尚史 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

今回の五雲能で「絵馬」を勤める東川尚史先生。 学生時代に夢中になったこと、能楽師を続けている理由についてもお伺いしました。 尚史先生にとって「つなぐ」とは? ――尚史先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 東京の向島に「めうがや」という老舗の足袋屋がありまして、そこで作られた僕専用の足袋です。「こはぜ」(足袋の履き口にある金具)には平仮名で「ひがしかわ」と入っています。みなさんも、めうがやで足袋を作っていただいたらご自身の名前を入れてもらえますよ。 「めうがや」はす

⑰【當山淳司 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

今回の月浪能特別会で「乱」を勤める當山淳司先生。「乱」の動きの難しさや見どころなどもご紹介しています。 淳司先生にとって「つなぐ」とは? ――淳司先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 今年の1月、元日に父親(當山孝道師、2021年7月逝去)から「俺の形見だ。」といただいた扇です。そのときは、まさか本当に形見になるとは思っていなかったので、詳しいことは何も聞いていませんでした。本金製で、良い扇のようです。「お前もいい年になったから本金製の扇を一本持っておくといいよ。」と言

⑯【亀井雄二 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

今回の五雲能で「女郎花」を勤める亀井雄二先生。 子方時代の舞台写真や、今年の夏に初舞台を迎えたお嬢様とのお写真も掲載しています。 雄二先生にとって「つなぐ」とは? ――雄二先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 僕が受け継いできたのは、身長ですかね(笑)。僕はあまり背が高くないので、「能舞台に丁度いい身長だ。」とか、「お前は装束を着けやすい。」と言われたことがあります。胴長短足なので(笑)、着物が似合う体形だそうです。身長は自分ではどうしようもできないことなので、親から受

⑮【金森秀祥 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

11月の月浪能で「三輪」を勤められる金森秀祥先生。 約40年間師事していた金井章先生とのお話をたくさんお聞きしました。 秀祥先生にとって「つなぐ」とは? ――秀祥先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 私の師匠というのが金井章(かないあきら)と申しまして、金井雄資さんのお父様です。この掛け軸は、金井先生が詠んだ俳句を軸装していただいたものなんですよ。 私が引っ越しをして稽古場を新しくするにあたり、先生の書をかけると、なんだか先生の目があるようで本気になって稽古できるの

⑬【川瀬隆士 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

学生時代から大好きな曲だという「放下僧」を10月の五雲能で勤められる川瀬隆士先生。 「放下僧」の魅力をたくさんお聞きしました。 師匠との思い出、先生のやんちゃ時代もお伺いしています。 川瀬先生にとっての「つなぐ」とは? ――川瀬先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 私は、ものを受け継いだというのがあまりないんですよ。両親が能楽師ではないので古い書付や謂れのある面はありません。 受け継いできた[もの]ですと、この仕舞用の扇ですかね。形は一般的な鎮め扇ですが、私の師匠であ

⑭【影山道子 先生】宝生能楽師をもっと身近に。

企画初! 女流能楽師にインタビュー! 扇好きがきっかけで能楽師になったという影山道子先生。 今回の秋の女流能では「楊貴妃」を勤められます。 女性ならではの視点から能の世界を教えていただきました。 影山先生にとっての「つなぐ」とは? ーー影山先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 こちらの能面です。私が藝大に通っていたとき、三川泉先生のお弟子さんのお嬢さんが藝大の彫刻科に通っていまして、その方が初めて打った能面なんです。先生が、良い面だから手に入れておいた方がいいのではな

⑫【藤井秋雅先生と上野能寛先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

企画初!二人同時インタビュー 内弟子のお二人が受け継いできたものとは? 9月五雲能で「生田敦盛」を勤める藤井秋雅先生と「殺生石」を勤める上野能寛先生。 今回のインタビューでは内弟子として、また個人として受け継いできたものや、内弟子生活についてお話を伺いました。新しく入った後輩たちへの想いが盛りだくさんです。 ――内弟子として「受け継いできたもの」は何ですか? 藤井:本日お持ちしたのが2つありまして、「蔵帳」と「作り物付(つくりものつけ)」というものです。「蔵帳」は、地方で

⑪【亀井保雄 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

「人は消えちゃうけど、言葉は残る。」 9月の月浪能特別会で「野宮」のシテを勤められる亀井保雄先生。 今回は貴重なお写真をたくさん持ってきてくださいました。 最近はお孫さんが初舞台を勤められ、ご子息の雄二先生の初舞台当時のお写真と共に掲載させていただいております。 保雄先生にとっての「つなぐ」とは? ーー保雄先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 今日はアルバムの写真を持ってきました。NHKの20歳記念の特集がありまして、いろんな社会から呼ばれた人が集められたときに、たま

⑩【佐野登 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

「まだ見ぬ100年、200年先の誰かのために」 7月月浪能で「藤栄」のシテを勤める佐野登先生。「未来につながる伝統」というテーマを掲げ、伝統と革新を体現しながら活動を粛々と続けていらっしゃいます。能舞台で演じることはもちろんのこと、その活躍の場は教育現場や地方の小さな町の文化活動の場であったり、とにかく幅広いフィールドをお持ちです。 能を見たことがない、知らない人に向けて、能を今に伝え未来につなぐ、能の可能性を広げるアイディアやモチベーションの源泉とは?そのルーツをたどるべく

⑨【水上優 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

「何か人がやっていないことをしたい!」 と言って能楽師になった父が 息子のために書いたノートの中身とは? 昨年2020年3月に延期となりました五雲能が約1年半越しに上演されます。今回、インタビューさせていただいたのは「葵上」を勤める水上優先生。お父様が能楽師となるまでの貴重なお話や、ご子息との共演のお話など、「親子」がテーマの内容となりました。 ーー優先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 父が書いた子方の型付ですね。私が子方になったときに、父が子方の型(動き)をノート

⑧【小倉伸二郎 先生】宝生流能楽師をもっと身近に。

「自分なりに想像しながら、たぶんこんな場面なんだろうなと思って観ていただけたら嬉しいですね。」 夏休み親子教室や実践女子大学の能楽サークルの講師としても活躍されている小倉伸二郎先生。6月五雲能では「雲雀山」を勤められます。先生から「雲雀山」の見どころもお聞きしました。ぜひ観劇前にどうぞ。 ーー伸二郎先生が「受け継いできたもの」は何ですか。 祖父、小倉輝泰のとあるお弟子さんからいただいた、お弟子さんが謡をオウム返しで稽古していたときに録音した「源氏供養」のカセットテープです